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夏澄たちの話では、昨日、太陽がすっかり落ちたころ、夏澄たちは藤原の御泉に帰ってきたそう…
『夏澄は優月に霊力をもどしているの。でも、優月には黙っていて』 スーフィアの声だ。 『…
「ねえ、スーフィア、風花。草花はどうするかな? 俺じゃあ、細かいことは分からなくて」 …
優月は夏澄に頭を下げて、向きをかえる。 そのとき、枯れ葉を含んだ風が吹いた。 優月が…
まぶたを閉じていた夏澄は、たまにその瞳を開ける。 公園内に視線を巡らせる。 だが、…
優月の木は泉のほとりにそびえている。目を凝らすと、木はかすかに霊力の光を放っていた。 …
「おいで、ビー玉、竹とんぼ」 草花は小さな声でつぶやく。寝言のようだ。 「今日は泉で水浴びだよ。優月と立貴も一緒に遊ぼうね」 うれしげだった。楽しい夢を見ているようだ。まるで、今荒れている春ヶ原のことを知らないようだった。 「ねえ、立貴くん。草花ちゃんは風が起きる前から眠っていたの?」 立貴は黙ってうなずく。 なぜだろう。 でも、おかげで草花ちゃんは、春ヶ原を傷つけたのが優月さんだとは気づいていない。 「優月さんが眠らせたの?」 立貴は首を振り、自
風花は泉の前にもどり、そっと、優月の木の前に立った。 優月の木を見上げる。 「ねえ、…
十二個目……。 風花は机に頬杖をつき、空を眺めていた。 休み時間で教室内はざわめい…
「どうしたの? ほんとこのごろ変だよ」 「すごーい。風ちゃん、難しいこと考えるね。大人だ…
……夢の裏には厳しい現実がある。 また、飛雨の言葉が頭に浮かんだ。風花は息をつめて体を…
ひとつ、ふたつ、みっつ……。 藤原の霊泉近くの大木の上に、ひとつの影があった。 フ…
桃色の大地と、流れる風に舞う花びら。青い泉と小川。 春ヶ原に来るのはまだ三度目だが、…
「お礼よ、風花」 スーフィアの肩掛けは軽いのに暖かい。 「今回、風花は本当にがんばってくれたもの。風花の気持ち、すごくうれしかったのよ」 「霊力がないから、たいしたことはできなくて……」 「一生懸命な気持ちが伝わってきたから、それがうれしかったの。ねえ、風花。こうするとね……」 こうすると、春ヶ原の幸せを感じ取れるわと、スーフィアは瞳を閉じる。 風花も真似をしてみた。 目を閉じて、辺りの様子を探る。 まず、風に乗る花の香りがした。 草花のわらい声