秋の訪れ
あのうだるような暑さがようやくなりをひそめ、透明感を増した、淡い水色の空があらわれはじめた。
涼やかな風が爽やかに通り抜けていく。私の頬をなでながら。澄んだ空気を大きく吸い込むと、わたしの身体が秋で充たされていくのがわかる。
金木犀についた蕾たちが、あと数日後の花開く瞬間を待っている。そのまえを通りすぎれば、すでにあの甘い香りが漂いはじめていた。
美しく、物悲しい季節のはじまり。
移ろう季節のなりゆきを、うっとりと眺めている。
こんなふうに季節を感じるなんてこと、以前は当たり前にしていたのに、いまはマスクを外して季節を感じられることのありがたみと幸せを感じる。
季節はめぐる。たんたんと。
わたしたち人間の、不安や恐れなど関係なく。
いつもと同じ、くりかえし。
そこがいい。
このあたりまえで、変わらないものこそが、今のわたしには安心だ。
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