もし太田裕美の「木綿のハンカチーフ」が古典和歌だったら
木綿のハンカチーフ。
中学生のころ、クラスメイトが口ずさんでいるのを聞いて、なんとなく気になったのがこの曲との出会いです。
作詞が松本隆というのは大人になってから知りました。
松本隆といえば、80年代の最強アイドル・松田聖子のファンであれば誰もが知っている作詞家ではないでしょうか?
聖子ちゃんの曲で「これ好き!」と思うものは、たいてい松本隆が作詞しているのです。笑
他にも人気アニメ「マクロスF」のヒロイン、ランカ・リーが歌う「星間飛行」など、ヒット曲となる歌詞を生み出し続ける凄い方…!
そんな彼にとって、作詞家としての出世作となったのが「木綿のハンカチーフ」なのだそうです。
男女それぞれの視点が交互に切り替わる歌
この曲、いわゆる「Aメロ・Bメロ・サビ」のような要素がなく、ちょっと変わった構成ですよね。
当時、作曲家の筒美京平も「こんな詞に曲はつけられない!」と思ったのだそう。
ところが関係者と連絡が付かず、仕方なく作曲に取り掛かったところ、すんなり名曲に仕上がってしまったのだとか…!(Wikipedia情報)
確かに変わった構成ではありますが、ちゃんと盛り上がりもあって、心を動かす曲になっていますよね。。
作詞家ももちろんですが、改めて作曲家ってすごい…!!
そう感じさせられる一曲です。
慎ましく上品な「察してちゃん」
さて、本題となる歌詞の内容です。
上京してしまった大好きな彼が、どんどん都会の色に染まり、遠い存在になっていく切ない歌。
このように、初めは「贈りものはいらない」と慎ましく断る彼女でした。
そんな彼女が、曲の終わりでは贈りものをねだります。
ハンカチも買えないほど貧乏な女の子だったのね、、!
…と、もちろんそういうことではありません。笑
わざわざこのように伝えて、自分が泣いていることを彼に知ってもらいたかったのでしょう。
忘れられた女としての、恨みもあったかもしれません。
もともと流行り物や高価なプレゼントには興味のない、慎ましい性格の彼女。
「ハンカチーフ下さい」なんて遠回しに言っちゃうあたり、「上品な察してちゃん」といったところでしょうか。
平安時代にもあった「泣いてますアピール」
平安時代に涙を拭くものといえば、やっぱり袖。
「袖が濡れてしまったよ」とか「袖が乾くひまもない」という表現があれば、十中八九「泣いてますアピール」です。
そこで、この曲を和歌にするにあたり「ハンカチーフ」は「袖」に言い替えることに。
シンプルにそのまま「袖を切ってください」でもよかったのですが…
服を切るといえば、伊勢物語にそんなシーンがあったな!と思い出したのです。
一目惚れした男は、着ていた服の裾を切って、和歌を書いて女に贈った。
そんな内容です。
その場でとっさに服を切るなんて、なかなか思い切った行動ですよね…!
物語では求愛の行為として服を切っていますが、今回の和歌ではあえて別れのプレゼントとして求めています。
この点にも女性側の皮肉りたい気持ちを込めてみたつもりですが、「上品な察してちゃん」を上手く再現できているでしょうか…?
狩衣の 裾切りたるを 分きなむや
濡れにし袖の 乾る間なければ
※解説は冒頭のインスタ参照