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そらをとべないぼくたちの

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雑記/エッセイ まとめ。
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#エッセイ

602号室の天使の羽をちぎって奪った

書きかけの小説の登場人物たちの生活がわたしの生活と同じようにぐるぐると回っている、わたしが言葉にしなければこのひとたちの生は誰にも伝わらないのだけど、別に誰にも伝わらなくてもわたしの世界のどこかでこのひとたちは懸命に生きていて、幸福になったりすることも知っている(わたしは結末を知っているし、結末の先でも彼らはどうせ美しく生きるから)から、
誰かに知ってもらう必要があるのか、とぼんやり思うことがある

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ひとりとひとりのふたりぐらし

ひとりとひとりのふたりぐらし

いっちょ前に健やかなふりをして白湯を飲むところから1日は始まる、
100円ショップで100円じゃなかったキラキラのマグカップは大きさもちょうど良くて、レンジに入れても大丈夫だから気に入っている。

イチゴ柄のパジャマを引きずったままねだると、こいびとが食べていたピーナツクリームのコッペパンを3分の1くらいちぎって渡してくれた。
やわらかい甘さが心地いい、このあいだ食べた紅茶味のフレンチトースト、お

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1104回目の朝はあのカフェでモーニングを食べようね

1104回目の朝はあのカフェでモーニングを食べようね

 
逃避を幸福と呼ぶのをやめたくて、夜な夜なナイフを研ぐことだけが日課になる。
  
 
刺したいひとたちはみんなみんなあたしのことを知らない、だからまだ太陽は昇らないでほしい、なのにいつも不躾に空は明るくなって、あたしは終点に近づいていくから、降りる駅が決まっていないことに焦りだす。
 
 
 
自分が乗る列車のことを環状運転だと思っているひととは多分仲良くなれない、
仲良くなりたくないの間違い

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青い鳥は801枚目のTシャツをさらっていった

とうとう8月になってしまった、だからといってどうということはなく、ことしも夏はやっぱりあんまり好きになれないままです。


エアコンのきいた部屋の中で横たわっているあいだ、死ぬまでに読めない本、死ぬまでに見れない映画、死ぬまでに聴けない音楽、死ぬまでに歌えない歌、死ぬまでに着れない服、死ぬまでに立てない場所、のことばかり考えるのは、夏がやけに鮮やかで、みんなわたしとは別の生きものとして生きたり死

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0419個はやわらかくてあまいシュガーレイズド

 
夏に向けて可愛いサンダルを買ってしまったから足の爪を彩るためのマニキュアを探しに行かなくちゃ、つやつやの真っ赤がいいな、それか宇宙みたいに光る深い深い青色。
 
   
 
思ったより自分が洋服や着飾ることが好きなんだなって、最近はなんとなく思うから良かったな、好きなものが増えるのは単純にいいことだと思う。特にものはいい。感情がないから。欲しければ、買えばいいから。
 
 
買えないものや自分

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614番通りの美容室には初恋の人に似た美容師がいる

6月ですね、梅雨ですね、だるくって仕方ないですね、
去年の6月に書いた雑記を読み返しました、わたしは変わらなくて、変わらないような気がするけど少しずつ変わっていて、もう書いたことなんて忘れてひとりの女として自分の書いたものを見るたび、このひとの、文章が好きだと思ってしまうのでした。傲慢。いいことでしょ。
 
紫陽花まだちゃんと見てないから、調子が悪いのかもしれない。でも髪切ったから、ちゃんと夏を迎

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BPM0517の心臓

BPM0517の心臓

光るものがだいたい好きだってはなし、一昨日見に行った川の水が木漏れ日にきらきら光っててもうぜんぶどうでもよくなるくらいだった、その瞬間だけだけど、
なんかほとんど使ってもないインスタアプリのアイコンもやけに光って見えるような気がする、の、わたしの見えてる世界だけじゃなかったらしくってちょっと残念だね、
五感のぜんぶで特別になりたい、と思うの、小学生みたいで、馬鹿っぽくてかわいいでしょ。

