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スキつけた後も、結局何回も読み直してるnoteを集めました。無断で入れてますので、差し支えある場合は教えてください。
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#創作

【掌編小説】幻葬の夏

【掌編小説】幻葬の夏

 夢で明美を見たのは半月前。高校の同級生で親友だった明美は、高校時代の頃のまま、屈託なく笑っていた。
 卒業後些細なことで喧嘩し、それ以降疎遠になっていたが、殺人的な激務に忙殺され心も擦り切れていた私には、懐かしさから穏やかな気持ちを取り戻してくれるものだった。
 ようやく一段落した仕事だったが、それは束の間で、次の業務が打ち寄せる前の大波として既に見えていた。それを考えると憂鬱になる。
 好きで

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短編小説「空色の線」

短編小説「空色の線」

 筆に十分な水を含ませ、パレットに出した水色のアクリル絵の具と絡ませる。使い込まれた様子のないパレットは、着色していた色が移る心配もない。そうして完成した空色の絵の具。傾斜のつけられたキャンバスの、僅かな凹凸上を空色の筆先が左から右へ撫でる。キャンバスの左辺から右辺へ横断する線は、それだけで十分すぎるほど雄弁であった。その成果に、筆を持つ少年は満足そうな表情を浮かべる。

 しかし、暫くするとキャ

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