Tsutomu Saito

週末ギャラリスト、現代アートギャラリー aaploit を主催。 京都芸術大学大学院 社会人向けコースで現代アートを研究、現代アート研究者(MFA) https://aaploit.com https://note.com/aaploit

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マガジン

  • CANKS

    • 62本

    コンテンポラリーアート、現代写真の研究者たちによる若手作家の作品、展覧会を紹介するレビューマガジンです。※執筆者随時募集 執筆者/ ・斉藤勉 京都芸術大学 大学院修士課程卒(MFA)、aaploit代表 ・中澤賢 京都芸術大学 大学院修士課程卒(MFA)、PHOTO GALLLERY FLOW NAGOYA代表 ・北桂樹 京都芸術大学 大学院博士課程卒(PhD)、現代写真研究者

  • 読書メモ

  • 現代アート研究

    現代アートを学び始めた外資系IT企業のプリセールス。 難解な現代アートを探求する学びの記録。

  • アート × アパレル・ビジネス

    アートとファッション・アパレル・ビジネスの関係性について探る。

  • NFT、ブロックチェーン

最近の記事

『BODY BUDDY BABY』の高橋 順平の展示

京都芸術センターで開催されていたグループ展『BODY BUDDY BABY』を見た。高橋 順平さんの作品について、いろいろと考えた。 壁際に段ボール箱が積まれ、映像作品が投影され、その前を天井に設置されたレールに従って回る人型、重ねられたパレットとゴミ箱から構成されたインスタレーション、ペットボトルが覗くゴミ箱からは音が聞こえる。 天井のレール、そこに吊り下げられた人のようなもの、点滴が取り付けられ、滴り落ちる液体は引きずったズボンをつたって床にドローイングを描いている。

    • 河合隼雄「無意識の構造」改版 読書メモ

      最近、無意識的にという言葉をよく聞いた。無意識とは言うけれど、それはどういうことだろうか?卒業制作を見て周り、学生から「無意識」と言われると訝しんでいたけれど、一度はっきりさせておいた方がいいだろうと思い本書を手に取った。 思いがけないことをしてしまったとき、我を忘れてとか、我ながら何をしていたのか、ということがある。こうした時に無意識的にやってしまったと言う。このような日常のよくあることから難解なユングの哲学に迫っていく。 トラウマによって耳が聞こえなくなった女性の事例

      • ギャラリー運営3年目、春名真歩の展覧会は2回目

        2024年の7月でギャラリー運営は三年目に入った。入念な準備をしたというよりも勢いで始めたようなところもある。それまでは大学院ゼミの現代アート研究と、研究に伴う作品コレクションをしていたが、ギャラリストとして作品を説明する側になった。 友人のギャラリーを見たり、作品をコレクションしたり、ギャラリストやアーティストに話を聞いたり。なんとなくギャラリーのビジネスモデル、業務フローは分かっていたけれど、いざ始めてみると整備しなくてはならないことが沢山あった。そして業務フローでは表

        • 《底なしの輪》田崎蟻

          田崎蟻の個展「あなたの家の地下に棲むものです」を見るため、根津に出かけた。展覧会は美の舎で開催されていた。十数点の作品が展示された空間、小作品から大型作品まで様々なサイズの作品が提示されていた。 《底なしの輪》は、大型のキャンバス1303×1620mm(F100号)に描かれた作品である。入り口から入った正面の壁にかけられていた。 一見すると不穏な暗色だが、画面の奥からこちらにやってくる手をつないだダイバーと中央にある魚の尾から水中であると認識できる。魚の尾びれの付け根あた