愛はある

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果汁4.29パーセントのパックジュース

 
100%のグレープフルーツジュースの苦みが好き、かわいいカフェで飲んだコーヒーが美味しかったけど名前もう忘れちゃった、
アプリについてる通知のバッジとか、大して使ってないインスタのストーリーのピンクの枠とか、ゆるせなくって見もせずにただタップするだけの時間、
自分の面倒くささが相変わらず好きで、でも生活や世の中は呆れるほど面倒くさくて動きにくい、
手足と頭がばらばらに意思を持ってるみたいだよね

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コインランドリーの駐車場、0331日目に枯れる花

 
ざわざわと毎日が過ぎていく、馬鹿みたいに忙しくなったとか、そんな訳でもないはずなのにね、
こうやって乾いていくんだとしたら、誰か早く水をやってほしい、わたしは花なので、自分で自分に水をやれないの、わかるでしょう。
 
 
 
おだやかに生きたいけどプラスの刺激だけは欲しくて、わがままだと思うけど叶えてるひとがいるように見えるからまだ諦められない、
 
 
ねぇおだやかに幸福にいてね、辛いことな

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0227秒間だけは春だった

 
通販で買ったコスメで肌をつやつやにしちゃうのが楽しみなのに、それくらいじゃバランスの取れない天秤、
空が青いくらいで泣きたくなるのに肌も髪も心も馬鹿みたいに乾いている気がする、冬はきっともうすぐ終わる、
天国みたいな空に嗤われる地獄みたいな気持ち、
天国も地獄も知らないけど、春だけは知ってて、
春がどっちでもないことだけは知ってて、
別にあんまり好きじゃないけど春が来るなら良かった、

すべて

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アルバムの210曲目みたいな日

気がついたら2月も3分の1が終わってる、
カフェラテ味のたべっ子どうぶつが出たんだって、コンビニにさがしに行ったんだけどまだ売ってなくて(田舎だからかな)、本物のカフェラテだけ持って帰ってきた。おいしい。
あったかい飲み物とか、甘いばっかりのプリンとか、味の濃いお肉とか、そういうものでしか自分を救えない、って言ったら大袈裟か、自分の機嫌をなんとか保つこともできないことがある、
コーヒーが好きだけど

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特価122円のダイヤのイヤリング

特価122円のダイヤのイヤリング

駅で恋人を待っているあいだに見つけたイヤリングがやわらかく虹色にひかっている、330円のイヤリングや54円のチョコレートで機嫌をとれる自分が好きだけれど、ほんとうは機嫌をとれているんではなくて物質的な価値にそれほど興味がないだけだった、
ささいなことですぐにわたしの車輪は回らなくなる、高い油をさされたって仕方がなかった、車輪はいきているわたしのからだの一部で、からだは、わたしの頭が、こころが命令を

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0921億回目の報復性夜更かし

正しさなんてどこにもなくて、そこら中のどこにでもある、おっきなハンバーガーにかぶりつくこいびとの姿がいちばん正しいことだけはわかっているけど、それ以外の全部がわからないね。欲張りが悪いことじゃないってだれか言ってほしい、言ってくれなくてもわたしだけはずっと言い続ける、
それぞれの抱きしめる(捨ててもいい)地獄をどうか軽んじずにいられますように、すきなひとの地獄を見せてほしくて今日も短い指でつくった

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憎しみすらない父親の話とくだらない懺悔

とあるサイトの公募で“父に伝えたいこと”みたいなテーマがあって、あぁ応募しようかなとつらつら父親について思いだして書いていたのだけれど、たぶんこれはテーマとそぐわないから、ここに置いておくことにします。長いけど。
結論から言うと、伝えたいことなんてなかったのだ。そんなことを思うほど、わたしはあの人から、なにももらっていない。わたしの人生にあの人は、なにも与えていない。
よくドラマや小説で、「それで

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