再掲載:短編小説「ため息」
ブーツで昼下がりの海岸を歩くと、霜の上を歩く様な感触が楽しめる。その感触を求めて私は家から遠い海岸まで歩ってきた。嫌なことを忘れたいときは、私はここに来る様にしている。周りには他にも散歩をする人が数名見えるだけであり、時間もちょうど良い様に思えた。私はしゃがみ込み、誰にも気づかれないようにため息を一つ溢した。ため息は海岸の細やかな砂の間をさらりと滑り落ちた。私の鬱憤から挽かれたため息は、海岸の砂などでは濾過されないだろう。きっと地球の内核まで届くのだ。そんな妄想に浸っている