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伝わらなければ意味がない

「客と店員の立場が逆転したら、その関係は終わりを迎えつつある」
という持論を持っているのですが、再認識する出来事が最近ありました。

かつてわたしも百貨店の接客業に従事しており、
自身が店員という立場だったからこそ、そう思うのです。
お客様は神様ではありません。それは断言します。
お客様だからといって横柄な態度や、
会社(店)のルールに従わず自己の要求を通そうとするなど、そういったのも論外です。

また、店員もただの一人の人間です。
すべてを完璧に、希望通りにこなせるわけじゃありません。


ただお金を「払う」以上、客と店は対等の立場ではないと思っています。
そして対等でない立場だからこそ双方が、
「想像力」を使わないといけないのだと思っています。


「客と店員の立場が逆転?どういうこと?」と思われた方。
もしあなたが長く通っている店があったとして、これまでにこんな経験はありませんか?

・最初は丁寧に対応してくれていたのに段々おざなりになってきた気がする
・相手の雰囲気次第でこちらが気を遣ったり愛想笑いしてしまう
・約束事を忘れられた、
など。


その店に通う理由は、あなた個人の思い入れや愛着もあれば、特定のスタッフまたはお店全体との信頼関係があってだと想像します。
これらはあくまで一般的に起こりやすい事例を思いついただけですが、
今回は4年以上の間に毎月担当してもらっていた美容師さんとのお話をしたいと思います。


塵も積もれば、とは思いたくなかった

初めて入った美容院で担当になった美容師さんは
髪型の好みや髪質を熟知してくれ、なにより脱毛症にも理解がありました。

当時のわたしはそれまでの人生で一番のどん底状態だったこともあり、ポジティブ思考であるその美容師さんの対応がとても心地よかったのでした。
また、去年経験したわたしの病気による心身状態についても理解してくれ、救われた気持ちになったこともありました。

ただ些細なことかもしれませんが、
通い出していつの頃からか気になる点がでてくるように。
例えばその中のひとつでいうと、
予約していた商品を忘れられていたことなど…

この件は去年の11月のある日の出来事でした。
店頭商品を注文しましたが在庫がなく、  
その代わり12月になったら入荷すると聞いたので、
12月に購入するという約束を取り付けました。
その日の施術が終わりお礼のラインをした際にも、12月になったら取りに行きます〜!という内容を入れていました。
(※約束事は口頭と文のダブルで確認する職業柄の癖あり)

そして12月に来店して予約した商品のことを伝えると、なんとすっかり忘れられていたのです。

さらには「そんなことありましたっけ?」と言われて仰天。

いやいや、しましたやん!(笑)ラインも(笑)
と、わたしが笑顔を繕って指摘すると表情が硬くなり、おもむろに受付あたりを探しはじめたあと、それでもなかったのかバックヤードへ。
しばらくして商品を手に持って出てきました。
「伝票は残ってました、商品も一点だけありました」と。

ここで若干の、というより結構な不信感を覚えモヤりました。
この店の商品はこれまでに何度か買っていたものの、はじめてのことでしたから。
百歩譲って「すいません失念していました!」と素直に言ってくれた方が、自身の中でも消化がしやすかった。
しかしここで嫌な雰囲気にしたくないので、
来年もよろしくといった挨拶を互いにして、年越しを迎えます。

塵がかたまりになった瞬間

毎年届いていた誕生日クーポンつきのハガキがまだきていないことに、ある時気がつきました。
このハガキの割引率は大きくてお得感があるだけでなく、
そのハガキがポストに入っているのを見たときのちょっとした気分の高揚感や、
自分へのご褒美のために使う時の両方を毎年、楽しみにしていました。

はて、一体どのタイミングで来ていたか思い出そうにも埒が開かない。
訊いてもいいものか否か悩みましたが訊くだけなら問題ないかと判断し、
深刻な感じにならないよう軽めの感じで訊いてみました。

結果として、要約すると以下の返事がきました。

・クーポンハガキはなくなった
・代わりに誕生日を申告し好きな時に割引を適用することになった


いつからその方針になったかはわかりませんが、
それなら12月の来店時に教えてほしかったと思いました。
そこまでは「モヤ」で済んだのですが、

「受付に貼り紙がしてあるんですけど…だいぶ前から。」
という一文がきた瞬間に、気持ちが凍りつきました。

その受付はいつも販促品がそこかしこに置かれているだけでなく、顧客リストが丸見えの状態でおいてあることが多いため、
お会計時もちょっと目のやり場に困るような場所のどこに貼り紙があるのか探していちいち見ないといけないの??と困惑した気持ちに。

しかしあれから数日経ったいまでも、こう思うのです。

もしわたしがその立場だとして。
例え来店時に伝えることを忘れていても、
連絡先を知っているならば年末年始のあいさつにかこつけて、ハガキがこなくなったお知らせをするのにな、と。

もしそれができていなくて顧客から今回のような確認の連絡がきたなら、お詫びの言葉と誕生日祝いの言葉も送るけどなぁ、と。

でも美容師さんはわたしではないし、
人のことは人のことで変えられない。

「つもり」ではいけない理由

いつの頃からか笑顔でお迎えされないと感じていても、もしかしたら本人にとっては、
微笑んで入店を迎えていた「つもり」なのかもしれないし、
貼り紙のことも伝えた「つもり」なのかもしれない。

業種は違うことは百も承知ですが、
わたしがいた百貨店向けのブランドでは
接客対応の指導についてめちゃくちゃ厳しく、
特にお客様との「信頼関係」について非常に徹底したメソッドを持っていました。
(パワハラの事実は含めどそれは別問題)

その際教えてもらったことは、

・入店したすべてのお客様の目をみて笑顔で挨拶すること
(繁忙期なら盗難防止策の意味も含む)
・取置や取り寄せなど金銭授受が発生するお客様との「約束事」は責任もって自分が引き受け、忘れることはあってはならないこと
・ミスをしたときはすぐに謝罪とリカバリー方法を提案すること
・「申し訳ございません」「ありがとうございます」などの基礎的な言葉を、脊髄反射レベルでいえるようになること、など。


そしてこれらの教えは接客業以外の業種に転職しても、大いに役立ちました。


小学校高学年のころに経験したワンシーンを先日、ふと思い出しました。
担任がしたなんらかの質問に対してクラスの男子が反抗的に「おれ、先生に言うたし!」と大声で言いました。

それに対して担任が、
「お前が言ったつもりでも相手に聞こえてなかったら意味ないねん!」
と怒鳴り返したのです。

いまなら保護者から抗議がありかねないやり取りかもしれませんが、
その言葉を聞いて男子は言い返すことができていませんでした。

そして昨晩、作家の内館牧子の「女盛りはモヤモヤ盛り」というエッセイ内にある「聞こえなければ」という話でも、
「挨拶は、相手に聞こえなければ挨拶したことにならない」という一文とタイムリーに出くわしました。



今回の件は本当に残念で悲しい気持ちになりました。
しかし新しい年なので冒険をかねて、新規開拓もひとつの手かなと思ったり。
美容院ジプシーにならないことを願って。


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ねこのとおぼえ
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