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【禁断の書】世界を平等にしたのは戦争・革命・国家崩壊・疫病の「四騎士」。『暴力と不平等の人類史』

こんにちは!
「noteの本屋さん」を目指している、おすすめの本を紹介しまくる人です!

今日はある意味、禁断の書を紹介!

スタンフォード大学教授のウォルター・シャイデルによる『暴力と不平等の人類史』です。

これは、人類史における経済的不平等と、それを解消してきた要因についての衝撃的な分析をした一冊。

驚くべきことに、シャイデルは、石器時代から現代までの膨大な歴史的データを駆使し、戦争、革命、国家崩壊、疫病という「四騎士」が、いかに富の再分配、ひいては平等化をもたらしてきたかを論証しています。


主要なテーマと議論

本書の中心的な主張は、人類史において、平和な時代には経済的不平等が拡大し、それを是正してきたのは暴力的な破壊であるという点にあります。

シャイデルは、この暴力的な破壊を「平等化の四騎士」と呼び、それぞれを詳細に分析しています。

  • 戦争

第二次世界大戦後の日本を例に挙げ、戦争が富裕層の資産を破壊し、所得シェアを劇的に減少させることで平等化をもたらしたことを示しています。

特に、本書では「大圧縮」と呼ばれる現象に焦点を当てています。

これは、2度の世界大戦によって先進国において所得格差が大幅に縮小したことを指します。

大戦は、物理的な破壊や人的損失だけでなく、政府による経済統制や富裕層への課税強化を通じて、富の再分配を促しました。

  • 革命

ロシア革命や中国の文化大革命など、共産主義革命が、私有財産の没収や富の再分配を通じて平等化を推進したことを指摘しています。

フランス革命もまた、旧体制の破壊と社会構造の変革を通じて、平等化に貢献した歴史的出来事として挙げられます。

  • 国家崩壊

 西ローマ帝国の崩壊やソマリアの内戦など、国家崩壊が、既存の支配層を消滅させ、搾取構造を崩壊させることで平等化をもたらした事例を挙げています。

西ローマ帝国の崩壊は、奴隷制の終焉、土地所有の分散化、経済活動の縮小など、社会経済構造の根本的な変化をもたらし、結果として不平等の減少につながりました。

ソマリアの内戦においても、中央政府の崩壊とそれに伴う社会秩序の混乱は、富裕層の没落を招き、一時的な平等化をもたらしました。

  • 疫病

14世紀のヨーロッパにおけるペストの大流行のように、疫病が人口を激減させることで労働力の価値を高め、結果として賃金の上昇と不平等の是正につながったことを示しています。

ペストの大流行は、労働力不足を引き起こし、農民や労働者の立場を強化しました。

しかし、シャイデルは、21世紀においては、これらの「四騎士」による平等化の効果は限定的であると論じています。

グローバル化、核兵器、医療技術の進歩など、現代社会の特性が、戦争、革命、国家崩壊、疫病の平等化効果を弱めていると考えられます。

書籍の構成と章立て

本書は、大きく分けて以下の7部構成となっています。

  • 序論 不平等という難題: 不平等問題の根深さと本書の目的を概説

  • 第1部 不平等の概略史: 人類史における不平等の変遷を概観

  • 第2部 第一の騎士――戦争: 戦争による平等化メカニズムを分析

  • 第3部 第二の騎士――革命: 革命による平等化メカニズムを分析

  • 第4部 第三の騎士――崩壊: 国家崩壊による平等化メカニズムを分析

  • 第5部 第四の騎士――疫病: 疫病による平等化メカニズムを分析

  • 第6部 四騎士に代わる平等化のてだて: 平和的な平等化の可能性を検討

  • 第7部 不平等の再来と平等化の未来: 現代における不平等と未来への展望を考察

重要な概念や用語

本書では、経済的不平等を測る指標として、主にジニ係数と所得シェアが用いられています。

ジニ係数は、0から1までの値をとり、0に近いほど平等、1に近いほど不平等な状態を示します。

本書では、ジニ係数を用いて、様々な時代や地域における不平等の度合いを比較分析しています。

所得シェアは、上位一定割合の富裕層が社会全体の所得に占める割合を示すものです。

シャイデルは、所得シェアの変化を分析することで、富の集中度合いと社会構造の変遷を明らかにしています。

具体的な事例と歴史的出来事

本書では、上記の「四騎士」による平等化の事例として、以下のような具体的な歴史的出来事が挙げられています。

  • 第二次世界大戦

日本では、戦争による人的・物的損失と戦後の改革により、上位1%の富が9割下落した結果、富裕層の資産が大幅に減少し、所得格差が縮小しました。

  • 毛沢東の「大躍進」政策

中国では、大躍進政策による数千万人規模の餓死により、ジニ係数が劇的に改善し、人口の減少と強制的な富の再分配により、極端な平等化が実現しました。

  • 西ローマ帝国の崩壊

帝国の崩壊により、あらゆる支配層が消滅し、搾取が終焉したことで人々の生活水準が向上し、奴隷制の終焉、土地所有の分散化などにより、社会経済構造が変化し、不平等が減少しました。

  • ヨーロッパのペストの大流行

ペストによる人口減少は、労働力の価値を高め、実質賃金を2倍以上に押し上げました。その結果、労働力不足により、農民や労働者の交渉力が向上し、賃金が上昇しました。

読者へのメッセージ

いまの四つの出来事を見てどう思いましたか?

そう、シャイデルは、経済的不平等と暴力の密接な関係を明らかにし、平和的な平等化の難しさを語っているのです!

現代社会においても、格差の拡大は深刻な問題となっており、本書の分析は、私たちが未来を考える上で重要なヒントを与えてくれます。

暴力に代わる平等化への道

シャイデルは、「四騎士」以外の平等化の手段についても検討しています。

彼は、土地改革、累進課税、教育の普及など、平和的な手段による平等化の可能性を分析しています。

歴史的に見ると、これらの手段が大きな効果を発揮した事例は限られています。

しかし、シャイデルは、現代社会においては、これらの手段を組み合わせることで、暴力に頼ることなく不平等を是正できる可能性があると示唆しています。

COVID-19パンデミックの影響についても、シャイデルの分析枠組みで捉えることができます。

パンデミックは、一部の富裕層の資産を増やす一方で、多くの人々の経済状況を悪化させ、格差を拡大させているという指摘もあります。

一方で、パンデミックを契機に、社会福祉制度の拡充やベーシックインカムの導入など、不平等是正に向けた政策が議論されるようになったことも事実です。

結論

ウォルター・シャイデルの『暴力と不平等の人類史』は、人類史における不平等と暴力の関係を深く考察し、現代社会における格差問題を考える上で皆が見たくない現実を突きつける一冊です。

シャイデルは、膨大な歴史的データと緻密な分析を通じて、これまで見過ごされてきた不平等と暴力の関連性を浮き彫りにしました。

本書で提示された「平等化の四騎士」は、決して望ましいものではありません。

しかし、歴史を振り返ることで、私たちは不平等問題の根深さを改めて認識し、平和的な解決策を探求する必要性を痛感させられます。

シャイデルが提示する、土地改革、累進課税、教育の普及といった平和的な手段は、現代社会においても重要な意味を持ちます。

COVID-19パンデミックのような新たな課題も踏まえ、私たちは、歴史から学び、不平等是正に向けた創造的な解決策を模索していく必要があります。

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