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panda1
2021年5月10日 00:24
そう言えば何かおかしかった。鬼女は今日、学校を休んでいた。ともすれば一体誰が上靴の事をクラスで流したのか。そして、絶妙なタイミングでの永見の登場。そもそも鬼女は何をしに放課後彼女に会いに来たのか。一つ一つは漠然とした事実。でも、重なり合った結果、永見へ都合が良すぎやしないだろうか?しかし、あの笑み以外には何の証拠もありはしない。とりあえず、永見以外に笑っていた生徒達を僕は思い返してみる。
2021年5月6日 23:42
ね、昨日の優香の反応なんだったのかな通学路の僕達の会話。彼女はやはり違和感を持っている様だ。あの鬼女の反応は普段からすれば信じられない反応だったみたいだ。そんな彼女に知らぬ知らぬを通す僕。押し問答ばかりしているとあっという間の学校だ。手慣れたようにクラスへと向かい、静かに扉を開ける。もはや慣れてしまった静まる教室。しかし、この日に限ってはいつもと違う。恐怖と興味が入り混じった目が彼女
2021年5月5日 19:33
何事もない学校。初めての登校から1週間程が経過した。あれから永見は彼女にべたべたと関わる様になった。あの男の後ろめたい気持ちはあからさま過ぎて気持ち悪い。しかし、それ以外は特に取り留めもない日常。すっかり人面瘡として学校に行く事にも慣れてしまった。この前なんか、世界史の授業で僕が一番初めに答えがわかってしまった。IQ高い系人面瘡。 キーンコーンカーンコーン寂しげにチャイムの音が鳴
2021年4月30日 16:51
ガチャ帰宅する僕等。彼女は俯いてばかり。沈痛な空気である。しかし、こんな時こそ彼女をフォローする必要がある。どんな事をすれば、彼女は笑ってくれるかな……。前世を振り返ってみる。女性との関わりなど、殆ど母の顔しか浮かばない。何かなかったかな……。思い出した!そう言えば前世で僕が使っていた鉄板が一つだけあった。確か、小学生の頃、近所の由美ちゃんに使った技。あれは大ウケだったなぁ……。よし。
2021年4月28日 13:36
「解決の方法なんだけどさ…… 川口さんの赤ちゃんに関係してくるんじゃないかと思うんだ」思った通り、彼女の体は硬直する。「川口さんの中にある赤ちゃんへの罪悪感がおそらく僕を産んだんだと思う。だからこそ、川口さんが自分の思いに折り合いをつけて乗り越えていく事が必要なんじゃないかって話」彼女は言葉を発さない。発せない?暫くすると声を絞り出す様に僕に問いかける。忘れろって事?そうだ
2021年4月25日 23:10
「ねぇ、川口さんちょっといい?」何も答えない彼女に対し、女は勝手に言葉を続ける。「さっきの返事なに?」「さっきの返事って?」まるで気にも留めずに聞き返す彼女。それが火に油を注ぐ。「わざわざ永見先生って言うの当てつけのつもり?永見先生もうざがってたの気づかないの」どうやら先程の彼女の返事が気に食わなかったのだろう。それにしても突っかかる女だなこいつ。「それ、あなたに関係あ
2021年4月24日 03:24
小気味よく揺れる通学路。揺れるものだとわかっていればいっそ清々しい気持ちよさすら感じるものだ。水溜りから漂う梅雨の匂い。聞こえてくる信号機の高い機械音。周りを歩く足の振動。どれもこれも新しい感覚ばかりである。人面瘡になっての通学路はそれなりに楽しいものだ。少し調子に乗る僕。すると、(ガクッ)調子に乗ればなんとやらだ。どうやらこいつ、石でも踏んだな。おかげで舌を噛んでしまった。しかし、足を挫い
2021年4月22日 13:19
「吉田さんは何も言ってくれないのね」責めるような言葉に優しい語気。「すみません」言葉が見つからなく空白を埋めるだけの僕の謝罪。そんな僕に彼女は優しく告げる。「それでいいと思う。色々語っちゃったけど、変に同情の言葉かけられてもね。冷める冷める。それにさ、もう気にしない事にしたの。もう終わった事」少しあっけらかんと話す彼女。僕の頭上に爪が食い込む圧を感じる。「吉田さんには少し感謝
2021年4月20日 17:48
「よくある話なんだけどね。確か梅雨深い時期の頃。当時の私は大学受験を意識しだして勉強に力を入れようとしてたの。でもね、残念な事に勉強が余り得意でもなかったんだな。特に国語は壊滅的。だから、毎日、放課後に職員室まで足を運んでたの。現代文担当の永見先生に教えてもらうために。もちろん、勉強を頑張るためって言う目的も大いにあったんだけど、途中からは永見先生に会いにいく事自体が目的になっちゃってた。高校く
2021年4月19日 23:17
「じゃー、私の話をしますね。私は燕ヶ丘高校に通う高校3年生で、年は17歳」女は自分の素性について話し出してゆく。僕は少し驚く。燕ヶ丘高校⁇大阪の名門高校ではないか。元々、兵庫に住んでいた僕でも知ってる名前である。もしかしたらこの女はどこぞやのお嬢様なのかもしれない。「どこにでもいる現役jkってやつかな〜」女は笑いながら僕に話し続ける。「それで、グミが好きで、水族館が好きで、好きな科目は国
2021年4月19日 16:22
「シャワーを浴びてからね、吉田さん」艶のある響き。見目麗しい女から発せられるその言葉は、世の男達ならその後を夢想し、尻尾を振って大喜びするのではないだろうか。しかし、人面瘡の人生と言うのはそう甘くはない。「ぅえぷっ、かはっ、かはっ……」僕の顔面を貫く様な水の光線。「ぁあばばばの、川口さぁん、しゃわぁを止めてくだばばばばぃ」「え?吉田さん何か言ってますか?聞こえませんよ⁇」素っ
2021年4月15日 22:47
僕はゆっくりと目を開けた。縦長の鏡台。そこに写っていたのは一人の女であった。ピンクのダボったいパーカーを着た女が柔い脚を露出して立ち映っていた。整った顔立ちをしていた女だ。しかし、僕はその女の特徴を余り詳しく捉える事は出来なかった。鏡に映るもう一つの顔を見つけてしまったからである。目が離せない。その顔は、驚いていた。のっぺりした顔立ちに、左目の下にある小さな黒子。少しぶ厚目の唇は、母だけ
2021年4月14日 12:09
「……、顔しかありませんよ…。」「!?」今度は僕が言葉を失った。顔しかない。意味がわからなかった。僕は体を失い、顔だけで生きているのか?そんなSFではあるまいし。 しかし、体の感覚もなく、痛みも感じないと言う事は事実である。これではこの女の言葉を否定しきる事も出来ない。考えていても始まらない。決心を決める。「あの……、すみませんが僕に鏡を見せてくれませんか?」「……。良いですけど