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企業決算から見る「明暗」と「展望」

今日、ソフトバンクグループの昨年度最終利益が4兆9879億円との決算が発表され、東証に上場している企業としては、これまでで最高額となった。

また、国内の有数自動車メーカーであるトヨタ自動車もグループ全体で最終利益が2兆2452億円となり、前年度から増加した。

その一方で、旅行各社や飲食業界、航空業界などは過去最悪水準の赤字決算となった。

今回のコロナ禍で、企業決算が業種によって明暗が分かれる結果となった。

今回はその企業決算から、「明暗」の理由と今後への「展望」について述べていきたい。

「モノ」vs「ヒト」でハッキリと明暗が!

上記で紹介した4社を見ると、製品や商売相手が「モノ」「ヒト」であるかで明暗が分かれていることが分かる。

ITや製造業は、商品が通信や自動車などのモノが中心であることや、海外の景気が日本より先行して回復傾向にあることから、コロナ禍の影響を受けにくい、もしくは影響が限定的であった。また販売業でも「巣ごもり需要」による恩恵を受けた業界はコロナ禍でプラスに働いた。

一方、飲食・旅行・宿泊などはヒト相手に「(飲食・旅行)商品を販売する」といった業種であるため、コロナ禍による緊急事態宣言の外出自粛等により、ヒトそのものがいなくなったことで、必然的に売り上げが落ちてしまった。大幅なコスト削減を行いところだが、飲食や旅行などの「労働集約型産業(※1)」では人件費がコストの多くを占めているため、整理解雇等を行わない限り、会社全体のコストは売り上げの減少幅に比べて減りにくい。
また鉄道や航空業界は業態こそ「資本集約型産業(※2)」だが、「ヒトを運ぶ」業種であることから、結果的にコロナ禍の影響をダイレクトに受けた恰好になった。


(※1)労働集約型産業:労働力がヒト(労働)に集中している産業。飲食業や宿泊業などのサービス業に多い。

(※2)資本集約型産業:労働力がモノ(資本)に集中している産業。鉄道・航空・IT・製造業に多い。

労働における生産性向上が急務だ!

海外の企業を決算を見ても、いわゆる「GAFA;G(グーグル)・A(アマゾン)・F(フェイスブック)・A(アップル)」といった巨大IT企業はコロナ下でも軒並み過去最高益を記録したりと、モノ商売中心の企業ほど今回のコロナの影響は受けにくかった。むしろそれが追い風となっている。

今回のコロナ禍における企業決算で1つ言えることは「労働の生産性を上げる」ことが、業績へのダメージを軽減&回避できる方策の1つだと考える。

日本の労働において「生産性を上げるべきだ」ということは再三叫ばれている。その一例で昨今の「働き方改革」が挙げられているが、現状は労働時間の改善などの「働き方そのもの」でしか変わっておらず、肝心の「労働者の生産性向上のための環境整備(DX化・機械化など)」などは全然進んでいない。

しかし、今回の企業決算の明暗を見て、労働力を「資本集約型」にアップグレードさせることで、企業のコストパフォーマンスが上がるほか、従来より少ない労働者で多くの成果を出せることで、結果的に労働者1人あたりの生産性は向上することを筆者は確信した。

日本は解雇規制が厳しく、直近の失業率も2.6%(2021年3月)と欧米に比べて低い。しかしその中身は「労働集約型産業が多い」「非正規労働者のシェアが多い」「雇用調整助成金で雇用を維持している」などというのが現状である。

多くの痛みを伴うが「労働力の機械化による余剰労働者の整理解雇」「思い切った賃上げ」などが今後必要になるだろう。また長期の視点から「リカレント教育」「労働者のスキル向上」による労働の流動性を上げることも生産性向上の1つだろう。

いずれにしろ、日本の労働市場は従来の常識から脱却し、大幅な発想の転換を迫られている。

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