東京装甲少女 EPISODE0 第23話 【 神田パルチザン 】
2032年の東京では都営大江戸線の更に深く
新線のクロノスTOKYOラインが開通されていた。
フルオートメーション化された期待の
新無人地下鉄線は、24時間運航され現在の
東京23区の地上及び地下鉄線の東京全体を
網羅する期待の新線で、地下鉄構内入り口や
その他各所の振動センサーが、異常値を検知すると
緊急遮断により、ある一定区間事に自然災害を
想定し防火、防水を兼ねた遮断壁が自動的に下がる仕組みとなっていた。
だが、異常を一度検知してしまうとメーカー側の
ミスなのか遮断壁が上がらず復旧しないケースが
新線開通後、多く起こっていた時期でもあった。
何故そのような不測の事態が起きるのか今の所、
原因は不明。
また、メーカー側も水害や火災での遮断壁が下がるのはある程度、予測はしておりその際は
メンテナンスの人間が現地に向かい対応する手筈になっていたが、よもや、爆撃によってそこに向かうはずの人間が職場放棄により向かわないというのは想定していなかった。
そして爆撃により異常を検知した一部の遮断壁では救出が来ない不運な人々が中に閉じ込めらた。
その一つの遮断壁の中に久留和がいた。
遮断壁が下がりどれくらいの時が、
経過したのだろうか?
大きな衝撃音がして直ぐに遮断壁が降ります
という、緊急を知らせるブザー音と共に
アナウンスが流れ訳も解らないまま、
左右数10メートルくらいの範囲に遮断壁が
即座に降りだしいつの間にか
閉じ込められてしまった。
状況は解らなかったが、
一瞬見た感じだと、更にその先は下りていなそう
だったので、ここだけの範囲限定なのだろうか?
まあ、いづれ、助けは来るだろうと閉じ込められた久留和含め数十人安易には感じていたが
予想は外れた。
当初、閉じ込められた数十人の人々は性善説を絵にかいた人々の様に団結していたが、まずは隔壁が
閉じたことで電波の遮断、初めての環境による
疑心暗鬼などによって急激に態度が
変わっていった。
また、空腹による苛つきや小競り合い、
良く解らない権力争いなどが生じ、
次第に調和などない状況になっていった。
久留和は、当初からその数十人の団結の中には
加わらなかった。
彼は周りで騒ぐ人々と離れ一人騒がず
目を閉じ横になった。
なぜ、そこに参加しなかったかというと、彼は人や集団を見るとき【利】か【義】かという独自の観点で見るようにしていたからだ。
彼の言う【利】とは
基本的に何かの目的があり人が集まる集団や
自分の得や望むものを得ようという目的で
近づいてくる人物であり、
【義】とは
他人に全く左右されない、志や自分の意志によって魂が動く人や集団であると判断している。
久留和はその数十人の団結に【利】を感じたので
そうそうに距離を取った。
何故離れたかというと自分が事業で失敗した時によくそういう光景を見ていたからだ。
団結する事で助かりたい、任せたい、優位になりたいなどそういう、自分が何々したいという集団程、
人に左右され悪い状況になっていくほど人が変わるという様を嫌という程見ていた。
今となれば、只の人の本質を見抜けなかった自分の甘さもあるが、以前行っていた事業は当初
うまくいっていたが、結局は信頼していた部下の
不祥事が原因で業績は傾きだした。
【何かあったらいつでも言って下さいよ!
いつでも力になります】
【スゴイですね!自分も久留和さんのように
なりたい】
と言っていた人間ほど、その状況になった時、
見放し、蔑み、だからあなたはダメなんだと
言わんばかりに罵倒し突き放した。
結局のところ、生きていれば何とかなるよと
東京への夜逃げを泣きながら後押ししてくれたのは
由比とその数人だけだった。
由比達は今でも何の仕事をしているかも、
本名なのかもわからないが、
馴染みの大阪のBARで出会った。
自分も、そのBARへ何故通うようになったかは
今になっては解らないが
年を取るという事は仕事や恋愛やプライベートの重要な何かを気軽に話せる友人が減るというのを
丁度実感した頃からだったと思う。
悩みを気軽に話せる程、家族や友人には心配は掛けれないし、それを、周りに知られたり知らされても困るというのもあったのだと思う。
皆が匿名の関係でどこに住んでいるのかも年齢も職業も解らず、実際はBAR以外では会ったことも
なかった。
それでもよく合う由比や、名前も知らない他の常連客に素性を隠しつつ、時に心情を晒しつつ沢山の
自分の話をした。
他の常連も同じだったと思う。
皆、本名も素性も知らないが人間としての部分は
知っていた。
久留和は時間があればそのBARを訪れ、酒を飲むと鼻の頭を赤くさせる事で
いつしか周りから【アカハナ】という名前が
付いた。
轡を並べ彼らや彼女らと語らった。
素性も本名も解らないでも、友人であり親友であるのかないのか解らなかったが、逆にその関係が
心地よかったのだと思う
そしてある日、最後に事業が傾き、もうどうしようか解らず死にそうな顔でBARをに訪れ会社の内情を話した時、
もう、ええやん!あんた、よう頑張ったよ!
