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【目印を見つけるノート】1544. 写本の美しさとそれを手にした人たち

けさ一番の驚きは、
アルゼンチンの最南端、ティエラ・デル・フエゴの波打ち際がそのままの状態で凍っていたことです。波頭も白いままで(『Es Mundo』紙のインスタより)。
初めは、海が干上がって潮が塩になって大量に残されたのかと……見間違いました。どうやら、現地の気温が急にマイナス15℃まで下がったのが原因だそうです。何度下がったのかな🤔
南半球は冬です。
氷山の映像は崩壊するのも含めてよく目にしますが、海の波打ち際がそのまま凍っているのは初めて見ました。

私たちは気候をコントロールできません。

今日は終日雨のようです。
洗濯もお休みです。

雨を見やりつつ、外に出ました。

先月、6~9月のスケジュールをポンポン入れたのですが、その予定に忠実に動いています。今週来週は結構詰めつめにしたので、ちょっと反省していますけれど😅
ですので、支度をして外に出ます☂️

今日は学習ではなくて、自分が好きなもののあるところへ行きました。
上野の国立西洋美術館へ一直線🚃

地獄の門も雨だらけ

目当てはこちらの企画展です。
『内藤コレクション 写本ーいとも優雅なる中世の小宇宙』

私はまったく詳しくないものの、中世から近世にかけての時祷書が大好きです。
えーと、いうならばお祈りのための絵入り歳時記というのがしっくりきます。

キリスト教の一般信徒向けに祈祷文などを記したものですが、グーテンベルグの活版印刷が発明され普及する前は絵も字もすべて手描きで、羊皮紙を綴じた本になっています。

時が進むと、豪華なものが作られるようになります。
もっとも美しい本としてしばしば紹介される『べリー公のいとも豪華なる時祷書』を紹介している動画を置いておきますね。

フランス・シャンティイ城コンデ博物館所蔵の『べリー公のいとも豪華なる時祷書』(Les Très Riches Heures du Duc de Berry)についての短い解説(フランス語)

このように豪華な時祷書は王侯貴族がふんだんにお金を払って専門の画家に作らせたもので、一般人が目にすることはまずなかったでしょう。
つくづく今の一般人でよかったと思います。

さて、前置きが長くなっていますが、時祷書は中世の『写本』のうちのひとつです。その他も多く作られています。

展覧会は『内藤コレクション』を中心にしたものとなっています。2016年に寄贈があって展示が行われましたが、今回は寄付で新たに所蔵となったものも含めて154点、大きなコレクション展として開催されているのです。写真撮影可でした。
時期は13世紀から16世紀、
写本の内容は大きく分けて、
・聖書
・詩編集
・聖務日課のための写本
・ミサのための写本
・聖職者が用いたその他の写本
・時祷書
・教会法令集・宣誓の書
・世俗写本
となっています。写本というのは教会や聖職者の日常にとって必要なものだったのだということが分かります。『マグナ・カルタ』(イギリスの大憲章、13世紀)の写本もSNS(HistoryAliceさんの)で見たことがありますので、国の公式な文書も同様に写本になっていたでしょう。
国はフランス、イギリス、スペイン、ネーデルラント(オランダやベルギー)、ドイツなどになります。言語はラテン語ですね。
写本は1ページごとに切り離された状態(零葉)ですが、その方がひとつひとつをじっくり見られますね。展示に思い切り寄らないと見えません。

まず驚いたのが判型の多さです。
小さいものはページが文庫本より小さく、大きいものはA3を越えるのでは。B3かな🤔 大きいものは教会でミサをするときのものが多いようで納得です。読みづらいですもの。楽譜も多々あって、私の頭の中ではグレゴリオ聖歌が流れました😆

『ミサ聖歌集零葉』(フランス東部、14世紀前半)

大きいもののレイアウトバランスもたいへんですが、小さいものはとにかく細かくて、相当神経を使ったと思います。見るときちんとレイアウトの線が引いてあります。レイアウトの線は何で引いたのでしょう。木炭かな。
文字は羽根ペンで書いたということですが、間違えちゃったらどうしたんだろう🤔自分がしょっちゅうミスタイプするので、つい余計な心配をしてしまいました。

どれも見ていて想像を掻き立てられましたが、特に印象的だったものをふたつ挙げましょう。

ひとつは、『レオネッロ・デステの聖務日課書 零葉』(イタリア・フェラーラ、年代1441-48)です。

こちらはフランチェスコ・ダ・ゴディゴーロ(写字)、ジョルジョ・ダレマーニャ(彩飾)によるものですが、依頼主のレオネッロはボルソ・デステの兄だということでした。ボルソ・デステはフェラーラ公国の初代当主です。ボルソの跡を継いだのが異母弟のエルコレで、
その子がイザベッラ、ベアトリーチェ、アルフォンソ1世、フェランテ、イッポーリト、シギスモンドとなります。

それがどうしたと言われると何ですが、ルネッサンスのイタリアに大きな足跡を残したきょうだいです。塩野七生さんによるイザベッラ・デステの評伝(『ルネサンスの女たち』所収)、デステ家に起こったスキャンダルを書いた短編(『愛の年代記』所収だったかな)などがありますが、たいへん興味深い一族です。
ワクワクして読みました😉

このうち3人は『オデュッセイア』でも登場いただいていますので、なおさら感慨深く拝見したのは言うまでもありません。
デステ家は長く繁栄していましたので、いつ頃この写本を手放したのだろうと想像しました。

デステ家のことについては明日も書きます。

もうひとつは、展示品の最後にある、
『ガブリエル・デ・ケーロの貴族身分証明書』(スペイン・グラナダ、1540年)です。こちらはスペイン王カルロス1世(神聖ローマ皇帝カール5世を兼ねる)と母のカスティーリャ女王ファナが発給したイダルゴ(爵位のない貴族証明書)です。

なぜ二人が発給しているのか説明すると長くなるなあ🤔
スペインはアラゴンとカスティーリャ2地方(以前は国)の共同統治の形を取っていて、ファナは政務にまったく関わっていなかったもののカスティーリャ女王だったのです。カルロスは実質的に全体のスペイン王だったけれど、公的には母ファナを女王としておいた、というのが短めな説明かな。

そのようなことをずっと書いているのですが、本当にそうだったという「証拠」を見たのは初めてでした。

「嬉しいなあ」と心から思いました。
そうですね、100万人フォロワーが付くより嬉しいかもしれません。付くはずないですが😅

そして、証明書の脇にはファナの肖像メダルがありました。

感動

これはカルロスが作らせたんだろうな。想像。

嬉しいなあ✨
思いもよらず見られただけで
滅多にないたいへんなご褒美でした。

時祷書からちょっと離れましたが、
美術館話はまだ明日も続きます。
今日はこんなところでしょうか。

Gregorian Chant『Deum Verum』

展示されていた楽譜はこんな感じだったのでしょうか。楽譜の読めない私は想像するしかないのですが。

それでは、お読み下さってありがとうございます。

尾方佐羽

追伸 みなさま雨にお気をつけて。

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