《Observing Variation in Sliced Loin Hams》森田明日香
IAMAS の修了展は昨年と比べると規模が小さい感じがした。ソフトピアジャパンセンタービルとワークショップ24と、二つのビルにわたって展示されていた。
森田明日香さんの修士研究「差異の観測」は、日常の中にある同一に見えるものの差異を示すもの。ロースハムの差異について着目したインスタレーションを提示していた。
円のスクリーンに映し出される何かの表面、氷床のようにも見えるが、大きさと形から、天体観測だろうかと推定する。ただ、円に映し出されたテクスチャは、フリッカリングしており、天体にしては慌ただしく見える。二つの円のスクリーンの前に置かれた4つの台、そのディスプレイには、変化の様子が映し出される。一定のノイズのような音が、映像の変化に追随している。
タイトルは、ロースハムのばらつきの観測と訳せばいいだろうか。ステートメントによれば、スーパーで売られている1パック4枚入りのロースハムの差異を観測したという。モニターに映し出されているのは、ハムが変容していく様子であろう。そして、円形のスクリーンにはハムの表面を撮影した映像が投影されていると思われる。
モニターの手前にあるランプは何か?
ランプシェードに見えていたのは、干からびたハムだった。
4台のモニターに映し出されているのは、同じパックに詰められたハムだろう。それを放置して干からびた形は、もともとは同じ円形でパック詰めされていたハムから変容し、それぞれの個性とも言うべき姿を現している。工業製品としてひとくくりにされたハムの相対化を観測しているというのだろうか。
ここで、名古屋芸術大学で見た森崎さんの作品を思い起こす。
工業製品として肉を作る場合、あえて差異を出そうとする。ハムは同じような円形にされ、差異をなるべく無くすようにされているように見える。これは、消費者が、食べ物をどのように受容しているのかを考えさせる。
森田さんのオーディオとビジュアルを使ったインスタレーションは見た目に洗練されており、モチーフがハムだとは気が付かなかった。
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