ショートストーリー 転生したら女子高生の人面瘡だった件 第6話
「……、顔しかありませんよ…。」
「!?」
今度は僕が言葉を失った。顔しかない。意味がわからなかった。僕は体を失い、顔だけで生きているのか?そんなSFではあるまいし。
しかし、体の感覚もなく、痛みも感じないと言う事は事実である。これではこの女の言葉を否定しきる事も出来ない。考えていても始まらない。決心を決める。
「あの……、すみませんが僕に鏡を見せてくれませんか?」
「……。良いですけど、鏡台の所に行かなきゃ見れません」
「でしたら、鏡台を持って来て欲しいんです。僕は動けないので」
「いえ、吉田さんもそこに行かなければ見れません」
なぜ僕が行かなければ見れないのか。もしかしたら、固定付きの物なのかもしれない。
「それでは、僕は行く事が出来ませんね……」
「いえ、連れて行くことはできますよ」
「いや、無理ですよ。僕が顔だけと言うのは全くもってどう言う状態かはわかりませんが、それこそ安静にしてなくてはいけませんよね?」
そんな慌てる僕に対して、女はこともなげにこう言うのである。
「大丈夫ですので連れていきます」
なんだこの女は。僕は身の危険を感じた。大体、初めからおかしかったのである。僕の言葉にこの女の言動は全く噛み合わない。もしかしたら僕は頭のおかしい女に捕まり、拘束されているのかもしれない。
「あの、やっぱり大丈夫です。まだ見に行かなくても良いです」
「いえ、見てもらいます。じゃないと私が困ります。こんなの一人じゃ抱えきれません。あぁ、気がおかしくなってしまいそうなんです」
女はヒステリックに言う。やはり、頭のおかしい女で間違いなさそうである。
すると、僕をまた例の揺れが襲う。部屋の景色が右へ左へ上へ下へと。まるでジェットコースターにでも乗っている気分になる。目が回る。景色が視界を回り続ける事に酔いが回った僕は思わず目をつぶる。どうやら先程までの揺れもこの女のせいだったようだ。この女は動けない僕をなぶり、楽しんでいるのであろう。
このサイコパスめが。
何も抵抗できない僕は、されるがままに鏡台まで運ばれていった。
「鏡です。ほら見てみてください」
女の声が聞こえて来た。その語気からは脅迫めいた圧を感じる。素直に従った方が良いであろう。さもなくば、何をされるのかわかったもんじゃない。僕はゆっくりと目を開けた。
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