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なぞりのつぼ −140字の小説集−

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読めば読むほど、どんどんツボにハマってく!? ナゾリの息抜き的140字小説を多数収録! ※全編フィクションです。 ※無断利用および転載は原則禁止です。
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2023年11月の記事一覧

140字小説【寝たら死ぬぞ】

140字小説【寝たら死ぬぞ】

「今日、アンタの好きなアイドルがテレビに出るみたいよ」
「えっ、マジ!? 何チャンネル!? 何ていう番組!? ってか、何時から!?」
「深夜2時半」
「深夜かぁ〜、う〜ん……もし起きてたら見てやってもいいかなぁ〜」
「アンタの『もし起きてたら』は『もし生きてたら』くらいフラグ立ってるわ」

140字小説【映えの行き着く先】

140字小説【映えの行き着く先】

「お待たせしました。こちら《映える料理》です」
「え〜っと……失礼ですが、どこが《映える料理》なんですか?」
「お召し上がりいただければわかります」
「じゃあ、とりあえず……まぁ、一応美味しいですけど……」
「ではレントゲンを撮らせていただきますね」
「スゴい……胃の中で映えてる……!!」

140字小説【汗を握ったその手】

140字小説【汗を握ったその手】

「あっ、今日も来てくれたんだ〜! 嬉しい〜!」
「そりゃあグループ結成当初から、僕はずっと君推しだもん! さっきのライブも最高だったよ! もう興奮しすぎて、手に汗握っちゃった! あっ、これ握手券ね」
「汗を握った、手……」
「大丈夫? 顔色悪くない?」
「だ、大丈夫だよ! はい握手〜!」

140字小説【お上がりよ】

140字小説【お上がりよ】

「ねぇママ、何でお姉ちゃんだけ新しい服を買ってもらえるの?」
「仕方ないのよ。お姉ちゃんの方が先に成長して、どんどん体が大きくなっていくでしょ? だからアナタがお下がりで我慢してくれると、ママも(金銭的に)助かるの」
「お下がりじゃないよ。むしろこの私が着てやるから価値が上がるのよ」

140字小説【人生は脱皮の繰り返し】

140字小説【人生は脱皮の繰り返し】

「んぁ〜っ、よく寝た! ……今この瞬間をもって、古い私は終わった。私は《NEO・私》へと生まれ変わったんだ!」
「じゃあ七の段を言ってみて」
「ナメんな! え〜……しちいちがしち! しちにじゅうし! しちさんにじゅう……よん! しちしにじゅう……しち!」
「さすがNEOKI(寝起き)」

140字小説【徹頭徹尾甘ったれ】

140字小説【徹頭徹尾甘ったれ】

「たい焼きの頭と尻尾、どっちから食べる派?」
「出たよ、そのベタな質問。だが俺は迷わねぇぜ。真ん中の部分でへし折って、頭と尻尾を重ね合わせたら、同時に食らってやらぁ!」
「理屈はわかるけど、でもそれだとへし折った部分から具がこぼれ落ちない? とくにカスタードとか……」
「……頭派です」

140字小説【インスリンの宴】

140字小説【インスリンの宴】

「《あんこール》どうもありがとぅ! そうだよなぁ……お前らまだまだ足りねぇよなぁ? 糖分も、運動も! だから俺たちを呼んだんだろぉ? だったら覚悟はできてるんだろうなぁ!? いくぞぉ! 口紅には《チョコ》を! ペンライトには《ふ菓子》を! 血糖値爆上げでイクんで、ヨロシクぅ!!」

140字小説【スキになる隙】

140字小説【スキになる隙】

「明日の朝はゴミ出しだね。早起きできるか不安だわ」
「俺一人で行くから寝てていいよ」
「ダメ! 浮気するかもしれないでしょ!」
「しねぇわ! つーか、たった数分でできねぇよ!」
「わかんないじゃん! だってアナタ、ゴミ出しをキッカケに浮気する系のAVを見――」
「わかった、一緒に行こう!」

140字小説【遅れてやってくる系】

140字小説【遅れてやってくる系】

「はぁ〜、美味しかった〜。でも新商品の辛いバーガー、思ったほど辛くなかったね」
「そんなもんじゃない? さすがにチェーン店でイタズラ級に辛いものは販売しないでしょ」
「まぁそうなんだけど、ちょっと期待外れ……あっ、待って。これ、遅れてやってくる系のヤツだ」
「お店出るタイミングで!?」

140字小説【いい移獣】

140字小説【いい移獣】

Q.なぜ移住しようと思ったのですか?

A.前の山での生活に疲れたんです。キャンプブームでヒトがどんどん足を踏み入れてくるようになって、それでこちらが山を降りれば獣害だとか言われて。その点この辺りはまだヒトがいないし、何より他のクマたちが温かい。おかげで妻と子どもができちゃいました。

140字小説【魅力より注意力】

140字小説【魅力より注意力】

「スポーツカーもいいけど、ミニバンも捨てがたいしなぁ〜……ああ〜、やっぱ車って惹かれるものがあるよなぁ〜」
「悩む気持ちもわかるけど、やっぱり一番大事なのは《自動ブレーキ》が付いてるかどうかだろ」
「何で?」
「俺もかつて車に轢かれたことがあるから言ってるんだよ」
「ミニカーの話だぞ?」

140字小説【副作用を求めて】

140字小説【副作用を求めて】

「やってる?」
「ここは診療所だ、居酒屋じゃねぇ」
「アルコール置いてりゃ似たようなもんだろ。何か一杯貰おうか」
「とか言って、俺のコーヒー目当てだろ」
「正解! 《良薬は口に苦し》ってな」
「眠れなくなるぞ」
「だからいいんだよ! 残り一ヶ月もねぇ人生、寝たら損だ! ……眠りたくねぇんだ」

140字小説【油の使いみち】

140字小説【油の使いみち】

「お前スゴいな、弁当同時に2個も食うのかよ」
「これくらい食わねぇと、重労働なんてやってらんないッスから」
「若いねぇ〜、俺なんてもう体が油を受けつけねぇからな。まぁ食べ盛りもいいけど、いつまでも油売ってんなよ」
「油は売るもんじゃない、摂取するもんッスよ」
「火に油注いでんじゃねえぞ」

140字小説【Mr.リチギマン】

140字小説【Mr.リチギマン】

「ゴメン遅れて! お詫びに今日の飯は俺が奢るわ!」
「いいよ別に、遅れたくらいでそんな……」
「それでもさすがに30分は待たせ過ぎたから、埋め合わせはさせてほしい」
「でも……」
「いやもう本当に! じゃないと俺の気が済まないから!」
「(そこまで律儀なら、そもそも遅刻しなきゃよくね?)」