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Webライティングの現場から~「今日、頬杖に載せたもの」vol.3~「ひとりひとり」を「一人ひとり」と表記する理由

皆さん、ごきげんよう。
Bitter Orange Radio、東京担当の橘ねろりです。

ライターとして、さまざまな言葉を扱うなかで、
原稿に用いる言葉には、表記統一に沿ったものを選ぶというルールがあります。

当社が使用している表記統一表は、独自で作成したものですが、
そのなかには、ちょっとこだわりを持って表記を選定した言葉もあります。

今回は、そんな「頬杖案件」に上がった表記事例について、お話したいと思います。

「ひとりひとり」を「一人ひとり」と表記する理由



表記はゆれる~

原稿作成をひと通り終えると、最後の仕上げとして、原稿内の表記を確認する校正作業を行います。
今時はパソコンの文書上で自動的に校正が可能ですが、
私たちコンテンツグループでは、有料の校正アプリに一度原稿を通して表記をチェックし、その後、社内ライターによる肉眼での校正も行うことにしています。

ねろりの原稿はライター蒲郡みかが校正する

文字間違いやタイプミスなど、誤字脱字が出ることも少なくない原稿作成の世界…。
誰がいつ頃、このような表現で言い出したのかは知りませんが、
同じ意味の単語で表記が異なっているものが複数混在している場合、
それらの単語を「表記ゆれ」と呼びます。

「ゆれる」とは、「不安定な状態になる」という意味でしょう。
表記が統一されていないものは、心もとなく不安定、というわけです。
「友達」や「友だち」
「ひと通り」「一通り」など、
ゆれがちな言葉はたくさんあります…。

表記は、原稿内容によって故意に変えることもあります。
漢字だと堅苦しいので半分だけ仮名にして柔らかいイメージを出したい、というときがあるのです。

たとえば、ある原稿のなかでは、ビジネスの顧客に対して「お客様」としたところを、他の原稿では、旅館の宿泊客を「お客さま」と表現してみたり。
これだけでもスーツを脱いでラフな格好をした、リラックスしたお客さまのイメージが表記から伝わってくる気がしませんか?

日本語は、漢字と平仮名やカタカナを組み合わせて表現できるため、
表記自体にイメージを沸かせる力があるのではないかと思います。

だから、丁寧に言葉を選んでいる場合でも、表記はゆれるものです。
基本的には、原稿内で統一されていればどの表記でもOKですが、
しっかりと統一のルールを決めている言葉もあります。

原稿を校正するときは、あらためて一歩引いた視点で原稿を眺めるのですが、文章を書いているときとは、また違った印象に見えてきます。
ちょっと他とは違ったスタイルの単語は、
浮き出ていたり、光っていたり―。
ゆれているものたちは、自己主張が強いのです。

校正の原稿はちょっと違って見える…


「一人」と「ひとり」が意味するもの

表記統一表を制作する際に、表記に迷った言葉がいくつかありました。
その一つが「ひとりひとり」です。
表記統一の参考にしている「記者ハンドブック 新聞用字用語集」(共同通信社)によると、そこで統一されている表記は「一人一人」でした。

しかし、巷では、「一人ひとり」の表記も少なからず見られました。
私が以前、編集していた雑誌独自の表記統一でも、「一人ひとり」を採用していたこともあり、今回は、「漢字+仮名」の表記で統一することにしました。

ですが、私のなかでは、これも言葉のイメージが明確に見えたからこそ、決めたような表記でした。
それは、文字を見つめているうちに、自然と目に浮かんできた景色でした。

一人ひとり。
そこには、「一人」の大人と、「ひとり」の子供がいる気がする―。
そこには、大勢のなかにいる「一人」と、孤独な「ひとり」がいる気がする―。

漢字を「大人」「公的」のイメージで、
仮名を「子供」「私的」なイメージで見ると、
そんなふうに見えないでしょうか。

大人や子供、大勢と個など、そこには多様な人々がいて、
それぞれの人がクローズアップされると、
そこに「一人ひとり」が見えてくる―。

そういう景色を一瞬見たような気がして、
この言葉の意味を一番表している表記は、やはり「一人ひとり」なのではないかと、そう思ったのです。

一人ひとりのイメージを目に浮かべて


ちなみに、「ひとつひとつ」の場合は、「一つ一つ」です。

「人」は誰しもこの世に2人といませんが、
「もの」は同じものがこの世にいくらでもある、という意味で…。

シンプルな単語でも、奥深い世界が広がっています。

今日もまた、ゆれるものを探して、
深くて広い言葉の海を渡っていきます…。

言葉の海を渡る舟…


「Bitter Orange Radio」では、
今後もさまざまなコンテンツをお届けしていきます。

今日がどんな日でも、「素敵な自分を応援する」あなたへ―。
小さな灯が心にともりますよう。

お相手は、橘ねろりでした。

Written by Tachibana Nerori

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