【短歌】瞬きのようなもの。
拝啓、みずうみへ。
大切なみんなのためにぼくは目とことばを注ぐ 春のみずうみ
桜から伸びる両手を頸にかけ ぼくもぼくとてすこしずつ散る
どのように切ってもいいよと君が言い ちょきりとずれた夏の遠景
おしまいを抱えていつか花束になってしまえる 空が高いね
ないよりも、あるほうが怖い。わたしたち、だから生きてて夏に似合うね。
感情はどうやらぼくを支配したい、頭蓋を脱いで、いま空が高い。
思い出の染みを抜くのが時間なら永遠になる夏のベランダ
音楽の数学的な匂いは涼しい、部屋にみずうみをうむ。
ぼくたちは優柔不断のはしっこでアヒルをすこし泳がせていた
生きる活動。
僕だけの地層をめくる朝が来て、時々たがう左右を愛す
眠るのを下手な僕らが標本にした夜を飾ってくれよルーヴル
新宿にうようよ集う天使たち 心臓をすこし高値で売った
中華街 蓮花|《はすはな》になる足跡をもう一度踏み荒らす 雑踏
誤ってゆうれいの上に座ったら、抱きしめられたみたいな、各停。
香水瓶われた花束と競り合って、昼をよけいに屈折させる。
珈琲はカンディンスキーに憧れて、絵になるために溢|《こぼ》れるんだろう。
どこへにもゆけない心を抱きしめて いつまでもここに置いておく椅子
大人でもぞうさんは青で描きたい、うさぎはピンクで描いていたい。
ぽろぽろと、こぼした不満を舐めとってくれた子犬を抱きしめていたい。
赤い心臓株式会社
ぐりぐりといちごを潰すようなこと、似合わぬ人を好きになること。
花束の重みを知らない人がいて、わたしの心、やわく削れた。
極端に低下する語彙で伝わってしまう鼓動のスタンプで封を。
星間交信
わたしには救えないものがたくさんで、それらすべてが愛おしいよ、地球。
てんごくはちいさいですよ?いいですか?きみをひくてはきみにしかない。
ないことを愛してしまえる惑星の気化 来世でも君は煙草を吸った
まあせいぜい勝手に殖えてうつくしい 星の建築工学をして
※今年に入ってからのいくつかの短歌を分類学的にまとめてみました。
※Xでほぼ毎日短歌を呟いています。遊びにきてね。
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