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小説:コトリの薬草珈琲店

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小説版<奈良の薬草と薬膳>の第一弾。植物の言葉が分かる主人公・琴音が、時間の荒波の中で見出した“幸せ”とは?奈良の小さな薬草珈琲店で描かれる現代ファンタジー。奈良・歴史・薬草・コ…
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記事一覧

小説:コトリの薬草珈琲店 12-3<完結>

 あれから数年後。コトリと凛は30代の半ばに近づいた。  今日は月曜日、夏の夜の奈良。 …

小説:コトリの薬草珈琲店 12-2

 三本の竹筒に薬液を入れ、漏れ出ないように詰め物をする。それを麻の袋に入れて三人は出発し…

小説:コトリの薬草珈琲店 12-1

12章 想いを受け継ぐ 須美羅売らは各処からの料理の注文を取りまとめるチームで働いていた…

小説:コトリの薬草珈琲店 11-3

 香古売が7歳になった時、再び蔓延をはじめた疫病がとうとう平城京にも入ってきたという噂が…

小説:コトリの薬草珈琲店 11-2

<私・・・>  その世界を眺めるカメラと化していた琴音は、ようやく、自分がこの世界を観測…

小説:コトリの薬草珈琲店 11-1

11章 京に住まう母娘 オレは土の中から掘り出され、削られ、磨かれ、現在の形となった。し…

小説:コトリの薬草珈琲店 10-3

「お預かりした勾玉ですが、少し面白い仮説をお話できるかもしれません。」田端さんは三人が聞く体勢を示すと、ゆっくりと説明を始めた。その言葉は窓から見える平城宮跡の風景と相まって、三人を古(いにしえ)の世界へといざなう。 「まず、この勾玉自体は、形状と年代測定技術を組み合わせて判断すると、およそ1,800年前、古墳時代初期に作られたものだと推定されます」 「古墳時代の初期・・・」琴音が田端さんの言葉を反芻する。 「ええ。ただ、この表面に刻まれた文字は恐らく奈良時代のものだと思わ

小説:コトリの薬草珈琲店 10-2

 琴音たちは応接室のような部屋に通され、田端さんから席を勧められる。荷物を置いてから名刺…

小説:コトリの薬草珈琲店 10-1

10章 文化財研究所 3月、少し温かな晴れた平日。いつも通りランチ営業を行っていると、よ…

小説:コトリの薬草珈琲店 9-3

 2月後半の日曜日。今日は11時に川原君と店の前で待ち合わせをするという段取りになってい…

小説:コトリの薬草珈琲店 9-2

 土曜日。いつもは5時過ぎに起きる琴音だが、この日は9時になってもベッドの上でゴロゴロと…

小説:コトリの薬草珈琲店 9-1

9章 心の温かさ 東京出張から十日ほどたった水曜日。その日は朝から佳奈の様子がいつもと違…

小説:コトリの薬草珈琲店 8-3

「薬草を学ぶ方法は大きく4つほどあるんですけど、それぞれ簡単にお伝えしますね。」30歳を…

小説:コトリの薬草珈琲店 8-2

 土曜日。開店早々、デパートの「薬草と生きる」会場には客が集まってきた。東京は人口が多いこともあって、こういったテーマに関心の強い人の数も多いのだろう。客層は40~60代の女性が多めではあるが、通りすがりの来店も加わってか、そこそこ年代は分散しているようだ。  ときじく薬草珈琲店ブースへの一番乗りは、中野でカフェをしているという男性だった。応対は琴音が行った。 「薬草珈琲ってはじめて聞いたんですけど、珍しいことされているんですね」 「ご興味をもっていただいて、ありがとうござ