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ニュースの手帖

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#毎日新聞

神戸の神出(かんで)病院で性的虐待が横行していた件

神戸の神出(かんで)病院で性的虐待が横行していた件

▼読んでいて、反吐(へど)が出る記事、吐き気に襲われる記事というものがある。それは何種類かあって、ひとつめに、その記事自体が誰かを差別しているもの。ふたつめに、記事で告発されている内容が、あまりにひどいもの。

今回は、ふたつめのほうだ。

内容は、優生思想のあからさまな暴発である。

▼2021年3月28日付の毎日新聞に、精神科病院で行われていた性的虐待についての記事が載っていた。

▼1面肩の

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保土ケ谷中学が「日本語教室での勉強」を出席扱いにした件

保土ケ谷中学が「日本語教室での勉強」を出席扱いにした件

▼移民のニュースには、悲惨なニュースが多いが、素晴らしいニュースもある。2021年3月26日付毎日新聞に、その一つが載っていた。池田直記者。適宜改行と太字。

〈<にほんでいきる>横浜の市立中「自立にプラス」/日本語教室 出席扱い/ベトナム人中学生 皆勤で進学〉

〈親が外国籍などの「外国につながる生徒」の学習を支援するため、横浜市立保土ケ谷中学校(生徒数913人)が2020年度、ベトナム人の男子

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選択的夫婦別姓が進まないのは「天皇の制度」に深い関係がある件

選択的夫婦別姓が進まないのは「天皇の制度」に深い関係がある件

▼新聞を読んでいると、たまに「日本という国の根源」に触れる記事を読むことがある。

2021年3月24日付の毎日新聞夕刊に、そういう記事が載っていた。選択的夫婦別姓の制度づくりが一向に進まないのは、「天皇の制度」に関係がある、ということを論じた、歴史家の加藤陽子氏のインタビュー。牧野宏美記者。適宜改行と太字。

〈任命拒否 へこたれていませんよ/「相似形の国や時代」から導く普遍性/別姓制へ「個人の

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「入管の問題は私たちの問題につながっている」件

「入管の問題は私たちの問題につながっている」件

▼入管ーー出入国在留管理庁の非人道性については、たくさんの報道があるのだが、あまりにも少ない、といわざるをえない。入管の実情をマンガにしたのが織田朝日氏だ。2021年3月18日付の毎日新聞にインタビューが載っていた。東海林智記者。

〈入管の実態 マンガに/難民申請の外国人支援 織田朝日さん出版/117本とコラムでわかりやすく「政策変えるのは私たち」〉

▼織田氏は2004年、渋谷でクルド人難民の

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「雑談」を少しあらたまって言うと「対話」になる件 斎藤環氏の災厄論

「雑談」を少しあらたまって言うと「対話」になる件 斎藤環氏の災厄論

▼2011年の東日本大震災と、現下(2021年春)のコロナ禍との共通点を探る試みが2021年3月12日付の毎日新聞で行われていた。

精神科医の斎藤環氏のインタビューから。

〈結論求めぬ「対話」こそ〉

▼まず、「ケガレ」意識による差別について。

ここでいう「ケガレ」は、「放射能の汚染」(東日本大震災における)や、「コロナウイルス感染」(今回のコロナ禍における)のことだ。斎藤氏は、東日本大震災

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毎日・八田浩輔記者の記事が抜群に面白い件 コロナワクチン開発

毎日・八田浩輔記者の記事が抜群に面白い件 コロナワクチン開発

▼毎日新聞の2021年3月17日付1面トップに、コロナワクチン開発についての抜群に面白い記事が載っていた。八田浩輔記者。

〈コロナで変わる世界 第3部 イノベーションの時代/1(その1)/mRNAワクチン立役者 テディベアに全財産隠し/「鉄のカーテン」越え渡米後、研究に心血〉

〈東西冷戦期の1985年、共産主義体制の東欧ハンガリーから「鉄のカーテン」を越えて米国へ向かおうとする1人の女性科学者

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東京は残念ながら医療崩壊しつつある件

東京は残念ながら医療崩壊しつつある件

▼海外から小誌を読んでいる人もいるようなので、東京の現在の報道をいくつか点描しておく。

▼まず、多くの日本人にとっておなじみの顔になった尾身茂氏のインタビュー。新型コロナウイルス感染症対策分科会長。2021年1月6日付の読売新聞から。鷹尾洋樹記者。適宜改行。