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        記事

          《Nyenyedzi nomwe》Kresiah Mukwazhi

          アートバーゼル、バーゼル・イン・バーゼルを見に来た。6/10から始まったアートフェアは6/12からプレビューを開催している。お金で買えるチケットは6/12のホール1.0から公開が始まり、ホール2.0は夕方から入場することができる。 ホール1.0はUnlimitedとして、大型のインスタレーションなどが展示されている。マーク・マンダース、ミリアム・カーン、ロバート・フランク、ウーゴ・ロンディーネ、マルタン・マルジェラ、ライアン・ガンダー、クリストなどの作品が並ぶなかで若手作家

          《Nyenyedzi nomwe》Kresiah Mukwazhi

          Pierre Huyghe Liminal

          5月のはじめ、ピエール・ユイグ(Pierre・Huyghe)の大規模な個展「Liminal」をベネチアのPunta della Doganaで見てきた。ここでは展覧会を見たメモを残しておきたい。 ピエール・ユイグは展覧会の開始にあたって、そこが始まりと言う。多くのアーティストは作品制作を終えてから展覧会の初日を迎えるが、自分はそうではないという。 つまり、ピエール・ユイグの作品は展覧会が始まったタイミングで固定されているものではなく、会期中にも変化していく、どのタイミング

          Pierre Huyghe Liminal

          第60回ベネチアビエンナーレ

          4月の終わりから5月のはじめにかけてイタリアのベネチアに出かけた。ピエール・ユイグのLiminalを見ることを主な目的としていたけれど、ベネチアビエンナーレが開催されている時期だから、4/20のオープン以降に出かけようと計画していた。 ベネチアビエンナーレは修士の研究時代にも何度かレポートを見ており、実際に見てみないといけないと考えていたため、ちょうどいい機会だった。ピエール・ユイグの展覧会評は別にまとめたいと思う。 作品や作家の解説というよりも、見てきたこと、考えたことを

          第60回ベネチアビエンナーレ

          《月白の城》来夢

          創作人形作家の三人展が開催されている。ひびきさんとKahoさんと来夢さんの三人展であり、来夢さんは三点の創作人形を提示していた。そのうちの一点は東京造形大学の卒展で見た作品だった。ひびきさんの作品も卒展で見た。 東京造形大学で見たときのことを思い出す。2023年のZOKEI展では、彫刻棟の一番奥のスペースに座っていた《月白の城》を見たとき、他の彫刻とは明らかに違う凛とした空気を感じた。 東京造形大学の彫刻棟はバスの停車場からみて一番奥にある。いくつかの倉庫のようなアトリエ

          《月白の城》来夢

          《偶像》片口南

          五美大展で女子美術大学の片口南さんの作品を見た。片口さんの作品を初めて見たのは第11回前田寛治大賞展「写実表現の現在(いま)」だった。日本橋高島屋の美術画廊で提示されていた作品は五角形の変形キャンバスに描かれた静物画だった。 五美大展で提示されていた作品は、アーチ型キャンバスが三連結されており、外側に木でフレームが施されている。連結されたアーチ型キャンバスの形、それを取り囲むフレーム、キリスト教絵画の祭壇画を参照していると思われるが、モチーフはアンティークのような静物である

          《偶像》片口南

          《My Soul Train》小林由

          東北芸術工科大学の東京選抜展で小林由さんの《My Soul Train》は、ダイナミズムがあった。 当初はキャンバスを木枠からも拡張させたと捉えていたが、キャンバスは縫い合わされている。 ストリートのような空気感、キャンバスを構築しているというよりも、ストリートで遊ぶうちに、この形になった。というような印象を受けた。 グラフィティは、大学院の友人の研究テーマだった。 小林さんの作品は、ヒップホップのサンプリングから絵画制作をし、それを裁断して、ミシンでソーイングしてい

