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第五章 春ヶ原の光と影 ガラス戸から、涼やかな夜風が流れ込んでくる。 かすかに若葉の…
「お前、なんでまだヘルメット常備しているんだ? 必要ないっていったろ」 まずいと、風花…
でも、夏澄くんが危険な目に会うなんて……。 風花は壁にもたれた。 落ち着きなく、…
「それにさ……」 飛雨は表情を消し、天井を見る。 「春ヶ原の風の霊力は弱いぞ。もし…
「外出禁止……」 枕をぽんぽんと、ボールのように弄びながら、飛雨がつぶやいた。 「風花…
「行、きたい……ー」 風花は肩を落とし、ひざに顔を押しつけた。 行きたい。 門限な…
「じゃあね、飛雨くん。今日もありがとう。また明日ね」 訓練が終わり、ガラス戸から出て行こうとする飛雨に、風花は手を振った。 「ああ、午前十時ごろには、藤原の御泉に来てくれな」 「うんっ」 精霊さんに、ゴールデンウィークは関係ないかもしれないけど、楽しんでもらおう。 笑顔で応えたとき、飛雨はなぜか、おでこに青筋を浮かべた。 一歩踏み出し、風花の顔を両手で挟むようにはたく。 ばちんと、音が響いた。 ……痛い。 なんで? 「目が覚めたか? 風花」
うまく、やれますように。 水色をした朝の空気の中、風花は霊泉への長い坂道を登っていた…
優しい……。 夏澄にもらった言葉を、心の中で繰り返した。 わらいを堪えようとしたが…
『それは……。ごめんなさい、できなかったわ』 『霊泉に来たとき、優月が弱っていたのはだか…
柑実の精霊の優月は、息が止まるような感覚でいた。 さっき風花が自分にくれた、手のひら…
本当に、何故なんだろうか。 つい、うつむいてしまい、優月は顔をあげた。 鬱念として…
「春ヶ原は、だいじょうぶですよ」 まだ晴れない顔をしている夏澄に、優月はゆっくりと話す…
「立貴は頻繁に通ってくるようになり、やがて禁足地に住むようになりました」 よかったと、風花が伏せ目がちに微笑んだ。 「山頂が気に入った立貴は、霊泉を湧かしてくれました。そして……、さらに自分が閉じ籠もれるように、結界を張りました。それが、春ヶ原の始まりです」 立貴が自分のために張った結界でも、そのお陰で山頂は緑で溢れた土地になった。 草花は夢を見るような瞳でいた。動物たちと、はしゃいでいた。 立貴は皆のために、結界内の気候を春のものに変えてくれた。 いつ