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「なめんじゃねーぞ」問題を、なめんじゃねーぞ(笑)

こんにちは、チョイチョイなめられがちなアサです(笑)


まだ自身のガンが判明する前の、5~6年前のはなしをしましょう。

実母の入院中のことです。

私は、母が入院する病棟へとせっせと通う日々が続いていたのですが、

ある日、夫も「今日、一緒にお見舞い行くよ」と病院へと足を運んでくれたことがありました。

4人部屋、カーテンで仕切られていて、

わたしは奥の方に、夫はその隣に、

それぞれがパイプ椅子に座って、

母とおしゃべりしていました。


しばらくして、いつもの男性看護師さんの声。

「〇〇さーん、失礼しますねー」


母に声を掛けながら、カーテンをシャーッとあけてきました。

点滴のチェックか何かだろうか……わたしは「どうも」とおじきをしようとその男性看護師さんの方へと顔を向けました。

すると突然、その男性看護師が、ひざまずいたのです。


手前に座っていた、夫の姿を見たとたんに。



なぬっ!?

 
ひざまずいた!?


私は、あっけにとられました。

おい、これから、指輪でも差し出して、夫にプロポーズでもするつもりか??


夫は、気にも留めずに、その男性看護師にペコリとおじぎなどをして、話しはじめた看護師の言葉を聴いています。




私は奥の席で、この様子を見ながら、

……ふぅ~ん


ほぉおお


あーーそうですかぁ


この若い男性看護師に対する「信頼ポイント」を一気に引き下げました。


看護師さんなどの職業は、子供などに目線を合わせるために、ひざまずく場合があるだろうし、すべての人に、ひざまずく対応をしているのならいいのよ。

でもあんたさぁ、私がひとりでここに座っていたことが何度もあったけど、一度たりとも、ひざまずいたことなんて、なかったよねぇ??


立ったまま、何かの説明する。
もちろん、それもいい。

だったら、今回だって、そうしろよ。


それを、夫の姿を見た瞬間に、脊髄反射のようにして、ひざまずいちゃったよね。


ふぅ~ん……


白髪頭の夫が、あんたにとって「エライ人」に見えちゃいましたかぁ??
何かの「権威」でもまとっているように見えましたかぁ??

あんた自身、そうやって人を選んで対応を変えたことに、気づいていないみたいだねぇ。


ふぅ~ん……
若いのに、ダセェな……

頼むから、じいさん、ばあさんがやるようなマネを、若いあんたがやらんでくれ


あんたが、今夜眠るときに、

(まずい……思わずあの男性に対してだけ、あんなことをしてしまった……患者さんや、隣にいた奥さんが見ていて、どう思っただろう?  二度とやらないようにしよう)


そうやって身悶えして眠れなくなるくらいの、感受性があることを祈るばかりだが、

(あー今日も面倒な患者ばかりで、超つかれた……)


って、すやすや眠るつもりなんでしょう?? 

夢に化けて出てやろうか??(笑)


***


はい、ちょっと大げさに書いてみましたよ(笑)

実は、こんなことは、「ははは」と笑って受け流せるエピソードなのです。


些細な、ちょっとした「もやり」。

日常に、空気みたいに存在しているもの。

空気は自然のものだから、「問題」には足り得ない。

あたりまえの空気に対し、「おかしいじゃないか」と言っている側の方が、「なんか、ごちゃごちゃうるせーヤツ、空気の読めない人」と糾弾され、抹殺されます。


よくも悪くも、日本てのはそういう国として、これまでやってきましたね。

そうして、かくいう私自身も「誰かを抹殺する側」としても、生きてきました。


「その程度で、ギャアギャア言ってるの? 私たちの時代はもっと……」
「ここでは、そういう風に決まっているんだから従うしかないじゃん」
「抗議すれば、鬱陶しい人だと思われるよ。黙って従っていればいいの」

私は、正真正銘の、いくじなしの「ことなかれ主義者」です。

自信満々に言っちゃうけども(笑)


抗議したり、声を荒げたりすることを回避しながら、適当に生きてきました。


だって、面倒くさいから。


ただでさえ、人生って「面倒くさいこと」であふれているんだから、これ以上、面倒くさいことを増やしてどうするの。


ってな具合です。

だからこそ、思うんですよ。

私という個人が

「それは、おかしいだろう!」
「バカじゃねーのか!?」

……と叫ばないから、
世界は、当たり前に、
このようにして存在するのだろうと。


世界は、私が作っている。


「世界は、ひとりの、複数形で、できている」

って何かのCMのキャッチコピーであったなぁ。

***

一方で、わたしは、まるっきり真逆の感覚も持っています。

つまり、この世界のあらゆる問題に首を突っ込み、「間違っている!」「是正されるべきだ!」と、まるで趣味のように年がら年中 自分の正義を叫び続けている人に対しては、

「いいから、まずは、自分の人生を生きろよ。あなたの幸福は、外側の世界が正されないと、叶わないのかい?」


と言いたくなるのです。

人には、多種多様な立場や考え方があって、それぞれの「幸福や快適のあり方」がバラバラに存在し、「一律にこうなれば、全世界の人々が平たく幸福である」なんて世界は、存在し得ないのだから、存在し得ないものを、作れるはずもないじゃないかと。


