水の空の物語 第4章 第12話
空はよく晴れていた。
まぶしいくらいにきれいな青だ。
ひろあたちと別れた風花は、いつものように川沿いの道を自転車で走っていた。
夏澄と初めて逢った川だ。
あれ以来、ここはもっと好きな場所になった。通るだけで、心が陽射し色でいっぱいになって暖かくなる。
風花は自転車を止めた。
今日の天気のせいか、水面がふしぎな色をしていた。
光が川深くまで差し込んでいて、透きとおっている。上のほうは薄い水色で、底に行くと青くなる。
光の反射もいつもより多い。
夏澄くんみたいにきらきらしてる。
風花は思った。
なにをしているだろう、夏澄くん。もうずいぶん逢ってない。
……逢いたいな。
風花は頭を振る。きっと、夏澄くんはそれどころじゃない。
「風花……っ!」
どこからか、水音に似た涼やかな声がした。
一瞬、息が止まる。ゆっくり呼吸しながら、風花は顔をあげた。
「夏澄くん……っ!」
青い瞳を水面のように揺らし、夏澄が立っていた。
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