夜逃げでなんでもして逃げたらええ!
こんな生活捨てたらええ!とりあえず、
生きなあかんよ!
死んだら始まらんよ!
生きとれば、なんぼかいいことあるし、
また挽回できるわアカハナさんなら何とかなる!
みんな信じとる!
また、落ち着いたらここでみんなであつまろな!
だから今考えとらんで逃げや!!
と励まし、どうしたらいいか悩み
もたついていた久留和を駅まで皆で一緒に
連れて行き東京への新幹線の切符と少しの餞別を、持たせ、泣きながら、皆が、もうええから、
東京にはよ逃げろ!
と送り出してくれた。
確かに、初めは寂しさや何かの補填で集まった
メンバーではあったが
自分という人間の本質と向き合い、純粋に
生きてくれという思いで、魂が動き彼らは
利害関係なく東京に送り出してくれたのは
【義】によっての行動だったと思う。
その後も、東京に出たのはいいが、食うや食わずの中、出会った田母神の頭も、自分の素性も解らない状態で自分という人間を気に入り、テキヤのいろはも教え、店を持たせて貰った。
だが、いつしか頭に迷惑が掛かるかもと言う理由で出ていこうとすると、そんな小さな事は
気にする事はないと言い、
以前、訳アリのタイ人を引き取って、日本の国籍と名前を与えたら逃亡したので
お前が今日から久留和になれと、その後も
名前も場所も無条件に自分を信じて与えてくれた。
多分あの時、相当苦労して、
自分なんかの為に動いてくれていたかと思うと
今でも感謝しかない。
その後、結局、頭が亡くなりテキヤの頭を
自分が引き継ぐことになったり、苦労は掛けているが結婚したり、可愛い子供も産まれてきてくれた。
結局、失敗した人間へ対する世間の冷たさの中、
ゼロになるきっかけやゼロから始めるチャンスを
くれたのは
そんな様々な人の【義】によって導かれ
今があると感じていた。
まあ、そんな波乱万丈な人生を歩んできた彼の目には、この数十人の集団の面々はどの面構えを見ても、ぬるま湯に浸って生きてきた人々が大半で
あるように感じたし
他人の為に何かをするような【義】によって
動く人々には見えなかったので
逆に面倒に巻き込まれるのは御免だと思い
我関せずで、横になり過ごしていた。
それが生き残る最善の策だと思った。
そして案の定、
集団は小競り合いを繰り返し、
何時しか、その行動が、徒労だと気づいた人々は、
腹を空かし、何もしゃべらず動かずが助けを待つのが最善の方法だとやっと悟り久留和と同じで、
誰ともしゃべらず、騒がず、横になる事を選んだ。
遮断壁が降りた数日後、
中は数十人の人ががいるにもかかわらず、
シーンと静まりかえった不思議な状況に
なっていた。
言葉を喋らず、空腹を抑え瞑想をするような
状況の中久留和は娘と嫁を案じていた。
酔いどれの渡り鳥の様な生活で、沢山の迷惑を
かけている自分だったが、久々に、神田の自宅に
帰れる矢先にこのような事態が起こった。
こんな所に何日も閉じ込められているという事は、
外は大丈夫なのだろうか?
苦労を掛けてはいるが、辛抱強くこんな自分でも
別れないでまだいてくれていた妻に感謝しつつ
2人の無事を祈る事しかできなかった。
それから更に数日が過ぎ
水も無く、食べる物も無い状態の無音の空間が
続いた。
視界はぼやけ、思考力も低下し、
もう、そろそろかなと、虚空をみつめる中
ある男性が久留和に近寄ってきた。
これをどうぞ!
と穏やかな笑みで、水と菓子を渡そうとしてきた。
久留和は空腹に耐えかね、
それを受取ろうかと思ったが
渡してきた人物の笑みが
とても不気味に感じたので
彼を無視をした。
その人物は他の人間にも同様に施しを始めた。
久々に人が起き上がり動き出す音がした。
施しを受けた人の中には、涙を流して受け取る人
までいた。
久留和はその人物が、
自分と同じで初日から他と同調せず、
一人でいたのを見ていた。
随分、自分と同じような
修羅場をくぐってきた人間なのだなと
思ったが、彼が自分に話しかけてきた
その目を見た時に
何か自分の生い立ちとは全く違う
不気味さを感じた。
久留和が空腹の中、
彼の施しを受けなかったのには、
秘密があった。
年頃の娘への御機嫌取りの為に、
ちょうど自宅へ帰る前、
娘が喜びそうな甘い物でも買っていけば
いいだろうと小ぶりの菓子を
購入していたのだ。
久留和はそれをポケットに隠し周りにばれないように、少しづつ食していたからだ。
そうでもなければ、
皆と同じに彼に物乞いをしていたであろう。
だが、久留和の読み通り、
あの男から施しを受けないで正解だったと
思ったのは次の日の彼の行動で、
違和感から核心に変わった。
男が空腹を少しでも満たす事の出来る
菓子と水はこの空間では
絶大な力を持った。
いつしか、腹の減った者は、
食料を持つ男へと物乞いをするように
集まるようになり、
男はその人々に向け
世迷いごとのような話を言い出したり
火の話をしだした。
明らかに、通常の世界であれば
皆が興味なく素通りするような話でも
人々は食べ物欲しさに
熱心に男の話を聞きだしたのである。
次の日も、その次の日も
男は時たまそのような話を交え
人々に菓子をほんの少し与えた。
それでも
腹の減りや喉の渇きを訴え男に懇願する人には
あなたには前世の罪があるから
こんな辛い目にあっている。
私にはライターがあるから自分の衣服を燃やし
火を灯せ。
そして、その火に祈れ!!
