水の空の物語 第4章 第21話
わたし、なにやっているんだろ……。
図書館でぼんやり本を眺めながら、風花は鬱々としていた。
見ているのは、エゾモモンガの写真集だ。大きな黒目のモモンガが、木の実を食べている。越冬前で丸々と太っていた。
いつもなら、きゅんきゅんなれる写真だ。
だが、今日は違った。
結局、飛雨に置いていかれて、心がどんより重い。
追いつけるわけなんか、ないよね。
ため息が出る。
わたしなんか、なにもできないただの人間だ。
飛雨くん、風みたいに速いし。
住宅街を走っているときはまだよかった。
飛雨は、人間並みの速度で走っていた。だが、人気のない農地に差しかかったところで、脱兎の如く走り去ってしまった。
今日、三度目の置いてけぼりだ。
夏澄たちと、自分の違いを思い知らされた。
風花は心底、脱力してしばらく立ちつくした。
家に帰える気にもなれず、近くの図書館で無意味に時間をやり過ごしていた。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?