          《My Soul Train》小林由

          《虚の秘密は私のみぞ知る》石黒光

          東北芸工大の東京選抜展、石黒光さんの作品は出口近くに提示されていた。大きな画面、絵画ではあるが、その大きさから壁のように感じる。 画面の右下にある格子は土壁の中の小舞を想起させ、すると画面に前景と後景が立ち上がる。画面中央から左手は穴と見立てることになるだろう。すると、はがれた土壁とは別次元の穴、そこに浮かぶ二つの顔、穴の中央下寄りの一段暗い黒、様々なレイヤーが立ち上がってくる。 浮かび上がる二つの顔は生と死を暗喩しているのだろうか。開いた眼と白い顔、閉じた眼と薄暗い顔、閉

          《虚の秘密は私のみぞ知る》石黒光

          東北芸術工科大学美術科東京選抜展の萩中茉優の展示

          萩中茉優さんの展示は球体関節人形と版画作品を提示していた。 二体の球体関節人形が木の椅子に座って向き合っている。頭部は鳥であり、奥の人形は足が鳥のようにかぎ爪がある。問答をしているかのような向き合い方、人型をしているが、その頭部から人とは遠い存在に見えてしまう。しかしながら、骨格標本のような白色から、見ているうちに人形と対峙している際の距離感がバグってしまう。 ステートメントには、思考の際に一人二役で自問自答をするとあった。この人形は、討論の際にでてきたモノを現実に取り出

          東北芸術工科大学美術科東京選抜展の萩中茉優の展示

          《少女信仰》鹿野真亜朱

          東北芸工大学の東京選抜展、何年前から見ているだろうか。恐らく2019年から見ていると思うが、記憶が定かではない。今年こそは山形に見に行こうと思っていたが日程の関係で無理だった。 鹿野真亜朱さんは、版画を提示していた。 パネルにシルクスクリーン、細い線による書き込み、荘厳な雰囲気を漂わせているのはミューグランドで下地を作っているからだろう。画面に盛り込まれた様々な要素、キリスト教における宗教画の物語を示している。 少女信仰とは、パパ活、トー横キッズを引き合いに出して推しの

          《少女信仰》鹿野真亜朱

          《Observing Variation in Sliced Loin Hams》森田明日香

          IAMAS の修了展は昨年と比べると規模が小さい感じがした。ソフトピアジャパンセンタービルとワークショップ24と、二つのビルにわたって展示されていた。 森田明日香さんの修士研究「差異の観測」は、日常の中にある同一に見えるものの差異を示すもの。ロースハムの差異について着目したインスタレーションを提示していた。 円のスクリーンに映し出される何かの表面、氷床のようにも見えるが、大きさと形から、天体観測だろうかと推定する。ただ、円に映し出されたテクスチャは、フリッカリングしており

          《Observing Variation in Sliced Loin Hams》森田明日香

          名古屋芸術大学の村瀬ひよりの展示

          名古屋芸術大学の西キャンパスは、フラットな敷地なので歩きやすい。油画が展示されるZ棟は、飛び地になっていて、道路を渡っていく。それまで見ていた展示とは気持ちを切り替えて作品と向き合うことができる。 そんなZ棟で最初に見た村瀬ひよりさんの作品、「さかいめ」と書かれたステートメントがあったが、展示空間は、村瀬さんの様々な作品によって構成されており、さながらポートフォリオのようであった。 モノクロで描かれた作品は木炭で描かれている。《さかいめ》は、自身の日常と日本の他の地域や、

          名古屋芸術大学の村瀬ひよりの展示

          《陳列》森崎萌黄

          名古屋芸術大学の卒業・修了制作展はスタンプラリーを実施していた。スタンプを集めるための順路は、そのまま展示を見る順路として重宝した。 森崎萌黄さんの《陳列》は展示スペースの部屋全体にシルクスクリーンの肉が文字通り陳列されていた。 印刷された肉、形のバリエーションはいくつかあるが、版画であり、複製されている肉である。すぐさま、3Dプリント肉に思考が飛ぶ。工業製品として工場で肉が生産される。よい霜降り具合をプリントすることで、食味もよくなる。原材料は大豆などの代替肉や、培養し

          《陳列》森崎萌黄