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小説《魂の織りなす旅路》

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光たちからのメッセージ小説。魂とは?時間とは?自分とは?人生におけるタイミングや波、脳と魂の差異。少年は己の時間を止めた。目覚めた胎児が生まれ出づる。不毛の地に現れた僕は何者なの…
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2023年6月の記事一覧

連載小説 魂の織りなす旅路#37/時間⑵

連載小説 魂の織りなす旅路#37/時間⑵

【時間⑵】

 「私も焦燥感に駆られることはあるけれど、周りの人を見ることはないなー。」

 「えー、そうなの? 気にならない? 耀(ひかり)の仕事なんて、すごい人がたくさんいそうじゃない。」

 「だからかな。すごい人がたくさんいすぎて、そんなのいちいち見てたら、何にも手につかなくなっちゃうよ。」

 焚火がパチパチと心地よい音を立てる。

 「同じくらいのレベルの人もたくさんいるけれど、そんな

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連載小説 魂の織りなす旅路#38/時間⑶

連載小説 魂の織りなす旅路#38/時間⑶

 「今わかった。だから耀(ひかり)に誘われたとき、ここに来ようって思ったんだ。旅行のために有給を取るなんて、普段の私なら絶対しないのに、行きたいってすごく強く思ったんだよね。行かなきゃって。」

 「ちょうどいいタイミングだったんだね。」

 「仕事的にはタイミングではなかったんだよ。忙しいのに無理して有給取ったんだから。でも、私的にはいいタイミングだったんだと思う。」

 栞は背もたれから体を起

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連載小説 魂の織りなす旅路#39/時間⑷

連載小説 魂の織りなす旅路#39/時間⑷

【時間⑷】

 「この世界の仕組みねぇ。宇宙の時間も?」

 栞はよくわからないという風に首を傾けた。

 「うん。人間が関わる限り、そこには刻まれた時間があるんじゃないかな。宇宙ロケットにしたって刻まれた時間がなければ、きっと飛ばせないよね。
 宇宙に限らず、人間社会に必要なさまざまな技術は、刻まれた時間というツールを使って生み出されているんだろうから、道具としてはね、刻まれた時間は必要なんだ

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連載小説 魂の織りなす旅路#40/時間⑸

連載小説 魂の織りなす旅路#40/時間⑸

【時間⑸】

 「刻まれた時間から自分を守るって、大切なことだよね。」

 私がぼそっと小さく呟くと、栞が

 「自分を守る?」

と身を乗り出してきた。

 「うん。刻まれた時間に身を任せていると、自分が自分じゃなくなっていく気がしてこない? もちろん、刻まれた時間に合わせなければならないこともあるけれど、それだけに始終しているとね。」

 栞は大きく目を見開くと、こくりと深く頷き、早口で喋り始

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連載小説 魂の織りなす旅路#41/時間⑹

連載小説 魂の織りなす旅路#41/時間⑹

【時間⑹】

 「わかるっていうのとは違うと思うの。わかるって感覚は、客観的でしょう? そういう客観的な感覚ではないんだよね。もっと、自分そのものって感覚かなぁ。
 栞が自分のことを知りたいと思うのって、すごく客観的な視点だよね。自分を外側から眺めようとしているっていうか。でも、そもそもね、自分を外側に置いて、そこから自分を眺めるなんて、できないと思うんだよね。」

 「わかりたいと思うことが、そ

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連載小説 魂の織りなす旅路#42/時間⑺

連載小説 魂の織りなす旅路#42/時間⑺

【時間⑺】

 「確かにそうかもしれない。でも、人生ってそういうもんじゃない? 自分1人で生きてるわけじゃないんだし、自分はどんな風に生きたいのかって疑問は、どうしたって社会と切り離しては考えられないよ。」

 「うん。だから、自分を感じるっていうのは感覚的なもので、どういう人生を生きたいかという思考的なものじゃないんだよね。」

 「あ、そっか。思考的なものじゃない。自分を感じたいって言いながら

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連載小説 魂の織りなす旅路#43/失明⑴

連載小説 魂の織りなす旅路#43/失明⑴

 【失明⑴】

 見えるはずの機能を持ったこの目は、僕に何も見せてはくれない。

 最初は見えにくく感じる程度で、年のせいだろうと思っていた。ところが、ほんの1、2ヶ月で目に映るものが加速度的に霞んでいく。さすがにこれはおかしいと病院へ行くことにした。
 複数の病院に診てもらったが、異常は見つからなかった。どの医師も首を捻るばかりだ。それでも視力は診てもらうたびに落ちていく。

 視界のぼやけがひ

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連載小説 魂の織りなす旅路#44/失明⑵

連載小説 魂の織りなす旅路#44/失明⑵

【失明⑵】

 まずは、目が完全に見えなくなってもスムーズに家の中を行き来できるよう訓練を始めた。
 目を閉じて歩いていると、思わぬところで物が落ちたり、足や腕をぶつけたりする。そういった歩行の邪魔になるものを片付けていたら、家中がすっきりとして、思いもよらずいい断捨離になった。

 見えるうちにやっておけることは山ほどある。家具の配置を変え、蹴飛ばしてしまいそうなものは排除し、知り合いの業者に頼

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連載小説 魂の織りなす旅路#45/失明⑶

連載小説 魂の織りなす旅路#45/失明⑶

【失明⑶】

 「マンションってね、窓が1つしかないの。ベランダに通じる窓だけ。ほかの3面は分厚いコンクリートに覆われていて、仕事をしていると息が詰まっちゃう。独立したときに帰ってくればよかった。」

 独り身の娘は数年前に独立開業し、在宅の仕事をしている。社会人になってからというもの、この家に帰ってくるのは盆と正月だけで、それは独立開業後も変わらなかった。
 娘が30歳になったときお見合いを勧め

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