鴻上尚史 『 「空気」を読んでも従わない 息苦しさから ラクになる』 : 君も立て、 我も立つ
書評:鴻上尚史『「空気」を読んでも従わない 息苦しさからラクになる』(岩波ジュニア新書)
本書は、若者向けに書かれたものだが、むしろ大人が読むべきだろう。
というのも、大人がダメだからこそ、著者も子供たちに期待を寄せざるを得なかったからである。
本書における著者の問題意識は、「なぜ日本の社会は息苦しいんだろう」というところにはなく、その先の「この社会をすこしでも変えていこうよ」という呼びかけにある。
だから、本書を「日本社会論」として読んで、満足しているような大人は、まったく役に立たない。
本書の日本社会論の部分は、著者がすでに『「空気」と「世間」』(2009)で詳述したものであり、本書はそれを「前説」とし、その上で、そんな「空気」と「世間」が支配する、理不尽な日本の社会を、子供たち自身と未来の日本の子供たちのために「大変だろうけど、勇気を持って変えていこう」と訴えた本なのである。
したがって、われわれ大人は、こんな社会を子供たちに遺したということを少しは恥じて、今からでも、すこしでも「空気」と「世間」に抗うべきなのである。
つまり、「この本は良いよ」などと「年長者」づらして奨めるのもいいけれど、それよりも、自分が行動で示すことの方が、よほど本書の趣旨を正しく理解したものだと言えるだろう。
だから「わかる」だけでも「良かった」だけでも「面白かった」だけでもなく、「ああ、重い課題を与えられちゃったなあ」と、少しは本書の意図を正しく汲み取ってほしい。
本書の結語は、決して子供たちだけに向けられたものではないのである。
初出:2019年6月20日「Amazonレビュー」
(2021年10月15日、管理者により削除)
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