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不確定日記

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#メモ

不確定日記(嘘 その2)

取引先である蓬莱社の日真さんは、電話をかけてくる前に必ず「今、お電話よろしいですか」というメールを送ってくる。二度手間だからやめてください、とたしなめられるほど親しくもないので、「どうぞ」とだけ返すと数分後に電話がかかってくる。
かといって天ちゃんみたいに、いきなりかけてきてこちらの都合も聞かずに本題に入るのも、受身が取りづらい。
今日も天ちゃんは私が一人暮らしの部屋で完璧な晩酌の支度を整えた

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不確定日記(2019年6月24日)

今日は梅雨らしい天気です。とラジオで聴いたが、出かけてみると雨はギリギリ止んでいて、開く気満々で留め具を外していたビニール傘を歩きながら巻いて閉じた。
このところどうも胃の調子が悪いのは、梅雨のせいか、連載が終わって次の準備をする仕事の先が見えない落ち着かなさのせいか。今日は単発のイラストのラフを描く。こういう時にすぐ終わる仕事もあるのは気持ちが良くてありがたい。
描き終わって外に出ると、遠

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不確定日記(1番遠い体)

メモ帳に残っていたメモ。

ニッパー型の爪切りは歯科医の道具を思わせる鋭利さで、引き出しの中でも威厳がある。刃先に触らないようにゆっくり取り出し、机の長い辺と並行に置く。鑢も隣に厳かに並べる。椅子に深く座り体を出来るだけ深くふたつに折る、足をゴミ箱の縁にかけ、切られたほうの爪が飛び散らないように経験で会得した角度まで斜めに倒し、まずは親指に刃をかける。角を丸くしすぎてはいけない。切られた爪の面積を

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不確定日記(タイミングがわからない(でも一体何の))

不確定日記(タイミングがわからない(でも一体何の))

昨日の日記の続きとしては、結局昼過ぎに二時間眠った。

夕方に散歩に出かけたらやっぱり人出は多く、居酒屋にもラーメン屋にも喫茶店にも人がそこそこ入っているように見えた。何が正解なのかはわからない。三百円のサービスの花束と六百円のドウダンツツジの枝を買った。すれ違いに花屋に入ってきた青年は『母の日の花ってどれですか』と聞いていた。数日前の母の日の存在に突然気付いてしまったのだろうか。横目で確かめたら

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不確定日記(タイムテーブル)

不確定日記(タイムテーブル)

朝起きないばかりか昼にも起きなくなってしまい、1日の区切りがわからないことに罪の意識が芽生え、仕事の進みも悪く、現実を直視したくなくて日記が書けなかった。

それは某日も同様だったが、どうにか漫画の原稿が上がりそれが朝の十時過ぎでそれから眠って起きたら十四時だった。

夏のような気温なのでシャワーを浴びようかと浴室に行くとタイルがカビている。気温が上がってカビたな、とは思っていたが昼間に見ると明ら

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不確定日記(髪の毛問題メモ)

不確定日記(髪の毛問題メモ)

当面の問題は髪の毛をどうするかだ。美容院自体は営業するようだが、まだ行く気にはならないだろう。頭髪の色も形もだんだんバランスを失って曖昧模糊としてきた。髪の毛を梳くのが流行っていなかった時代の人たちの写真に似ている。まずは伸びてきた根本を染めようかと染料を買ってきたが、箱を開けたら薬剤にかぶれないか、腕に塗って48時間様子を見ろと書いてある。なかなか根気が必要だ。同じ美容室にもう十数年は通っている

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不確定日記(向きを変え続ける)

不確定日記(向きを変え続ける)

寝違えか、2、3日左の肩甲骨のあたりが痛かったが動かさなければそうでもないので痛くない姿勢で居たら不思議な格好になった。
さらに雨が降ったからか偏頭痛が来たので鎮痛薬が効くまで片腕だけ伸ばす土下座の姿勢(なんとなく痛みが和らぐ)で居た。
どうせゲームの中でも労働と資本主義経済の日常を暮らさなければならい、と毎回辛くなるのでやっていなかった「どうぶつの森」を頭痛から逃れるために(うつ伏せのまま)ダウ

