機能不全家族育ちがオススメする複雑性トラウマを良くするのに役立つ本
読んでくださってありがとうございます。
自分は機能不全家族で育ち、
精神疾患(うつ病、DESNOS等)で
苦しんだ経験があります。
そこから心理系の本を何百冊と読み、
回復することが出来ました。
今回の記事ではそんな自分が
複雑性トラウマを良くするのに
役立つ本をお薦めします。
(いい本を見つけたら更新します)
自分は自力で回復しましたが
セルフケアを推奨しているわけではないです。
トラウマ治療を一人で進めていくのは
非常に辛く険しい道のりになります。
(経験者は語る)
周囲にサポートしてくれる治療者や
援助者がいるのであれば
その人を頼ることがいいと思います。
自分はセルフケアが行き過ぎた先に
「症状が良くならないのは
セルフケアが出来ていないから」
というような自己責任論になってはいけないと思っています。
また、回復しようと思っていない人を
責めようとも思っていません。
今まで生きてきた中での
不条理な出来事を考えると
回復に前向きになれないのは
ごくごく当然だと思います。
その前向きになれない気持ちも
大事にしてほしいと思ってます。
おすすめする本を紹介する前に
なぜこの本を選んだのか、その理由を書きたいと思います。
選んだ本の基準について
簡単に説明すると以下の通りです。
Ⅰ.治療者向けでなく、比較的わかりやすい
心理系の本は治療者向けだとエビデンスや
理論的背景が細かく説明されていることが多く
そういった本はなるべく外しています。
(STAIR Narrative Therapyの本など)
Ⅱ.学んだことを日常生活に活かせる
心理の本は読んだだけではあまり意味がなく
そこで得た気づきを普段の生活で使っていく必要があります。
自転車の乗り方を口頭で人から教えてもらっても
自転車に乗れるようにならないのと一緒ですね。
Ⅲ.回復に大事な要素が幅広く必要
自分が複雑性トラウマを良くするには
いろんなことが必要だと思っています。
それは症状が多岐に渡っているからです。
PTSDの症状には
フラッシュバック、回避、解離、過覚醒
といった症状があります。
複雑性トラウマの場合はその症状に加え
といった様々な症状が多岐に渡ります。
つまり、フラッシュバック、回避、解離
といった主なトラウマ症状に取り組むだけだと
治療としては足りないということです。
PTSD症状にだけ取り組んでも
感情調整の問題
対人関係の問題
認知(考え方)やスキーマ(価値観)の問題
などは自然には解決しません。
なので、多面的に取り組む必要があります。
Ⅳ.それぞれの本のカバーする範囲が広い
上記のように幅広い症状に取り組むには
カバーする範囲が広くなければいけません。
自分が思う回復に必要な過程は以下の通りです。
(それぞれが独立してるわけではないですが)
これから紹介する本はこの上の考えを
幅広くカバーしています。
Ⅴ.トラウマに直面する前に安定化を狙う
トラウマ治療はその昔
抑圧された記憶を呼び起こすことで
よくなると思われてきていました。
ただ、このトラウマに直面するということは
かなり精神的に負担になるものです。
嫌な記憶で思い出したくないから
本能(脳の防御的働き)で解離するわけです。
複雑性PTSDの概念を提唱した
ジュディス・ハーマンも
トラウマ的過去に取り組む前に
安心と安定を確立しなければ難しいと
段階的トラウマ治療を声高に提唱しています。
つまり、レジリエンスのある耐性領域を幅広くし
しっかりした基盤を作る必要があります。
上でいうと、トラウマに直面するのは
「自分の生い立ちの棚卸しをする」になります。
耐性領域を幅広くするというのは
苦痛を逃れる一時しのぎを身に着ける
マインドフルネスを身に着ける
セルフコンパッション、自分を大事にする
セルフモニタリングを出来るようにする
などといったことになります。
一応、本の順番もある程度考慮しています。
基本的に順番に取り組むのがいいかと思いますが
③の本の「パーツセラピー」と
⑤の中核感情を感じるようになる箇所と
⑧のBook2のスキーマ療法は
最後に持ってきた方がいいかと思います。
前置きが長くなりましたが、本の紹介をします。
①不安・イライラがスッと消え去る「安心のタネ」の育て方
可愛い絵を用いて、
不安やイライラなど過覚醒状態になった時
その場で対処できる方法を沢山あげています。
心理学というよりは、生理学に近い気がします。
身体が不快な状態の時は、
意識がその不快な身体の部位に向いており、
