マガジンのカバー画像

水の空の物語 第六章 春ヶ原に射すひかり

29
優月の様子を見に、風花は藤原の御泉へと急ぎます。
運営しているクリエイター

#精霊

水の空の物語 第6章 第1話

第六章 春ヶ原に差す光  朝の空気は冷たく、澄んでいる。  風花は結界の中で、揺らめく霧…

近江結衣
1年前
14

水の空の物語 第6章 第2話

 公園に着いて、霊泉の前に立ったときだ。風花は、あれ、と思った。  今までは結界の前に立…

近江結衣
1年前
4

水の空の物語 第6章 第3話

 夏澄たちの話では、昨日、太陽がすっかり落ちたころ、夏澄たちは藤原の御泉に帰ってきたそう…

近江結衣
1年前
3

水の空の物語 第6章 第4話

「あの、スーフィアさん……」  風花は横たわる優月を見つめた。  彼の体はところどころが…

近江結衣
1年前
2

水の空の物語 第6章 第5話

『夏澄は優月に霊力をもどしているの。でも、優月には黙っていて』  スーフィアの声だ。 『…

近江結衣
1年前
2

水の空の物語 第6章 第6話

「ねえ、夏澄くん……」  風花はそっと声をかける。 「優月さんが元気になるように願おうね…

近江結衣
1年前
1

水の空の物語 第6章 第7話

「ねえ、スーフィア、風花。草花はどうするかな? 俺じゃあ、細かいことは分からなくて」  風花は言葉につまる。  夏澄くんに分からないことが、わたしに分かるわけない。 「そうねえ……」  スーフィアはしばらく考え込む。 「草花は、泣いて悲しむでしょうね。引き止めるだろうし、優月が春ヶ原を出ないっていうまで、だだをこねるんじゃないかしら」  草花が泣く幻影は見せられないわよねと、スーフィアは優月に聞こえないように、声をひそめる。 「それよりも、なにか癒やされるような

水の空の物語 第6章 第8話

 やがて、林に霧が流れ始める。  霧は幻影の優月の姿を覆う。  幻影の優月の姿は見えなく…

近江結衣
1年前
2

水の空の物語 第6章 第9話

 優月は夏澄に頭を下げて、向きをかえる。  そのとき、枯れ葉を含んだ風が吹いた。 優月が…

近江結衣
1年前
1

水の空の物語 第6章 第10話

 優月さん……!  風花は駆け出した。  辺りを見回す。だが、どこにも優月の姿はなかった…

近江結衣
1年前
1

水の空の物語 第6章 第11話

 まぶたを閉じていた夏澄は、たまにその瞳を開ける。  公園内に視線を巡らせる。  だが、…

近江結衣
1年前
1

水の空の物語 第6章 第12話

 夏澄はぽろぽろと涙を落としはじめた。  夏澄の表情から、優月はもういないんだと分かった…

近江結衣
1年前
1

水の空の物語 第6章 第13話

 優月の木は泉のほとりにそびえている。目を凝らすと、木はかすかに霊力の光を放っていた。 …

近江結衣
1年前
2

水の空の物語 第6章 第14話

 風花のとなりにいた夏澄は、風花にもう一度、守護の霊力を張る。  その後、風花から離れて立貴の代わりに癒やしの雨を降らせる。   飛雨とスーフィアも宙を駆けた。  飛雨は夏澄に霊力を送る。 スーフィアは植物を癒やして回り始めた。  風花はなにもできずに、木の周りをうろついた。  動物たちを診ようと思いつくが、足を止め、気がつくと立ちつくしていた。  行っても、霊力がない風花は、動物たちのためになにかできるわけではない。  風を浴びるしろつめ草が目に映る、風花は恐