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【2分小説】おかえり
俺は地元が大嫌いだ。
なぜなら何もないからだ。
オシャレなセレクトショップもない。
美味しいコーヒーが飲めるスタバもない。
夢や希望が詰まった高層オフィスビルもない。
こんなとこにいるとちっぽけな人間で終わっちまう。
できることなら一生地元になんか帰りたくない。
ところが、今回実家に置いていたこち亀がなぜか無性に読みたくなってやむを得ず帰ることにした。
もう1度言うが本当に帰りたく
【2分小説】ある公園の昼下がりで
「は~~~っ」
大きなため息をついた。
俺は、平日の昼間だというのに
ピカピカな似合わないスーツを着て公園のブランコに座っている。
本当は、スーツなんて一生着る予定なんてなかった。
子どもの頃から憧れた
甲本ヒロトのようなロックンローラーになるのが夢だった。
でも、彼女が3ヶ月前に妊娠していることがわかり、俺のアルバイトでの収入では生活するのが難しくなった。
プライドを捨てて
30才で
【2分小説】無色透明なヒーロー
「俺が高2の頃なぁ。
他校のヤンキーに囲まれたことがあんだよぉ。
んで、こう殴りかかってきたからよぉ。
俺は、こう捌いてから後ろに回り込んで、こんな感じでコブラツイストしてやったんだよぉ」
上司が、100万回聞いた遥か昔の武勇伝を酔っぱらいながら後輩達に語り始めた。
僕は知っている。
この後、必ず長々と「今の若い者は~」が始まる。
そして、「特にお前、最近酷すぎるな!」
と名指しされて、
【2分小説】弟が落武者を拾ってきた
ある日、弟が落武者を拾ってきた。
絵に描いたように
頭のてっぺんがツルツルで
サイドだけ長髪頭、そしてわかりやすいぐらいにボロボロの鎧を身に付けていた。
「あんた、なにそれ?」
「昨日の夜、裏山に雷落ちたでしょ?
だから、見に行ったら土の中で顔だけ出てて可哀想だから拾ってきた」
「変なもの拾ってくるんじゃない!
返してきなさい!」
私が弟に怒鳴ると
落武者は、ビクビクと内股で足を震わせて
【1分小説】死神さんとワルツを
真夜中、静まり返った病院の廊下を僕は歩いていた。
暗がりの中で、誰かが踊っていた。
窓から射し込む月明かりに照らされて顔が見える。
やつれきって肉がほとんどなく肌も真っ白、生きていないかと思えるような女性だった。
それでも踊っている姿がとても美しくて僕は見惚れてしまった。
「あら?こんな時間に可愛い坊や。
あなたも眠れないの?」
「うん…。
少しお姉さんの躍りを見ててもいい?」
「
【1分小説】雨女ちゃんの涙
もうずっと雨が降り続いている。
雨が降り過ぎて
世界のほとんどが沈んで海になってしまった。
少し前までは山だった所も
今では小さな島になった。
私は、そんな小さな島にひとりぼっちで泣いていた。
降り続く雨の原因は、わかっていた。
私が雨女のせいだ。
泣けば泣くほど雨が降る。
もうずっと泣いている。
何が悲しいのかは忘れてしまった。
涙の理由なんてなんだっていい。
世界がどうなろうが関係
【2分小説】私は今日もきっと
明日、世界が悲しみに覆われる。
地獄の大魔王と悪魔サタンが仲良くなり
すべての国で悲しみの曲が流れ
人々は、ずぶ濡れになるほど涙を流す。
…あーあ
そんなふうになってくれればいいなぁ。
でも、
私が死んでも明日は、
きっといつも通りに回るんだろうな。
この世界は私がいなくなっても
何一つ変わらないんだろう。
明日も
郵便のお兄さんは、眠そうな顔で自転車に乗ってるだろうし
左隣の家の