【書評】『ありがとう、わたし ~乃木坂46を卒業して、心理カウンセラーになるまで~』(中元日芽香)
2017年に乃木坂46を卒業してから3年半。現在は心理カウンセラーとして活動されている中元日芽香さんが、この度これまでの経験をまとめたエッセイ『ありがとう、わたし ~乃木坂46を卒業して、心理カウンセラーになるまで~』を出版しました。「乃木坂時代にこんなことがあったなんて」と思ったり、その経験から現在の活動にどう活かされているのかがわかる内容になっています。
紹介する本
著書名:『ありがとう、わたし ~乃木坂46を卒業して、心理カウンセラーになるまで~』
著 者:中元 日芽香(なかもと ひめか)
出版社:文藝春秋
発行年:2021年(令和3年)
表の「ひめたん」と裏の「中元日芽香」
第1章では2011年~2017年の乃木坂46時代に起きたことについて述べています。加入前までは地元の広島でダンススキルを発揮し、フロント的な立ち位置についていました。しかし、乃木坂加入直後に「選抜メンバー」と「アンダーメンバー」と分けられ、中元さんは「アンダーメンバー」に分けられました。ショックだった中元さんですが、そのはけ口がなかったため、「食べ物」に執着するようになり、いわゆる「過食症」になっていました。体重も増加していきましたが、表では「ひめたん」として活動するので、ライブや握手会前には急激に体重を落としたりと身体に負担をかけていました。
それまで先頭に立っていた自分が突然下位クラスに属されるとなると、誰しもがショックを受けます。そのショックから立ち直るための手段が見つからないことで、自分をさらに苦しめてしまう負の連鎖に陥ってしまったことが分かります。「自分だってこうはなりたくないのに」と思っていてもなってしまうつらさが垣間見えます。
その後しばらくはアンダーメンバーとして活動していましたが、7thシングルで初の選抜入りを果たしました。しかし、自分のポジションに対する理解が追い付かず8th以降は再びアンダーメンバーとなります。そこから再び選抜入りに向けて、アンダーライブではアンダーセンターとして精力的に活動しました。そして15thでついに2度目の選抜入りを果たしました。しかし、中元さんはそこで「選抜入りしたけど、そこから私はどこに進めばいいのだろう?」となり、そこから自分が何を評価されているのかがわからなくなり、そのギャップに苦しむことになります。そしていつか、自分の思ったことをしようとも何かが邪魔をしてできなくなってしまう。何でもない状況なのに涙が流れてしまう。それを受け2017年1月に適応障害と診断され、休養を余儀なくされた。
せっかくの選抜入りを果たしたのに、そこから何をすればよいか困ってしまった中元さん。普段の社会でもよくあることで、目的は達成したけど、その次は何を目指して行動すればよいかわからなくなってしまうことがあります。この本を読んで「常に目的・目標を持って行動する」ことが大切だと思いました。
カウンセリングのハードルを下げる環境を作ろう
2017年を以て卒業した中元さん。卒業後は休養中に受けた心理カウンセリングに興味を持ち、カウンセラーへの道を歩み始めることになります。専門スクールや大学で勉強を重ね(現在も大学生)、2018年から心理カウンセラーとしてカウンセリングサロン「モニカと私」を開設しました。そこから多くの方の相談を受け、いまでも人気のサロンとなっています。
本の中でも相談事例が端的に紹介されていましたが、いろいろな悩みや相談事に対して、中元さんは真摯に聞き入れ相談者に言葉を掛けています。休養中に救われたカウンセリングを、今度は自分が救っていく立場になったことに感慨深さも覚えます。
カウンセリングとなると、気軽に相談できるものではないというのが一般的なイメージだと思います。しかし、この本を通してどんなことでもお話ししてくれればそれに対して何か言葉をかけてくれる気軽な場所だということが分かりました。(※カウンセラーによって差異はあります)
アドバイスをすることもあれば、ただ共感する言葉をかける。相談者からの相談事によって変えているというところがカウンセラーの凄さです!
最後に中元さんが運営しているカウンセリングサロン「モニカと私」のURLを貼っておきます!ぜひご覧下さい。