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菓子の蔵しんたに様へ
人生の中で、忘れられない味があるとすれば、私は迷わずに「菓子の蔵しんたに」さんのモンブランを挙げる。
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私は学生時代、引きこもり生活を送っていたことがある。
その頃の私の楽しみは唯一食べることだけだったが、ろくに買い物に出かけることもできなかったので、いつも仕事帰りの母に自分が食べたい物を伝え、買ってきてもらっていた。
菓子の蔵しんたにさんは母の職場の近くにあり、ケーキが食べたいと言った私に、母が周辺のケーキ屋を探して買ってきてくれたのが最初だったと思う。
プリン、ロールケーキ、ムース、パンナコッタ、ショートケーキ、、
何を食べても、今まで食べてきたケーキを超える美味しさだった。
そして、特にモンブランはそれまでの概念を覆す美味しさだった。
メレンゲの土台にホイップがたっぷり。モンブランクリームはクリームというより渋皮煮の栗きんとんを絞ったような、栗の本来の味が引き立つよう作られているように感じた。
しんたにさんは和菓子屋さんでもあるので、和菓子のアイデアが活かされているのだろうと勝手に思っている。
しんたにさんがきっかけで私はモンブラン好きとなり、それからと言うもの、あらゆるケーキ屋のモンブランを食べ比べている。
今私は36歳だが、今でもしんたにさんを超えるモンブランには出会えていない。
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そんなしんたにさんが最近閉店したと言う。
大将が亡くなったのだと。
色んな思いの詰まった味をもう食べられなくなるのかと思うと、心にぽっかり穴が空いたように感じる。
間違いなくあの時の私を支えてくれた。