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映画めも。

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観た映画のはなし。 ネタバレするぞー!
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#映画感想

【映画】午前4時にパリの夜は明ける Les Passagers de la nuit/ミカエル・アース

【映画】午前4時にパリの夜は明ける Les Passagers de la nuit/ミカエル・アース

タイトル:午前4時にパリの夜は明ける Les Passagers de la nuit 2022年
監督:ミカエル・アース

ミカエル・アースの映画の中で描かれる自然光や街の灯りが好きだ。「サマーフィーリング」での燦々と降り注ぐ太陽のひかりや、夢見心地なニューヨークの街の灯り。「アマンダと僕」も悲劇的な出来事と対照的な太陽の日差しと、パリの街街並みは主人公たちと同じくらい物語を雄弁に物語っている。

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【映画】家からの手紙 News from home/シャンタル・アケルマン

【映画】家からの手紙 News from home/シャンタル・アケルマン

タイトル:家からの手紙 News from home 1976年
監督:シャンタル・アケルマン

観終わった直後に沸き起こった感情が孤独だった。孤独と言っても人によってはネガティブなイメージしかないかもしれない。でもひとりで街をぷらっと歩いている時の感覚と同じ様に、そこにいる人とコミットするわけでもなく、ただ日がな一日目的があってもなくてもほっつき歩く、そんは感覚に近い。どこかの店に入って店員やそ

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【映画】最近観た映画2023年3月

3月はジョナス・メカスのボックスをひたすら鑑賞。前から観たいと思っていながら、中々タイミングが合わず未見だった諸作を、立て続けに観ることが出来た。メカスの映画は作品単独で成り立つというよりも、連作として捉えた方が全体像が掴みやすい。というのもそもそも共通したテーマの下に連作で発表しようとしたのだけれど、それが叶わず単独で作られた経緯があったみたい。「ウォールデン」はアヴァンギャルドな要素が強いけど

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【映画】2022年公開映画で鑑賞したものメモ

【映画】2022年公開映画で鑑賞したものメモ

去年はやっぱりケリー・ライカートやバーバラ・ローデン、シャンタル・アケルマンら女性監督の特集がかなりのトピックだったと思う。特にバーバラ・ローデンの「ワンダ」は、シャンタル・アケルマンの「私、あなた、彼、彼女」や「ジャンヌ・ディエルマン」ケリー・ライカートの「リバー・オブ・グラス」に連なる作品であり、これら全てが近い時期に公開されたのも昨今の社会的なテーマとも繋がってくる。数年前に公開されたクロエ

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【映画】トリとロキタ Tori et Lokita/ジャン-ピエール&リュック・ダルデンヌ

【映画】トリとロキタ Tori et Lokita/ジャン-ピエール&リュック・ダルデンヌ

タイトル:トリとロキタ Tori et Lokita 2022年
監督:ジャン-ピエール&リュック・ダルデンヌ

映画の予習のためというわけでは無いのだけど、ここ数日ダルデンヌ兄弟の過去作を観た。「イゴールの約束」、「午後8時の訪問者」、「サンドラの週末」、「その手に触れるまで」と未見だった近作を中心に鑑賞していたのだけど、近作よりも90年代のザラっとして観客を突き放した表現の方が、行き場のない感

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【映画】郊外の鳥たち 郊区的鸟/チウ・ション

【映画】郊外の鳥たち 郊区的鸟/チウ・ション

タイトル:郊外の鳥たち 郊区的鸟 2018年
監督:チウ・ション

取り壊される風景と、取り残される人々の記憶。大きな変革の中で生きる人々の日常。過ぎ去った日々への郷愁。かつての昭和の日本の姿とも重なり合う記憶の中の風景。レンズ越しに映る未来の姿。過ぎ去りし日々と、未来のための日々が交差する不条理。

ビー・ガン、グー・シャオガン、フー・ボーと同世代の第8世代映画監督チウ・ションによる「郊外の鳥た

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【映画】ウォールデン Walden/ジョナス・メカス

【映画】ウォールデン Walden/ジョナス・メカス

タイトル:ウォールデン Walden 1969年
監督:ジョナス・メカス

ズームした画が手ブレで激しく揺れながら早回しの映像が映し出される。ボレックスの16mmフィルムカメラで映し出される映像は、一見粗雑なホームムービーの様だが、単なる日常の記録とは違う。日記映画という体裁で作られた本作「ウォールデン」は、1964年から1969年までの日々の記録を順に紡いでいる。音と映像はシンクロせず、ズレたま