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不確定日記(黄色いのと赤紫の丸)

不確定日記(黄色いのと赤紫の丸)

眠れたが、今度は10時間も眠ってしまった。加減ができない。しかもいつも目が覚める昼過ぎになるまでべっとりと眠い。

天気は良くて、買い物に出てみる。みんなそうらしく道に人は多い。食堂の前の歩道を挟んで両脇に一つずつベンチが置いてある。それぞれに男性が座り、煙草を吸っているからマスクをずらして会話している。みんなその間を通るので飛沫を避けるアクションゲームのようだった。避けられたかどうかはわからない

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不確定日記(布団時空)

不確定日記(布団時空)

眠れない。布団にスマホを持ち込むから。それ以外の努力(腹式呼吸、湯船に浸かる、ストレッチなど)は極力しているつもりだがてんでダメだ。さらに寝具に精油入りのスプレーをかけてみて忘れていた、のを思い出したのは、頭まで布団をかぶって目をつぶってみた時だ。
針葉樹のにおいがする。杉か檜か。そこで引き出されたのは慣れない寝床の思い出で、しかしにおいだけではどの寝床のことだったかが絞れない。記憶が四つほどごっ

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不確定日記(ないものを詰める)

不確定日記(ないものを詰める)

いきなり膝の力が抜けるように、かくん、と寂しくなることがある。そういうとき、特に何かのきっかけはない。
子供の頃、「なんで泣いてるの」と聞かれてもまったくわからなかったことを思い出す。私には子供がいないが、子育て中の人の言葉から知った「イヤイヤ期」という何もかもが不満で不安な時期の自分自身のことを、私は結構憶えている。家の各所の床材、台所のビニールタイルとリビングのくすんだ緑色のカーペット、アール

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不確定日記(聞こえやすい)

不確定日記(聞こえやすい)

ベランダの洗濯機は最近やたらと暴れがちで、その最中に窓を開けているとちょっと心配になるほどの音がする。どうにか洗濯終了を知らせる音が鳴って見に行くと、洗濯機はベランダに対して三十度ほどは斜めに移動していた。あれだけの音を立てて、角度が変わるだけか、とも思う。道まで落ちた洗濯機が水と私の部屋着を撒き散らしながらジタバタする想像すらしていた。ガタついている脚に雑巾を噛ませる。人質に、静かにしてろ、とい

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不確定日記(水蒸気と輪郭)

不確定日記(水蒸気と輪郭)

役所に用事があったので何日かぶりに外に出た。派手なマスクを中心に考えたら洋服は全部黒くなった。興が乗って、軽く化粧をする。下地と粉と眉毛とクリアマスカラ。大したことはしていないのにいきなり顔が外向きになって驚く。昔、しばらく自宅だけで仕事をしていたら「オカヤさん外で仕事したほうがいいよ、顔がぼやけてる」と言われたことを思い出す。一年、十年、人と合わないと私はどんな顔になるのだろう。たまにハッとして

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不確定日記(痛い頭)

不確定日記(痛い頭)

大人数でいて、入れる店を探して右往左往する、という夢を週に一度は見ているのではないか。その状態が好きなのか不安なのかわからない。私は積極的に店を探す方ではない。
昨日は中庭に面した大きな窓のある喫茶店(吊ってあるドライフラワーの数が多い)の半円形のテーブルに沿って、15人ならいけますかね、と言われた(もちろん夢で)。

2日ほど貧血による頭痛がひどく、横になったり仕事したり。頭が痛いと頭が痛い事し

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不確定日記(写真は特に関係ありません)

不確定日記(写真は特に関係ありません)

夢。ライブハウスで手を挙げて跳ねたらステージ上から名前を呼ばれて恥ずかしくなりトイレに行く。個室は空いているが奥にもっとたくさんありそうなので矢印に従っていくと、広大な廃墟に日が差し込んでいる。植え込みの脇のモダンな形の柱と自動開閉便座。便器の水は流れるようだが壁がないので躊躇する。光がきれいなので写真を撮る。大柄な男がやってきて、しまった、と思い、写真を撮るのに熱中したふりをする。廃墟は広く、坂

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