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ショートストーリー 転生したら女子高生の人面瘡だった件 第9話

「シャワーを浴びてからね、吉田さん」

艶のある響き。見目麗しい女から発せられるその言葉は、世の男達ならその後を夢想し、尻尾を振って大喜びするのではないだろうか。
しかし、人面瘡の人生と言うのはそう甘くはない。

「ぅえぷっ、かはっ、かはっ……」
僕の顔面を貫く様な水の光線。
「ぁあばばばの、川口さぁん、しゃわぁを止めてくだばばばばぃ」

「え?吉田さん何か言ってますか?聞こえませんよ⁇」

素っ頓狂な顔で僕の懇願を聞き返してくるこの女。つい先程までの僕の感謝が憤怒へと変わってゆく。この悪魔がっっ!!
キュッキュッ。
シャワーの栓を閉める音がする。その後、
僕はずぶ濡れの子犬の様にクシャクシャにタオルで拭かれる事でやっと生きた心地がした。

「吉田さん、それではこれからの話をしましょうよ」 

事もな気に膝を拭き終えたこの女は僕に話の続きを促してくる。実際な話、この女からすれば膝をシャワーで流すだけの事なのだから何の苦労もない話なのであろう。この様な立場の違いからくる生活齟齬の話こそが早急に話し合わなければならない事かもしれない。

「はい、そうですね。まずは僕達の今後の生活の仕方について話し合いませんか?」 

「生活についてですか?」 

「はい。今現在、僕が人面瘡になってしまうと言う問題についてはすぐに解決する事ではないと思います。ならば、その問題が解決するまで川口さんとどう生活していくかの話を進める事が第一の事ではありませんか?」 

「…そうですね。まずはそこからですね」

女は納得してくれた様だ。続けて女は口を開く。

「では吉田さん、まずは私がどう言う生活をしているかお話しますね」

「はい、お願いします」 

女はゆっくりと話しだしてゆく。座る女に見上げ聞く僕。
部屋の隅から見下ろす蜘蛛と目が合った。一人で聞くには寂しい夜だ。話をどうか一緒に聞こうじゃないか。

この時僕はまだこの女が背負う重い現実について知っていく事になるとは夢にも思わなかった。夜はまだまだ続く。

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