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【映画】最近観た映画2023年2月

2月から5月くらいまで、昨年のカンヌ出品作品やアカデミー賞絡みの作品が立て続けに上映される時期なので、うかうかしてると気付かぬ間に始まってタイミング合わずに見逃しがち。とりあえず去年のカンヌパルムドールだった二作「コンパートメントNo.6」と「逆転のトライアングル」は首を長くして待ってた作品だったので、速攻チケット確保して鑑賞。
狭い空間で起きる人間模様が徐々に変化してくるクオスマネンの「コンパー

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【映画】最近観た映画2023年1月

一月は去年見逃したシャンタル・アケルマンの「ジャンヌ・ディエルマン」と、杉田協士の「春原さんのうた」をやっと観る事が出来た。どちらも傑作で、アケルマンの描く淡々としながらも女性が母子家庭を生き抜く非情な現実は今でこそダイレクトに響く内容。「春原さんのうた」は昨年公開された映画の中でも群を抜く大傑作だと思う。短歌を原作にしながら、ここまで観客に身を委ねて作品を作る姿勢は凄まじい。ここまで全てに無駄が

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【映画】逆転のトライアングル Triangle of sadness/リューベン・オストルンド

【映画】逆転のトライアングル Triangle of sadness/リューベン・オストルンド

タイトル:逆転のトライアングル Triangle of sadness 2022年
監督:リューベン・オストルンド

「フレンチアルプスで起きたこと」と「ザ・スクエア 思いやりの聖域」での倫理観の揺さぶりをかけながら、シニカルなユーモアで包み込むリューベン・オストルンドの新作「逆転のトライアングル」。本作は今まで以上にシニカルかつ突き抜けたユーモア満載の作品に仕上がっている。できる事なら人が多く入

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【映画】別れる決心 헤어질 결심/パク・チャヌク

【映画】別れる決心 헤어질 결심/パク・チャヌク

タイトル:別れる決心 헤어질 결심 2022年
監督:パク・チャヌク

「あなたの愛が終わった時、私の愛が始まった」その台詞が出た途端に映画の輪郭がくっきりと浮かび上がり、全身がぞわっとする感覚があった。
刑事と被疑者という関係の中で恋心が生まれてくる、ミステリーとラブロマンス作品であるのだけれど、そこにある謎は事件よりもふたりが抱える想いの”見えなさ”である。既婚者でもあるふたりてはあるが、想い

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【映画】コンパートメントNo.6 Compartment No.6/ユホ・クオスマネン

【映画】コンパートメントNo.6 Compartment No.6/ユホ・クオスマネン

タイトル:コンパートメントNo.6 Compartment No.6 2021年
監督:ユホ・クオスマネン

「人間同士の触れ合いは、いつも部分的にすぎない」
冒頭でのパーティのシーンで語られるマリリン・モンローのこの言葉は、モンローのイメージやキャラクターで受け止めるとセクシャルなニュアンスのようにも感じられる。スターであった彼女が感じた人との距離とも受け止められるし、セックスの様な肉体的な触れ

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【映画】デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム Bowie Moonage Daydream/ブレット・モーゲン

【映画】デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム Bowie Moonage Daydream/ブレット・モーゲン

タイトル:デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム Bowie Moonage Daydream 2022年
監督:ブレット・モーゲン

上のアメリカ版トレイラーを貼り付けて気づいたのだけど、この映画の世界配給はユニバーサルでアメリカ国内はNEON。NEONは映画館アラモ・ドラフトハウス・シネマやポスターやサントラをリリースするレーベルMONDOの設立者による配給会社で、アメリカ国内のインデ

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【映画】イニシェリン島の精霊 The  Banshees of Inisherin/マーティン・マクドナー

【映画】イニシェリン島の精霊 The Banshees of Inisherin/マーティン・マクドナー

タイトル:イニシェリン島の精霊 The Banshees of Inisherin 2022年
監督:マーティン・マクドナー

広大な海岸線に模様の様に張り巡らされ積まれた石。不思議な景色を観て、ここは一体何処なのだろうと思うのだけれど、物語が進むにつれ十字に円が施された特徴的なケルトの十字架があるのを見てアイルランドなのだと気付く。

予告で意味深に映し出されたふたりの一方的な仲違いの理由が、冒

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