水の空の問題 第6章 第20話
ひとつ、ふたつ、みっつ……。
藤原の霊泉近くの大木の上に、ひとつの影があった。
フッと気持ちが休まるのを感じて、影は、おや、と思う。こんな気持ちは久しぶりだ。
やはりこの林はいい。
葉の茂り具合、それが落とす影の濃淡。湿った空気の香り。
自分にぴったりくる。
気の遠くなるような長い時間、水の精霊と時間を共にしている。だが、これほど自分に合う場所は初めてかもしれない。
影は霊泉に視線を向けた。
水の精霊たちのほうも、あの霊泉を気に入っているようだ。風花と関わる間は、霊泉を拠点にするだろう。
こんな時間はこれからもずっと続く。影は体の力を抜いて、深く幹にもたれた。
それとも、いつか変わるだろうか。
水の精霊は風花と出逢った。
なにか変わるだろうか。この長い長い旅は終わるだろうか。
影は立ちあがる。
よっつ、いつつ、むっつ、ななつ……。
また、星を数えはじめた。
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