不快感が持続します。
その状態ではなかなか冷静になるのも難しいです。
この本ではそこから注意を逸らしたり、
普段から自律神経を落ち着かせることで
自分の耐性の窓を広げるようなワークを挙げています。
耐性の窓とは、不快な状態になったとしても
何とか自分らしさを保てる状態というような意味合いでしょうか。
認知的にその場が「安全だ」と認識するよりも
五感などを通して感覚的に「安全だ」と認識する方が早く
身体が安全だと感じることで、その場が安全に感じられるという考えです。
トラウマを意識することなく、安全に取り組めるワークが多いので
身体志向的ワークに取り組みたい方にはぜひおすすめします。
②赤ずきんとオオカミのトラウマ・ケア
赤ずきんとオオカミのストーリーを用いて、
トラウマからの症状や回復を
優しく物語仕立てで説明している本です。
この上のような内容が平易にわかりやすく説明されています。
また、単回性のトラウマ症状だけではなく、
虐待などが原因で引き起これる
慢性的なトラウマ症状(複雑性PTSDやDESNOS)についても
わかりやすく説明されています。
これらの症状を知ることで、
症状が出たときに「これは症状なんだ」と
自分で気づくことが出来るようになる本だと思います。
そして、トラウマからの回復で大事なことも記載されています。
過去の傷に影響を受けている
今の自分はどのようになっているのかを
理解する上でとてもお薦めの本です。
③トラウマ変容ワークブック
この本はトラウマの症状を「脳科学(神経)」の観点から
図を多く取り入れ、かなりわかりやすく説明をしています。
「脳科学」というと難しそうに聞こえますが
読んでみると思ったよりわかりやすいです。
この本を読めば
人間という動物に備わった
「脳の防御的反応」として
トラウマの症状は
自分を守る精一杯のことをした結果
だということに気づきます。
それは、あの時どうして自分自身は
自分を守ってあげられなかったのかといった
後悔の念を断ち切るきっかけにもなります。
また、この本では「10%の解決法」という考えや
「パーツセラピー」などの考えが
出てきますが、これらは後からおすすめする
「10%の解決法」→「弁証法的行動療法」
「パーツセラピー」→「スキーマ療法」
と共通する考えになります。
なので、この本だけでは実践できそうになくとも
あとから紹介する本で補填できます。
④マインドフル・セルフ・コンパッション ワークブック
自分自身を大事にしようと言われても、
その具体的な方法がわからない人に
お薦めのワークブック形式の本です。
マインドフル・セルフ・コンパッションの
8週間のプログラムを
自分で実践できる内容となっております。
「セルフ・コンパッション」とは
「大切な友人を思いやるように、自分自身の痛みや苦しみに寄り添う」ことです。
心の病気や生きづらさに悩む人には、
自分を大切に出来ない人が多いと思います。
「私は愛されていない」
「完璧にやらないと受け容れてもらえない」
「誰も私をわかってくれない」
などこのような価値観を持っているのではないでしょうか。
このような価値観を持った原因は
生まれ育った環境によるものが大きいです。
この本はそんな価値観を持った人が
「生きづらさの根っこ」をどう癒すかを教えてくれます。
自分を大切にして生きることは
自己中心的な人間になることとは違います。
自分を大切にすると、他人の価値観も大切にすることにもつながります。
また、セルフコンパッションは「自分を甘やかすこと」とも違います。
「甘やかす」ことはある意味でその場しのぎ、
その時出た心身の欲求に応えることだと思います。
セルフコンパッションの「自分自身を思いやる」
というのは、そうではありません。
自分自身に愛を注ぎ、
自分が本当に望む状態になれるよう、
時に苦痛な状況に立ち向かう自分を励まし、
努力を応援するような力です。
これはトラウマに取り組む時、とても大きな力になります。
「セルフ・コンパッション」は
心理療法の効果を最大限引き出す土台のようなものです。
セルフ・コンパッションの度合いが高い人ほど、
不安や抑うつが低い傾向にあり、
心理的幸福感や人生に対する満足度が高く、
対人関係も良好であることが知られています。
セルフ・コンパッションの
スキルを身につけることで、
日々の生きづらさが軽減し、
自分自身をポジティブにサポートする力がつきます。
また、セルフコンパッションは
「パーツセラピー」の「セルフ」という概念と
