見出し画像

水の空の物語 第4章 第10話

「あー、すっきりした。ありがとうね。香夜乃、ひろあ」

 上履きから靴に履き替え、風花は両腕を伸ばした。

 ぐっすり眠ったあとというのは、どうしてこんなに心地良いんだろう。

 香夜乃とひろあは呆れ顔だった。

 昼休みに眠ったあとも、風花の眠気は覚めなかった。

 午後、養護教諭が不在になることを知った香夜乃が、それを教えてくれた。風花をは仮病を使い、保健室で休むことにした。

 お陰で二時間眠ることができた。

「はい、風ちゃん」
 ひろあがノートを差し出した。

「午後の授業の分だよ」
「……本当に? ありがとーっ」

 ノートを受け取る風花を、香夜乃がいつになく苦い顔で見ていた。

「風花、どうしたの? 人が変わったね。獣医になるんだって、あんなにがんばっていたのに」

 ……だって、癒しの霊力があればいいんだもん。

 わらいが込み上げてくる。思わず、夏澄のことをいいそうになり、風花は堪えた。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?