見出し画像

水の空の物語 第6章 第17話

 十二個目……。

 風花は机に頬杖をつき、空を眺めていた。

 休み時間で教室内はざわめいている。

 今日は風が強く、太陽の前をいくつも雲が通りすぎて行く。十二個目の雲は三つ葉の形をした雲だった。

 三つ葉は草花を連想させる。

 草花ちゃんは、春ヶ原を襲っていたのは優月さんだと知らないで済んだ。
 おかげで、春ヶ原はやっぱり夢の世界のままでいられた。 

 でも……。

 優月さんの悲しみが消えたわけじゃない。

 天を仰いだとき、ひろあがぴたぴたと風花の頬を叩いた。

「しっかりしてー、風ちゃん」

「ほんと、今日は一段と呆けてるよね。いい加減にしっかりしなさいって」

 ひろあに続いて、香夜乃がいった。
 香夜乃は風花の机の横に仁王立ちしている。

「さっきの授業だって、全然聞いてなかったでしょ」

「そうだったっけ?」
「しっかりしなさいって」

「ねえ、ひろあ、香夜乃……」
「なあに? 風ちゃん」

「現実……」

「は?」

「現実って厳しいよね。どうして、優しい精霊、……じゃない、人が悲しい思いをするのかな」

 香夜乃は怪訝な顔をする。

 ひろあは感心したように目を輝かせた。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?