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東雲そら
2022年10月16日 21:33
10畳の部屋には夕陽の光芒らしき光の筋が映えており、限りなく海に似た青が地面に塗られている。住人の空想が部屋の背景に反映される。9月29日が住む世界は特殊である。愛書を開き静かな時間を過ごそうと思った矢先、コンコンと、ノック音が響く。「どうぞ」優しい声色に促されるまま、一人入室した。9月29日とは近しい存在の9月30日だ。「お邪魔します」「こんにちは、9月30日」言わずもがな、9
2022年7月7日 19:53
「願いと夢の違い?」僕の質問を復唱する。「自分の力で叶うものが夢。自分の力だけでは及びもしない願望が願い」先月より涼しい今日。縁側で団扇を強く煽ぐ君。敢えて髪留めなんかしちゃって。「ほら、夜空の星に願いを込めるのとか。自分の力で叶うなら、流れ星にも天の河にも祈らないのよ」乾きと俯瞰が入り混じった答えだと思った。神様によって裂かれた彦星と織姫の二人に、僕は願いを短冊用紙に書いていいのか、
2022年6月6日 21:34
雨が降った静寂を破った激しい雨音が鳴り響く雨戸を閉めた整えた部屋で一人音楽を聴き始める部屋の灯りを暗くした横になって片方のイヤホンを外した静かにゆっくりと目を閉じる短い睡眠が終わりを告げた寝ぼけ眼に指を添える羊に囲まれる優しい夢を見ていた雨は今も降り注ぐ曇天雨天が好きだったのは過去の話今は雲間から差す光を求めている照照坊主とアイリスの一輪差し雨の後先の色彩
2022年3月31日 22:06
真夜中目を閉じて耳を澄ます不安も浮遊感もそっとして明鏡止水 今でも遠いけど心はここに在るから落ち着いて今日はゆっくり眠るの嫌いなものを理解してしまった夜郎自大 鋭利さ過剰気味の君と僕紛うことなき青さを思い出して薄ら笑い記憶に蓋をしていた言葉を長らく置き去りにした春の夜の過ごしやすさに傾いて静かに明日を見つめるの君は遠い場所へ行ってそうそう会えなくなる桜舞い
2021年10月31日 16:35
「もう一回言って。聞こえなかった」秋。付き合いたての彼は少し変わり者だと気付いた。例えば、私の知識ではうまく言い表せられない、黄色とも橙色とも断定しづらい色のTシャツ。例えば、私より豊富な種類の香水とbbクリームを知っているところ。妙なところで彼は個性が突出している。今日も彼の部屋にお邪魔し、奇妙な言葉を耳にした。「だーから。スーツ姿でオフィス街のスイーツを買うのが趣味なの」
2021年9月30日 20:12
顔を上げるとPC画面から求職者の顔が消えた。オンライン面接が主流となって求職者は自宅から面接に臨む一方、面接官の僕は変わらずオフィスから向き合う。世界が変わる前と働き方に差異が生じない苛立ちごと、オフィスビルと最寄り駅の間に位置する喫煙所にて燻らせた。星が見えない街のホームは数分間隔で電車が訪れる。乗り込み揺られて1度駅を経由する。地方へ続く路線は途中から席が空き、座り込むと静かに眠りにつ
2021年9月15日 22:00
文也は受信したメールのURLをクリックした。画面が切り替わり「通話を起動」にカーソルを当てて右手人差し指を動かした。PCの画面越しに高校時代の友達が二人。文也と共に天文部に所属していた理人と佳苗だ。理人は高校時代より垢抜けていて爽やかだ。佳苗はアッシュグレーに染めた髪色とナチュラルに浮かぶ笑みが特徴的。第一声に朗らかな声が届く。「文也。久しぶり。SNSでも繋がっているけどさ、雰囲