〈日本はリスクコミュニケーションが苦手です。

専門家は技術的なことを提案し、政治家が決定します。国と専門家の意見が食い違うこともありま

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杜撰な「本人確認」で複数の「本人」が誕生している件

杜撰な「本人確認」で複数の「本人」が誕生している件

▼最近、ドコモ口座を悪用して、お金が勝手に引き出されてしまう事件が頻発(ひんぱつ)し、全国的なニュースになった。

不穏(ふおん)なニュースだ。

「時代が変わっても変わらないもの」と、「否応(いやおう)なしに変えなければならないもの」とについて、それぞれ考えさせられる記事があった。

▼ひとつめは、2020年9月22日付の日本経済新聞「春秋」から。適宜太字と改行。

〈数年前、口座をつくるため訪

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「編集」で印象がまるで変わる件ーーALS嘱託(しょくたく)殺人の報道から

「編集」で印象がまるで変わる件ーーALS嘱託(しょくたく)殺人の報道から

▼編集によって印象がまるで変わってしまうことが簡単にわかる、いい例があった。2020年7月25日付の毎日新聞と東京新聞で考える。

これは、日本社会に蔓延(はびこ)る「優生思想」について考える導入になる。

また、木村花氏を死に追いやったリアリティー・ショー「テラスハウス」をめぐる「編集」の意味についても、応用して考えることができる。

▼まず、ALS嘱託殺人の概況報道をみておく。NHKから。適宜

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藤井聡太氏が今年度中に「四冠」になるかもしれない件

藤井聡太氏が今年度中に「四冠」になるかもしれない件

▼数日前、寝起きにスマホを見ると、noteから、あなたの記事が、1週間で最も読まれた記事の一つでした、というお知らせが届いていた。寝ぼけていたので、すぐ消してしまったので正確な文章ではないが、大要、そういう内容だったと思う。それがこの記事。

〈将棋のトッププロに見えている残酷な現実の件〉

これは2019年の3月に書いたものだ。直近の1週間で4000から5000ビューくらいだったと思う。

▼す

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木村花氏は「誓約書」に縛られ、事務所にPRのためSNSを使うよう頼まれていた件

木村花氏は「誓約書」に縛られ、事務所にPRのためSNSを使うよう頼まれていた件

▼女子プロレスラーの木村花氏(22歳)が、フジテレビの「テラスハウス」視聴者からの暴言を浴びて、自殺と見られる死を選んだ事件について。毎日新聞が重要な記事を二つ掲載していた。

▼一つめは、2020年7月5日付。

〈「テラハ」出演 故 木村花さんの母/「スタッフにあおられ…」告白受けた〉

〈3月末、花さんはリストカットした写真をSNSにアップ。その後、SNSのアプリを自身のスマホから消し、見

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400万人が「渡辺棋聖」対「藤井聡太」の第3局を視聴した件

400万人が「渡辺棋聖」対「藤井聡太」の第3局を視聴した件

▼きのうは素晴らしい将棋を見ることができた。

将棋の棋聖戦第3局は渡辺明棋聖が藤井聡太七段に一矢報いた。第4局は、わずか1週間後の7月16日。きのうの第3局の印象が鮮明なうちに行われる。

最終戦までもつれこんでも、7月21日。今月中に決着がつく。

対局のペースが早い。否応なしに盛り上がる番勝負だ。産経新聞の人は喜んでいるだろう。産経新聞記事から。

〈【ヒューリック杯棋聖戦】第3局 渡辺棋聖

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クールジャパンと言うならば(2) 映画づくりは韓国に学ぶべき件

▼ゴンクール著『北斎』の紹介メモを書いていて、「クールジャパン」関連で下記の記事を思い出した。

ポン・ジュノ氏が監督した「パラサイト」がアカデミー作品賞を獲ったニュースには心底驚いたが、その背景についての記事。毎日新聞2020年5月17日付の経済記事から。ソウル堀山明子記者。適宜改行と太字。

〈縦割り打破 韓流快挙/韓国 米アカデミー作品賞〉

〈今年2月9日、米アカデミー賞授賞式でポン・ジュ

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「議事録」には2つの大切な意味がある件 加藤陽子氏の論考に学ぶ

「議事録」には2つの大切な意味がある件 加藤陽子氏の論考に学ぶ

▼安倍晋三政権になってから、公文書の管理の杜撰(ずさん)さが目に余るようになったが、2020年6月20日付の毎日新聞に、「公文書を保存する」意義についての、とても大切な記事が載っていた。

▼具体的には、解散された「専門家会議」で話題になった「議事録」がテーマだ。

「加藤陽子の近代史の扉」から。見出しは、

〈歴史書くには文脈が必要 議事録の意義〉

適宜改行と太字。

〈政府は専門家会議を、行

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