#75 数字は言葉に魔法をかける
noterとしても、社会人としても、モットーにしていることがある。
それは、「何を伝えるかよりもどう伝えるかが大切」ということだ。
これは僕が大学生の頃聞いていたラジオのパーソナリティの言葉だ。
10年以上経った今、図書館責任者になったことや、noteを始めたことによって、特に心がけるようになった。
特に職場では、スタッフの皆さんに指示を出す身。
ときには注意をすることもある。
僕は過去、指示をもらったり、注意を受けたりしたことで、不愉快になったことが幾度もある。
だから、絶対に僕はスタッフをそんな気持ちにさせたくはない。
誰も不愉快にならず、前向きにでき、かつ伝わりやすい言葉。
そんな言葉たちをインプットしたいと、強く思うようになったのだ。
そこで手に取ったのが、
『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑』だった。
『言いかえ図鑑』ってどんな本
「無意識に使っている言葉が、印象を作っている」
思わずドキッとしてしまう言葉から本書は始まっている。
「さすがだね」と褒めるより、
「あの部分の説明がよかった、さすがだね」と具体的に褒める。
「それはやめたほうがいい」と否定的に伝えるより、
「こういう理由があるからこうしたほうがいい」と理由を述べつつ肯定的に伝える。
伝える相手をポジティブにし、それによって自分へのポジティブな印象付けを手伝ってくれる言葉たち。
ビジネスはもちろん、子育てや人間関係に役立つ素敵な言い方が141も収録されたまさしく図鑑である。
数字の魔力
上記の例のように、自分も相手もポジティブにするような言いかえが収録されたベストセラー本である。
もちろんどの言いかえも頷けるものなのだが、中でも僕は「数字」にスポットを当てたい。
というのも、伝えるうえで数字が入っているか否かでわかりやすさが段違いに変わるということを再確認したからである。
以下は本書に出てくる例である。
確かに「ちょっと」ってどれくらいだよって思ってしまう。
週明けの月曜は1週間のうちで忙しい日なので、「週明け」だと「忙しい中でやれってか」ってなってしまう。
3営業日という具体的な数字があるだけで、気持ちにゆとりを持てる。
「えぇ、30分!?」と言い返してしまいそうだけど、そう言い返す時点で少しだけ宿題へ前向きになっている気はする。
本書の例を少し改変するけれど、
「しっかり徹底的にやって」とか「手が空いているときにやって」というより、「この作業を3日後までにやって」と具体的な数字・期日を伝えた方が仕事の計画が立てやすくなる。
日常生活でぼんやりと物事を伝えてしまうことも時にはある。
けれど、コミュニケーションを図るうえでぼんやりと伝えることは、その人との関係や仕事のパフォーマンスに大きく関わってくる。
それが、数字を入れるだけで、伝えたいことが鮮明になってくる。
ごくごく当たり前なことだとは思う。
だけど、当たり前なことだからこそ再確認したのだ。
数字は言葉に魔法をかけてくれるものだと。
数字が圧力になることも
一方で、数字がその人の気持ちを圧迫するケースもあるようだ。
本書に書かれているのは、子育ての場合。
100点という具体的な結果を褒めてしまうと、
「次回も100点とらなきゃ」と数字を意識しすぎてしまう。
そうではなく、「勉強を頑張った」というプロセスを褒めるのが、よい褒め方なのだと本書は言う。
確かにnoteに例えると頷ける部分がある。
「50スキもらえてすごい」と褒められるより、
「わかりやすく書けていてすごい」と褒められた方が何倍も嬉しい。
もちろん結果も大事だけど、その結果のためにどう努力したのかを伝える方が重要なのだ。
結果としての数字を使って褒めることは、逆効果になる。
これもある種の数字の魔力と言えるのかもしれない。
うまく数字を使って伝えていきたい
図書館司書として、僕は数字に助けられたことがある。
新人時代、図書館利用登録のときに、僕はこう伝えていた。
「利用登録には少々お時間をいただきます」
まさに上記の悪い例である。
ある日、そのように伝えた利用者を、
「少々ってどれくらい? 早くしてほしいんだけど」
と苛立たせてしまったことがある。
その態度に焦った僕はしどろもどろになり、より時間をかけてしまう始末。
先輩に助けられたから事なきを得たものの、抽象的な表現によってクレームに繋がりかねないというのを強く実感したのだった。
それから僕は、具体的な時間を伝えるようになった。
「利用登録には3分から5分ほどお時間をいただきます」
こう伝えることによって、そのとき登録するか否かの選択肢を与えることもできるのである。
時には「そんな早くやってくれるのか」と感謝をいただくこともあった。
言い方1つで、仕事のパフォーマンスはもちろん、自身のメンタルまでも変わってくる。
これからも数字という魔法をうまく使って、自分も相手も前向きになれるような言葉遣いに努めていきたいものだ。