熊を殺すと雨が降る―失われゆく山の民俗
「山の暮らし」を書いた本です。具体的には、木こりや、猟師、炭焼き、川の漁師などの生活を、丹念に書いています。
これらの生活は、二〇一一年現在では、ほとんど失われているでしょう。
では、現代の私たちとは、まったく無縁か、といえば、そんなことはありません。
私たちの住む日本に、かつては普通にあった生活です。私たちの先祖の誰かは、必ず、このような生活をしていたはずです。
本書にあるような「山の生活」の中で、育まれた日本人の気質や習俗、信仰も多いでしょう。
それらを、「古くさい」として、すべて捨ててしまうのは、もったいないです。
東日本大震災を経験した私たちにとっては、学べることが多い気がします。主に、精神的な面で。
「科学技術万歳、機械力万歳、行け行けどんどん」だけでは、立ち行かないことは、わかったはずですよね。
科学技術や機械力を、否定しているのではありません。
ただ、「違う選択肢もある」ことを、知って欲しいです。本書は、その役に立つと思います。
本当に豊かな生活とは、「選択肢が多い生活」ですよね(^^)
普通の人は、読み始めると、とまどうかも知れません。
まず、出てくる用語が、馴染みのないものが多いです。現代の普通の生活とは、あまりに違う世界だからです。
でも、大丈夫です。丁寧に説明してくれている上に、イラストでの解説が入ります。おかげで、わかりやすいです。
同じ日本で、数十年、時間軸がずれただけなのに、まったく異なる生活がある。
これには、新鮮な驚きがあります。自分と異質なことを知るのは、勉強になりますし、面白いです(^^)
以下に、本書の目次を書いておきますね。
第一章 山の仕事
杣【そま】 ※木こりのこと
日傭【ひよう】
木馬【きんま】
木挽【こび】き
植林
木地師【きじし】
漆掻【うるしか】き
炭焼き
第二章 山の猟法
熊狩り
猪狩り
鹿狩り
わらだ猟
鷹狩り
第三章 山の漁法
魚釣り
手掴【てづか】み漁
筌【うけ】漁
原始漁法
第四章 山の食事
魚
山獣
蜂【はち】の子
山菜とキノコ
終章 山の禁忌
口伝【くでん】
あとがき
文庫版あとがき