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第四章 春ヶ原と精霊たちの心 真っ暗な自室で、風花は正座をしていた。 目を閉じて、…
あの日から今日まで、飛雨は尽力してくれている。 わざわざ、風花の家に通ってくれる。 …
「夏澄は時間がある限り、春ヶ原を見護っているよ。今日は二時間くらいだったかな」 「なにか…
「あー、すっきりした。ありがとうね。香夜乃、ひろあ」 上履きから靴に履き替え、風花は両…
空はよく晴れていた。 まぶしいくらいにきれいな青だ。 ひろあたちと別れた風花は、い…
夏澄と逢うのは一週間振りだった。 久しぶりに見る夏澄はまぶしくて、風花は目を細める。…
「水蒸気の粒はすごく小さいから、光っていても見えないの。でも、絶対光ってるはずなの」 「……だとしたら、雲は光であふれているね。見えたら、どんなにいいだろうね」 「青い空がね、水蒸気の粒で輝いて、海みたいにまぶしい空になるね」 きっと、夏澄くんみたいに……。 風花はずっと、空を見つめていた。夏澄も同じだった。 光を秘めているはずの雲が、風に乗っていく。薄く薄く流れていく。 やがて、オレンジ色の夕日が差してきた。 「ねえ、夏澄くん。巻層雲の次の日は、よく雨が降
じっと空を見上げていた夏澄が、ふいにぴくりと身じろぎした。 かすかに眉根を寄せ、東南…
夕食を終えた風花は、自分の部屋に駆け込んだ。 滑り込むように、床の上にすわる。 ぎゅ…
風花は庭の一番奥の、胡桃の木のところまで、飛雨の背中を押した。 「玄関から来るなんて、…
わたし、なにやっているんだろ……。 図書館でぼんやり本を眺めながら、風花は鬱々として…
風花はそっと、自宅の玄関のドアを開けた。 左にある防音室に、灯りがついている。 覗…
飛雨は、風花の服の襟を掴んで、締めあげた。 「夏澄が怪我でもしたら、どうすんだ?」 …
家に電話をし、風花はすぐに帰ると告げる。 自転車のハンドルに手をかけた。 『じゃあ、行こう、風花』 『見えなくても、近くにいるから、安心していいわよ』 夏澄とスーフィアの声が頭の中に響く。 姿が見えなくて実感がないのに、なぜかうれしくなってきた。 初めての体験だからだろうか。わくわくする。 「疲れているのにありがとう。夏澄くん、スーフィアさん」 夏澄たちは姿を消しているが、風花はつい彼らを探してしまう。 そうしているうちに、ふしぎな気持ちになってい