マガジンのカバー画像

わたしの読書記録

39
自然や生物を題材にした本、純文学、海外文学、ノンフィクション。 文学は1900年初頭~昭和半ば頃までに書かれたものや、戦争文学が特に好き。 谷崎潤一郎、堀辰雄、原民喜、梅崎春生、…
運営しているクリエイター

2023年3月の記事一覧

誰がため、何がために書くのが日記か

誰がため、何がために書くのが日記か

谷崎潤一郎「鍵」

読み始めてまもなく、冷えた指先で衿首を撫でられたようなざわめきが背筋に走った。
サイドテーブルに無造作に置かれた手帳に目を落とす。
そして、脇に置かれた数冊の本をそっと上に積み重ね、その存在感を消し去った。

昨年秋から、毎日この手帳に日記を書き続けている。
どんなにとりとめのないことでも、心の悲喜も、隠すことなく書いている、つもりだった。
「夫は勝手に盗み読むことはないだろう

もっとみる
〈小さなことばたちの辞書〉に自分だけのことばを集めること、それはわたしの人生そのものとなる。

〈小さなことばたちの辞書〉に自分だけのことばを集めること、それはわたしの人生そのものとなる。

頭に浮かんだのは、数年前に観た映画「博士と狂人」だった。
あれも確かオックスフォード英語大辞典編纂に纏わる実話だったはず。

調べてみると、時代背景や人物は「博士と狂人」に描かれたのと同じ実在のものをベースに、辞典には載せられない(正確な出典のない)市井の人たち─主に女性たち─が使う「迷子のことば」に関心を寄せ、生涯に渡ってことばと向き合い続けた一人の女性の姿をプラスし、女性参政権や第一次世界大戦

もっとみる