なのでわたしは、あるとき、この世界はどうにもできんから、「私ひとりで勝手に幸福に生きる」と決めました。

そして世界中の人が、そのように考えて生きたならば、この世界は幸福な人であふれ、結果的に「幸福な世界」に近づくはずだと考えました。


***


だがしかし、ふいに「夫にだけ、ひざまずく」という光景を目の当たりにしたときなどに、思うのですよ。

私が黙って口をつぐみ、「この程度のこと」とスルーし、大人ぶって受け流す。

そのくらいを受け入れる「器」を見せないでどうするの、と常識人ぶる。


空気のようにして、なかったことにした、「小さなもやり」。

一人ひとりの風船の中に、その「空気」は少しずつ溜まり、いつしかパンパンに膨らみ、たくさん集まって、空へ空へと高くのぼり、あるとき、その風船は一気に割れる。

割れた後に、中に入っていたものは「空気」ではなく、「腐ったヘドロ」だったのだと気づく。

ひどい悪臭を放ち、顔を背けたときには、もう遅い。

世界の至るところで、だれかの尊厳がひどく傷つき、とりかえしのつかないことになっている。


***


これまでスルーされてきたノリやルール、風潮、文化や慣習に、「おかしいだろ!」と声をあげることは、とても難しい。

それは、「この国家の」「この地方の」「この組織の」といった巨大なものじゃなくても、例えば、家庭内というごく小さなコミュニティーの中でさえ、これまでの文化を作り変えてゆく、刷新していくことは、ひどく難しい。

誰かが「この取り決めは、もうやめよう」と言う。
誰かが「イヤ、このルールは、絶対に必要だ」と言う。


そこには、それぞれの立場や考え方から導かれた正義があり、主張がある。


みんな、自分の正当性を、まるでレンガを積み上げるみたいに語って、さも「われこそが、正しい!」とその壁の高さを誇ってみせるけれども、ほとんどの主張は、

自分の好き・嫌い/快・不快/利益・不利益に基づいた、まがいものってことはないですか


このときにモノを言うのが「数」。


「数」

=「世間さま」

=「常識」

=「正義」


本当は、

「数」

=「長いモノに巻かれた人々」

=「群れることで安心を得ることを選んだ人々」

=「正義なんかではない」



そんな可能性だってあるのに、そこは数によって圧殺されることになっている。


だからこそ、思う。

世界の物事は、いつも自分の立場や好き嫌いを「超えて」、判断されねばならないだろうと。


たとえば私が、仮に男性だったとしても、男性にだけ ひざまずいた看護師に対し、「おかしい」と主張できるかどうか。

自分の立場や利害を抜きにして、公平な立場から、モノを言っているだろうかと、考えてみる必要がある。


そして、なるべく「公平な立場」から何かを訴えるには、「自分の幸福」を、先に自らでつくっておく必要があるのではないか。


「自分の人生、なんだかんだと、いろいろあるけど、結構幸せだよな。今日はnoteに何を書こうかな……なんて考えられるのも、今、平和に暮らせているからだもんな」


……と、この程度には、自分の人生を肯定できているかどうか。

逆に、

「こんな時代に生まれて不幸だ、被害者だ」


そんな風に、自分の不幸を嘆き、世界を嫌うとき、おそらく世界をニュートラルに見つめる視点は生まれにくいのではないか。


世界に向かって「NO」を叫ぶには、
まず先に、自分の人生に対して「YES」と言えているか。


このあたり、禅問答のようにグルグルする。

世界にむかって「ふざけんなよ!」と怒りの声をあげる勇気を持つと同時に、

自分の幸福を世界にゆだね、叶えてもらおうとする態度を、放棄できているか。


この一見矛盾するような、ふたつの気持ちのバランスを、いつも考えている。

***

若い男性看護師くん、「もやり」のいい例だと思ったから、この記事に書かせてもらったけれど、あなたはこんな風になじられるようなひどい看護師さんじゃなかったよね。

あの時は、とてもお世話になりました。

あなたが、今日も元気に働き、患者さんに寄り添っていてくれたらと願う。

ただし、人を選んで、ひざまずくことなくね。

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