そうすれば罪は浄化されるので
菓子をやると言いだした。
久留和は、それを遠巻きに聞いて非常にヤバい
事態になって来たと思った、、、。
そして、隔絶した空間は、
なんとも異様な様相になってきた、、、。
男も女も、関係なく菓子や水を求める為に
羞恥心を捨て裸になり衣服を燃やし訳も分からず
祈り始めたのである。
一応、喚起システムは生きているようなので、
煙によって死ぬことはなかったが
スプリンクラーは、なぜか作動しなかった。
だが、火災を感知する報知機は作動し、
その音は、裸の男女が祈る間、けたたましく
鳴り響いた。
そして、その火を絶やすなと男が煽るので、信者たちの祈りにより、うるさく眠れもしなかった。
時計替わりにしていた、元々充電してなかった
デジタル端末も電源が切れ
もう、時間感覚も解らなくなってしまったが
体感的には1か月くらいが経過してそうな
感じではあった。
久留和は異世界から更に常軌を逸した世界に
突然放り込まれた気分であった。
そして、
次の日、その状況は更に悪化した。
自分以外の人々は皆が全裸になり衣服を燃やし
始め、訳の解らない火に祈りを捧げていた。
いつしか、崇めていた火が消えそうになった頃、
あの男が、
聖なる火を絶やしてはならない!!
絶やしてはならないぞ!!
更なる災いがお前らに降りかかるぞと言い!!
まだ、一人衣服を着たままの久留和の方を指したのである。
それを見た人々はゆっくりと久留和に向かい
歩き出したのである。
まあ、なんとなく、予想はしていたので、
やはりこの展開かと
久留和は、しかめっ面をした。
それよりも何よりも、最悪、裸にされて
服を燃やされるのはいいが
このポケットに入っている食べものが
見つかったら、自分はただじゃすまないだろうな
と感じていた。
だからといって今から隠すとしても
どうしようもなかった。
久留和はハンターが猟犬を使い追い立てられる、
獲物の気分はこんなだろうなと思いながらも、
ジリジリと遮断壁の端までいつの間にか
追い詰められてしまった。
久留和
【まあ、、、、、上出来だったか、、、俺の人生にしては、、、、。】
多分あの男は
俺が、あいつの施しを受けなかった時点で
いつかこうしてやろうと思っていたのだと思う。
どちらにしても、もう無理だろうなと思い
今際の言葉を述べつつ、鉄のような冷やりと冷たい遮断壁に力なく寄りかかった。
そして、観念し諦めた
その時、、、、、、、、、。
反対の防壁から、カンカンと音がした、、、、。
初め、久留和も何の事か解らなかったが、
少し間を置くと
また、カンカンと音がしたので、
これは誰かが叩く音だと気づき
今にも襲い掛かってきそうな、
人々に向かい
久留和
【待て!!待て!!助けが来たぞ!!!】
と言った。
裸の集団も、初めは、こいつは何を言って
いるんだという不思議そうな顔で見ていたが
外から叩く音が聞こえる事に気づきだし、
皆、それに呼応するように、そこら辺の
物を拾い、相手に自分たちの存在を知らせるため
壁を叩き始めた。
皆が、相手の応答が無くなったので、
少し手を休め静かにすると、
叩いていた所と少し離れた場所に
突然
ズバッ!!
赤く光る鋭利な物らしきもので亀裂が入った
そして、その鋭利な亀裂が入った隙間から
少し経つと男性の声が聞こえてきた!!!、、、、、、、。
東京装甲少女 EPISODE0 第24話へ続く、、、、、
こちらで小説を展開している
東京装甲少女EPISODE-0という作品ですが
物語の初まりのOpening Part から
現在のストーリーまで今の所
【無料公開中】です。
是非、東京装甲少女
という世界観の伝わる
始まりから
お読み頂ければ幸いです。
今後は有料化も予定しておりますので
期間限定の今のうちに
お読みい頂ければ幸いです。
よろしくお願いいたします。
ここから、初めのストーリーを読む
※お知らせ👼
現在こちらで小説を展開している
東京装甲少女という作品ですが、
こちらにはお話の基になるデジタルアートNFT
作品があります。
そしてその作品が
2024年4月に行われましたNYCで大規模開催された
https://www.nft.nyc/という展覧会で
展示されました🎊
皆様のご協力を頂きこの度展示して頂く事が叶いましたので
また来年も展示されるのを目指してまいりますのでご協力
よろしくお願いいたします。
ありがとうございました🙇