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弱おじの本棚

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読んだ本の記録です。
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#創作大賞2023

当たり前な僕の人生に心からのありがとう 〜「くもをさがす」を読みました。〜

当たり前な僕の人生に心からのありがとう 〜「くもをさがす」を読みました。〜

西加奈子さんの「くもをさがす」を読んだ。

がんを罹患した著者のノンフィクション作品に、心を揺さぶられ、今への感謝が込み上げてきた。

今こうして生きていることは当たり前ではない。
何の痛みもなく、普通に生活していられるのはとても幸せなことだ。

どうして私だけがこんな目に遭うのだろう?
人生は理不尽だ。
神様の悪戯で、私たちの努力とは無関係に辛い出来事が身に降りかかってくる。

全てを前向きに解

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決めた。おじさんだけど今日から青春する。 〜「成瀬は天下を取りにいく」を読みました〜

決めた。おじさんだけど今日から青春する。 〜「成瀬は天下を取りにいく」を読みました〜

宮島未奈さんの「成瀬は天下を取りにいく」を読んだ。

青春だ。
青春すぎる。

登場人物たちがキラキラしている。
何かに没頭して、打ち込んでいく姿は見ているものに感動を与える。

感動を与えると同時に、行動した本人の心にも大きな感動を生む。

本書の構成で好きな部分は、最後の章で主人公の成瀬の目線から、その心情を含めて描かれている点だ。

それまでは周囲の目線から変わった人間である成瀬が描かれてい

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金は大切だし、そこに生まれる感情はもっと大切。 〜「黄色い家」を読みました〜

金は大切だし、そこに生まれる感情はもっと大切。 〜「黄色い家」を読みました〜

川上未映子さんの「黄色い家」を読んだ。

お金と人生について深く考えさせられた。

お金は大切だ。
けど人生の全てじゃないことも知っている。

お金がないと不安になる。
お金があってこそ得られる幸せもきっとある。
逆にお金があると失う不安が生じたりもする。
お金ってむずい。

人並みの生活ができてりゃいいやって思う。
結局は他人との比較だ。大切なのは世間体だ。
自分がどの位置にいるのか。
普通のや

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あなたの苦しみを言葉にしてごらん?それを見た誰かが救われるかもしれないよ。 〜「毒をもって僕らは」を読みました〜

あなたの苦しみを言葉にしてごらん?それを見た誰かが救われるかもしれないよ。 〜「毒をもって僕らは」を読みました〜

冬野岬さんの「毒をもって僕らは」を読んだ。

本の帯に引き寄せられて本書を手に取った。

「この世界の、薄汚い、不幸せなことを私に教えてくれないか」

登場人物の女性は余命が僅かで、生きることに希望を見出せない。
主人公の少年に対して、あなたの苦しみを教えてくれと懇願する。

苦しみを言葉にすることは、辛い。
トラウマを掘り起こす作業なんて本当はしたくない。
記憶が流されてくれるのをただ息を潜めて

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「死」を意識することで「今」は輝く。 〜「余命一年、男をかう」を読みました〜

「死」を意識することで「今」は輝く。 〜「余命一年、男をかう」を読みました〜

吉川トリコさんの「余命一年、男をかう」を読んだ。

人はいつか死ぬ。
当たり前だけど、そのことを思い出させてくれた。

今、仮に余命を宣告されたら嬉しいだろうか?
「あぁ。やっと終われる。楽になれるんだ。」と、救われる気持ちになる人だってきっといるのだろう。

人生が「期間限定」であることを、人間はすぐに忘れてしまう。
期間限定だからこそ楽しもうと思えるのだし、逆に永遠に続くと思ってしまうからしん

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