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風花 朋(Kazahana Tomo)
2020年9月30日 12:33
あのうだるような暑さがようやくなりをひそめ、透明感を増した、淡い水色の空があらわれはじめた。涼やかな風が爽やかに通り抜けていく。私の頬をなでながら。澄んだ空気を大きく吸い込むと、わたしの身体が秋で充たされていくのがわかる。金木犀についた蕾たちが、あと数日後の花開く瞬間を待っている。そのまえを通りすぎれば、すでにあの甘い香りが漂いはじめていた。美しく、物悲しい季節のはじまり。移ろう季節
2020年9月16日 13:59
笑えるふうには書けない。あまりユーモアがないから。いつの間にか、こころのなかに黒くてドロッとしたものが入り込んでいた。本当は楽天的でけっこう明るいキャラだし、いまもその部分は変わらない。けれど幼い頃の経験が、わたしにそのままだけでいることを許さなかった。ユーモアを織りまぜて文章を書ける人がうらやましい。けれどどうにもそうできそうにないから、今日もそんなに明るくはない文章を書いている。
2020年9月6日 15:20
肌を焦がすような、あの痛いくらいの日差しも、まるで永遠に続くかのように感じられたねっとりと濃い闇夜も、そのすべてに纏わりついていたあのドキドキやワクワクも、全部、ぜんぶ過ぎ去ってしまう。あっという間に駆け抜けていく。気づくともうおしまいの時がきてしまっている。暑さに意識は朦朧とし、正常な判断もままならない。でもそれは言い訳にすぎなくて、本当はすこし道がそれたことを楽しんでいた。でもそれ
2020年9月3日 20:43
水面に太陽の光が反射している。ギラギラと照りつけるその光は強烈で、あまりの眩さに目を開けていられないほどだ。海水の温度はちょうどよく生ぬるく、ふわふわと何時間でも漂っていられそうだった。私は海中に浸した手をひきあげ、両指を組んで一枚の面を作った。そしてその手のひらを煌めく海面へかざす。そうするとその眩い光が、私の手のひらについた海水の滴に反射して、キラキラと輝きだす。波の揺らめきが