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ショートストーリー? 転生したら女子高生の人面瘡だった件 第12話

「吉田さんは何も言ってくれないのね」

責めるような言葉に優しい語気。

「すみません」
言葉が見つからなく空白を埋めるだけの僕の謝罪。そんな僕に彼女は優しく告げる。

「それでいいと思う。色々語っちゃったけど、変に同情の言葉かけられてもね。冷める冷める。
それにさ、もう気にしない事にしたの。もう終わった事」
少しあっけらかんと話す彼女。僕の頭上に爪が食い込む圧を感じる。

「吉田さんには少し感謝してるよ。なんかあんなに痛かったお腹の痛みとかも今日は和らいでるし、溜めてた思い吐き出せたし。すっきり。吉田さんって無言上手だね」
へらへらと笑ってみる僕。無言上手の真骨頂である。

「今日何曜日?」
話題を変えてみる。

「木曜日だよ。明日も学校行かなくちゃ」

「休めないの?1日くらい」

「無理に決まってるよ。ただでさえ、一人暮らししてバイトしてるし、先生達に目をつけられてるんだから」

「それじゃあ僕はどうやって隠れれば良い?」

「んー、包帯?
私、最近体が痛くてよく湿布とか貼って登校してたから行けると思うよ。それとわかってるとは思うけど、学校では余計な事しないでね。もし人面瘡がバレたら私も吉田さんも何処かの研究所とかに幽閉されちゃうかもよ」 
まるで子どもなんかを怖がらせようとするかの様な口調の彼女。それは怖いねと合わせる僕。

「学校終わったら図書室にでも行って人面瘡について調べようよ」
話進める僕にそうねと彼女。一通り話し終えたのをお互い察したのか、そこからは何も言わずベットに入る。おやすみもない。僕も彼女に合わせて静かに目を閉じる。なるほど無言上手な二人である。

翌日の朝。
「どうしたの、吉田さん。目の下に隈ができてるよ。それじゃ、私の膝に痣が出来てるみたいじゃない」
寝起き一発目に僕に降り掛かる小言。川口さん……。これはあなたのせいですよ^_^
彼女が寝返りする度に、ベットに叩きつけられ、叩き起こされる僕。これじゃゆっくり寝付けもしない。僕がぶつぶつ小言を言うのを無視する彼女は身支度を進める。まだ仄暗い朝だと言うのに。
そんな僕の思いを察したのか彼女が僕に言葉をかける。

「吉田さんってもしかして、女子の身支度は無いものだと思ってる人?」

少し馬鹿にした様な口調。思わず目が泳ぐ。

「今から学校行くんだよ。例えどんな場所であろうと、誰しもに綺麗って思われたいものよ女って」

少し艶のある語気で僕に告げる。しかし、僕の頭には一瞬、永見の存在が浮かんだ。きっと彼女はまだ忘れる事は出来ていないんだろうなと思う。
僕の中に沸々と黒い感情が湧いてくる。
自分の身支度を終えた彼女は、膝にせっせと包帯を巻いていく。巻き終えた彼女は玄関へと向かう。ガチャリと音がする。

「最後に確認だけど、絶対に余計な事しないでよ」
吹き抜ける朝風と共に彼女の声が聞こえてきた。

「当たり前じゃないか。絶対、学校では大人しくしているよ^_^」  

布越しの僕は猫撫で声で堂々と嘘をつく。

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