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【詩】「初/夏」
夏を迎える雲は
硝子製
ビルとビルの背景として
精緻に嵌め込まれた街の空は
空であることを流行りのミュージックによって塗りたてにされる
遥か / 群青へ / と
街灯は灯すことを辞めた
額縁の中で雨に濡れて
頭を垂れているその足元に
些末な吐息が乱反射するのを
恋人たちは好んだ
一行詩集「あめのひ」
雨のいちばん近くにいたいから傘を差さない
泣いた灰色のことをペトリコールと呼ぶ
なみだのわけを露も知らないでいる
紫だちたる雲間に感情が泡立った
梅雨前線の輪郭を愛撫する
雨ざかりの僕等でした
とめどなく私の体を透る水色
申し訳程度に降った粗品のキャンディ
旋律が降り荒ぶ、嘯きたいのは戦慄