小説:コトリの薬草珈琲店 10-3
「お預かりした勾玉ですが、少し面白い仮説をお話できるかもしれません。」田端さんは三人が聞く体勢を示すと、ゆっくりと説明を始めた。その言葉は窓から見える平城宮跡の風景と相まって、三人を古(いにしえ)の世界へといざなう。
「まず、この勾玉自体は、形状と年代測定技術を組み合わせて判断すると、およそ1,800年前、古墳時代初期に作られたものだと推定されます」
「古墳時代の初期・・・」琴音が田端さんの言葉を反芻する。
「ええ。ただ、この表面に刻まれた文字は恐らく奈良時代のものだと思わ