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デザイン経営

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これまでnoteで執筆した「デザイン経営」関連の記事を集めています。
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#デザイン

補論 デザイナーの見えにくい貢献の測定

補論 デザイナーの見えにくい貢献の測定

 デザイナーの貢献は見えにくいと言われるだけあって、売上や利益などの客観的な指標でそれを測定することは難しい(注)。だとすれば、どのような指標を用いればそれを測定することができるのであろうか? この点につき模範解答はないものの、経験的には、①消費者の主観的な変化に注目したものと、②従業員の主観的な変化に注目したものの2種類がありそうである。

注)ペプシコ初代CDOのマウロ・ポルチーニ氏によると、

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第七回 イノベーションとデザイン(2)   デザイナーの貢献は見えにくい

第七回 イノベーションとデザイン(2)   デザイナーの貢献は見えにくい

 前回も述べたように、デザイナーは古くから様々な形でイノベーションの実現に関与・貢献してきた。
 例えば、1965年に三菱電機から発売された扇風機「コンパック」は、その名の通りコンパクトに分解することができる扇風機であるが、その原案を示したのはデザイナーたちである(三菱電機デザイン史編集員会編,2004)。当時の扇風機は、多機能化を競う傾向にあったが、そこから競争の軸をずらすことで大ヒット商品とな

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第六回 イノベーションとデザイン(1)   イノベーションとデザインに対する誤解

第六回 イノベーションとデザイン(1)   イノベーションとデザインに対する誤解

 今回からは4回にわたって、イノベーションとデザインの関係を見ていく。イノベーションの定義の仕方は様々あるが、ここでは、Rogers(1982)に基づいて、それを「社会に価値をもたらす革新」と定義したい。
 世間では時々、イノベーションを技術革新と定義することがあるが、それは間違いではないものの、本質を捉えているとも言い難い。この定義で特に問題なのは、視野が極端に狭くなることである。我々の社会は、

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第五回 ブランドとデザイン(4)    デザイナーと経営トップの二人三脚

第五回 ブランドとデザイン(4)    デザイナーと経営トップの二人三脚

 これまで見てきたように、デザインを無視してブランドを構築することはほとんど不可能であり、ブランドとデザインは不可分の関係にある。
 したがって、デザインの開発とブランドの構築に携わる者の間にも、それと同様の不可分な関係が求められる。そして、その中でも特に重要になるのが、デザイナーと経営トップの二人三脚である。ブランドは企業の理念や哲学とも関わる重要事項であり、その決定権を持つのは経営トップである

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第四回 ブランドとデザイン(3)      「らしさ」がもたらすメリット

第四回 ブランドとデザイン(3)      「らしさ」がもたらすメリット

 個性的で統一感や一貫性のあるデザインによって「らしさ」を構築できれば、企業は次の3つのメリットを享受することができる。

 1つ目は、長期にわたる競争優位と模倣困難性である(会田,2009)。複数のデザインが一丸となって醸し出す「らしさ」は、他にはない独特なものであるため、それを好きになった消費者にとっては、それ以外の選択肢は考えにくくなる。さらに、単一製品のデザインの模倣とは異なり、それを模倣

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