「スキーマ療法」の「ヘルシーアダルトモード」という概念と共通する考え方になります。
⑤感情を癒やし、あなたらしく生きる4つのステップ
辛い状況を生き抜く為に、
感情を押し殺して生きてきた人は多いかと思います。
感情を殺して生きていくと
辛い出来事が起きた時、
怒りや悲しみといった辛い感情を感じずに済むので
何とか生きていくことが出来ます。
しかし、同時に
楽しい感情や嬉しい感情も
段々感じられなくなってきます。
この本ではAEDPという心理療法に基づき
感情の役割を知り、癒されていない感情を
流すやり方を説明しています。
どの心理療法で目指しているところは
最終的には実はどれも同じで
抑えていた感情を感じられるようになり、
自分が本当は何を感じているのかが
段々わかるようになってきます。
感情を抑えることなく、
また振り回されすぎることなく、
その感情とうまく付き合っていくようになることを
目指しています。
今まで生きてきた方略を手放す形になるので
しんどいことにはなるかと思いますが
自分の感情に気づくと、自分を大事にすることが
肌感で段々とわかってきます。
⑥マインドフルネス認知療法ワークブック
この本は、ワークブックとガイドCDがセットになっており、一人でマインドフルネスを実践できます。
マインドフルネスは説明が難しいのですが、
自分の「今・ここ」の体験に気づきを向け、
それらを判断したり評価することなく、
そのまま眺めたり受け止めたりすることです。
①今の瞬間の現実に常に気付きを向け
②その現実をあるがままに知覚する
③その現実に対する思考や感情に囚われない心のありよう
マインドフルネスは
”思考する自己”とは別のもので
”観察する自己”とも呼ばれます。
言葉で説明するのはかなり難しいです。
「Don't Think. Feel!(考えるな、感じろ!)」に近いですね。
このマインドフルネスですが
ここ最近のどのトラウマ治療で“必須級”といわれるほど、とても大事なスキルになります。
その理由にはいろいろあるのですが
ここでは大きく二つの理由を紹介します。
①セルフモニタリング能力の向上
辛く苦しい思いをしている時、
苦しいことはわかっても、
その感情があまりに大きく自分が
何で苦しんでいるのかがわからないことはよくあります。
そういった状態から抜け出すきっかけは
まず「気づく」ことが大事です。
気付くことが出来ないと対策出来ません。
何がストレスの原因になっているのか
どんな自動思考がでてきて
どんな感情が生まれて
体がどんな状態か
それに対してどんな行動をとっているのか
マインドフルネスというのは、
「今、ここ」の体験から生まれる感覚を、
大切にできるようになることです。
マインドフルネスの状態になるよう
普段から練習すると、
自分の状態を把握することが上手くなります。
観察する自分が育っていくようなイメージです。
②トラウマに取り組むときの二重意識を作れる
トラウマの症状に苦しんでいるときに
それ以外に集中することは困難になります。
心をかき乱す記憶
えぐられるような身体感覚
トラウマを想起するような対象に
サバイバーは過度に集中してしまいます。
しかし、マインドフルネスの練習をしていると
「注意の分割」がうまくなり、
“二重意識”を保てるようになります。
どういうことかというと
フラッシュバックを経験していても
過去のトラウマを再体験しているにすぎない
自分はそこの場面にはいないんだ、というように
“今ここ”に意識を置くことができます。
安全な現在の時間軸に片足を置いておける状態を
マインドフルネスは作ることができます。
これにより感情などに圧倒されることがなく
心理的スペースをつくることができ
自分を大事にする「コンパッション」や
他の対処法を試すことができるようになります。
⑦弁証法的行動療法 実践トレーニングブック
複雑性トラウマには
感情調整の問題、対人関係の問題があると
上記に書きましたが
激しく圧倒されるような感情に
苦しんでいる人にお薦めの本です。
怒りや悲しみなどの感情は
誰にでもある当たり前のものです。
しかし、強すぎる負の感情は
対人関係で良くない結果を生み、
時には自分を傷つけてしまうことがあります。
(ついカッとなって大切な人に暴言を吐く、
苦痛から逃れるためにアルコールや薬物で自分を無感覚にするなど)
この本では、
感情の波に圧倒されそうな時に
役立つ4つのスキルを学びます。
以下がその4つの重要なスキルです。
苦悩耐性スキル
マインドフルネススキル
感情調整スキル
