救世主
6月23日、ランジャタイとマツモトクラブのツーマンライブを観てきた。
私にとってお笑いのライブは初めてだった。
2年前、8年付き合ってた人に裏切られ、負の感情に満ち満ちていた時、私を救ってくれたのがランジャタイだった。
二人の漫才はなんとなく町田康さんを思い出す。
不条理が漂っている。
やっぱり私はパンク精神のある人が好きだと実感。あと、2人の声の質や差も聞いていて心地良い。
ライブは、前半が2人の本からのエピソードを舞台化したもので、後半は「木綿のハンカチーフ」を題材に、今回のライブのために書き下ろしたエピソードらしい。
まずは前半、出演者の演技に圧倒された。
最初の国崎さんが伊藤さんすぎて伊藤さんだと思って途中まで見ていた。
本までしっかり読んでいる私は、自分が好きなエピソードの舞台版を見ることができて、しかも当然ながら本よりおもしろさが増していて、この時点で大満足だった。
後半、椎名林檎カバーバージョンを劇中に入れてくるあたり、さすが!と心の中で拍手していた。
ただ、この「木綿のハンカチーフ」は大好きな曲でありながら、歌詞の内容には昔からどこか引っかかるものがあった。
歌詞の中で、女性は都会に出て行った彼を一途に待ち、最後は待ち続けた彼に裏切られようと、決して咎めたりせず、最後まで彼を思いやり、受け止める。
これが男の人が望む理想の女性像を象徴してるようで、男性が聞いていて気持ちの良い曲だなと思うのだ。
この曲は太田裕美さんがアイドル時代に歌っていた曲なので、そう考えると「かわいい女の子」を歌うのは当然なのかもしれない。
しかし、アイドルの曲としては文学性が高く、非リアルタイム世代でアイドルというフィルターも通さず聞いてきた私には、歌詞がダイレクトに刺さり、「女はいつも待ってるなんて〜♪」と昭和の名曲で対抗したくなるのだった。
ところが今回のライブは、木綿のハンカチーフの歌詞が題材ではあることは確かだが、歌詞の中では一途だったはずの女性の心の揺らぎや、歌詞の中では順風満帆に都会の生活を送っていた男性の、上手くいってるようでいってない様が描かれていて、リアルすぎて自然と涙が溢れてきた。
長年の「木綿のハンカチーフ」に対するもやもやが少し解消された瞬間だった。
映画館でも泣いたことがないのに、まさかお笑いのライブを見に行って泣くことになるとは。
前半笑って後半泣いて、こんなに感情の振り幅を感じた作品は、どのジャンル通しても初めてかもしれない。
帰り道、半ば放心状態で改めて演者さんや構成の凄さを考えるのだった。