八幡神と神仏習合 (講談社現代新書)
日本の神さまの中に、八幡【はちまん】さまがいますね。石清水【いわしみず】八幡宮や、鶴岡【つるがおか】八幡宮、宇佐【うさ】神宮など、全国レベルで有名な、八幡さまを祭る神社が、いくつもあります。
日本の神社の中で、一番多いのは、八幡さまだという説があります。それほど、日本で、八幡さまは、人気があります。
少なくとも、お稲荷さまと並んで、日本の二大神社といえるでしょう。
ところが、古事記を読んでも、日本書紀を読んでも、八幡さまは、載っていません。
一応、八幡さま=応神天皇ということになってはいます。けれども、その説は、こじつけくさいです(^^;
では、八幡さまは、仏教の神さまなのでしょうか? 弁才天や毘沙門天のように、仏教の神さまが日本化することがありますよね。しかも、八幡さまには、「八幡大菩薩」という、仏教風の呼び方もあります。
でも、仏教の経典を読んでも、八幡さまは載っていません。
これだけ人気があるのに、正体不明の神さまなのです。
本書は、そんな八幡さまの正体を、明快に解いてくれています(^^)
これだけで、評価は、五つ星に値します。
八幡さまは、そもそもの成り立ちからして、いくつもの宗教の影響を受けていました。
朝鮮半島の土着の宗教に、仏教に、おそらく、道教の影響もあります。そこに、日本の神道が加わって、現在の八幡さまができあがりました。
日本の宗教が、「神仏習合」化してゆく過程を、そのまま体現したのが、八幡さまです。
本書で、八幡さまを読み解いてゆくと、必然的に、神仏習合についても、わかるようになっています(^^)
詳しいことは、ぜひ、本書をお読み下さい。
以下に、本書の目次を書いておきますね。
はじめに
第一章 神奈備【かんなび】信仰(神体山信仰)と仏教の伝来
神々は山に坐【ま】す/神社の出現/仏教の伝来/
氏族仏教の展開と日本的受容/伝来後一世紀/仏教徒による山岳修行/
【コラム1 神体山・神体島】/【コラム2 自然智宗【じねんちしゅう】】
第二章 神仏習合現象の始まり
神仏習合の素地形成/(1)神祇【じんぎ】・仏教両者の内容面より形成する素地/
(2)仏教受容面より形成する素地/(3)国家の宗教政策より形成する素地/
(4)仏教徒の山岳修行より形成する素地/山岳修行者の地方遊行/
など
第三章 八幡という神の成立
宇佐の御許山【おもとさん】/宇佐神話の形成/新羅国神を香春【かわら】に祀る/
東進と各地の「辛国【からくに】」/「ヤハタ」神の祭祀/
駅館【やっかん】川西岸と稲積山/宇佐平野の動向/
など
第四章 八幡神の発展と神仏習合
小山田遷座/隼人の反乱と八幡神軍/宇佐氏の再興/法蓮という僧/
法蓮と八幡神/小椋山【おぐらやま】遷座と二箇神宮寺/「仏神」としての八幡神/
官幣【かんぺい】に預【あずか】る/神宮弥勒寺の成立/「八幡神宮」の称/
など
第五章 習合現象の中央進出と八幡大菩薩の顕現【けんげん】
護法善神思想/鎮守【ちんじゅ】の出現/最澄・空海と地主神/
厭魅【えんみ】事件と伊予国宇和嶺移座/
大尾【おお】山帰座と道鏡天位託宣事件/比売【ひめ】神宮寺と小椋山再遷座/
など
第六章 本地垂迹【ほんじすいじゃく】説の成立
垂迹【すいじゃく】思想の始まり/本地垂迹説/本地仏の設定/
本地仏の造像と安置/信仰の広がり/習合の美術/
【コラム11 反本地垂迹説】/【コラム12 僧形【そうぎょう】八幡神像】
第七章 八幡仏教徒の国東【くにさき】進出
御許山【おもとさん】から国東【くにさき】半島へ/六郷山寺院の組織化/
山岳の寺院と石造美術/八幡文化圏の完結/
【コラム13 人聞【にんもん】菩薩伝承】/【コラム14 六郷満山と六所権現】
第八章 八幡信仰の全国的広がりと神仏習合
八幡大菩薩への信仰/柞原【ゆすはら】八幡宮/石清水八幡宮の成立/
官寺制の完成/一地方資料館の輝かしい成果/
石清水勧請【かんじょう】経路に出現した八幡宮/源氏の守護神/
など
おわりに
参考文献