対人関係スキル
マインドフルネスは説明したので
他のスキルについて簡単に説明します。
①苦悩耐性スキル
苦悩耐性スキルとは、
感情的苦痛を引き起こす状況から
「注意をそらし、リラックスし、
対処するスキル」のことです。
注意をそらすことが重要なのは
苦痛について考えることを一時的に止め
適切な対処を見つける時間を作れる
からです。
注意をそらすことと回避することは違います。
辛い状況から注意をそらすのは、
耐えられるレベルまで感情が静まったら、
またその状況に対処するつもりでいる為です。
これは上で言った「10%の解決法」と同じ考えですね。
②感情調整スキル
9つの感情調整スキルがあるのですが、
今回は抜粋して紹介します。
<自分の感情を認識する>
感情を認識することは、
自分の感情に気づき、ありのままを受け容れるということです。
不快な出来事を、以下6つのプロセスでセルフモニタリングします。
感情的になり、後で後悔するような
行動をしないためのテクニック
負の感情とうまく付き合っていく方法
などを学べます。
③対人関係スキル
このスキルは「アサーション」という考えです。
「アサーション」とは
自分も相手も大事にし、
主張はしっかり行うものの
相手は傷つけない
絶妙なコミュニケーションの方法です。
このアサーションを身に着けると
自分だけが我慢するコミュニケーションから
脱却することができ
人との境界線(バウンダリー)を
うまく引くことにもつながります。
これらの考えは複雑性PTSDの治療法の
「STAIR Narrative Therapy」に継承されてます。
⑧自分でできるスキーマ療法ワークブック Book 1・Book2
この本は自分が紹介している中でも、
一番お薦めの本です。
Book1は内容の殆どが「認知行動療法」です。
Book1は認知行動療法の考えが殆どで
終わりの部分を除いた箇所は
⑦の本の前にやっても構わないかと思います。
《代表的な内容》
サポートネットワークの構築
コーピングスキルの獲得
認知行動療法のストレスモデルの心理教育
セルフモニタリングの習得
認知再構成法
マインドフルネス
この本の方が読みやすいかもしれません。
Book1の終わりとBook2からが本番で
「スキーマ療法」になります。
スキーマ療法について
スキーマ療法は、認知行動療法が発展した心理療法です。
認知行動療法を応急処置とすると
スキーマ療法は根本処置です。
スキーマとは、「構造」を意味する英語で、
「価値観やルール」のことを指します。
人はまず五感を通して物事を体験します。
すると、すでに持っている
スキーマ(価値観)に応じて、
自動的に思考が生まれます。
そこから感情や身体反応が生じ、
そして行動に繋がっています。
この一連の流れの中で、
最初のスキーマの部分の変容を目指すのが
スキーマ療法です。
そして、スキーマ療法の対象となるのは主に、
冒頭でも述べたような
「生きづらさ」の原因ともなっている
「心の癖」であり「早期不適応的スキーマ」
と呼ばれます。
この不適応的スキーマは一般的に、
私たちの子供時代に形成されます。
そのため、スキーマの正体を探るために
自分の幼少期の経験を見ていくことになります。
この作業が非常につらいです。とても。
なので一番最後に持ってきました。
不適応的スキーマは、
5つの領域に渡って分類が可能です。
これから紹介する5つの領域というのは、
私たちが幼少期に持つ5つの根本的な感情欲求が
満たされなかった結果現れるとされます。
そして、それらの欲求が満たされないと、
それぞれ次の5つの領域に対応して不適応的スキーマが形成されます。
さらに、これら5つの領域の中には
さらに細かいスキーマが存在しています。
以上が、スキーマ療法で扱われる
早期不適応的スキーマの18パターンです。
「それ自分かも」とグッときたものがあれば、
そのスキーマ(価値観)を持っているかもしれません。
これらのスキーマ(価値観)を
自分の中で「アダルトヘルシーモード」が
「傷ついたチャイルドモード」と「傷つけるアダルトモード」
と対話し、スキーマの変容を目指していくことになります。
この考えは
「パーツセラピー(内的家族システム療法)」
と共通した考えですね。
以上、複雑性トラウマに取り組むにあたって
おすすめの本の紹介でした。
長くなりましたが、読んでくださった方
誠にありがとうございました。
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