水の空の物語 第5章 第22話
本当に、何故なんだろうか。
つい、うつむいてしまい、優月は顔をあげた。
鬱念としてしまっては、せっかく、もてなしてくれている水の精霊たちに申し訳ない。
夏澄たちは、まるで宴でも開いているように、優月をもてなしてくれていた。
さっき、風花がくれた星水粒は、涼しげな色なのに、暖かく感じる。
優月はひざの上に散らばっている星水粒を、引き寄せた
……何故、春ヶ原の植物は萎れ、動物は体調を崩すのだろう。
外界からの攻撃の可能性が、一番高かった。だが、そんな痕跡はない。
なら、春ヶ原を護る霊力が衰えたのかもしれないと、優月は考えた。
なので自分と草花は、霊力を立貴に送り、立貴を通して、結界を強化した。
効果はなかった。
結界でないとしたら、春ヶ原全体の霊力が衰えているのだろうか。
春ヶ原ができてから、もう十年だ。経年劣化でも、起きているのかもしれない。
ヒントがあるとすれば、春ヶ原が傷つくときに現れる、冷たい風と枯れ葉だ。
特に、あの葉は実体がない。
立貴の水晶玉の光を浴びれば、すぐに消えるからだ。
すっかり衰えて曲がり、縮んでいた枯れ葉。あれでは、なんの木の葉かも分からない。
歪んで、なにかの呪いのような暗い色をしていた。
そこまで、考えた優月は、心が波立つのを感じた。
自分はなにかを、見誤っているのかもしれない。
あの葉のことは、あまり気に留めていなかったが、もっと探ったほうがいいのかもしれない。
そんな考えが頭をよぎった。
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